0章
闇
ーー深淵など無いーー
ここは、元より闇の中。
お前はもう闇黒の中の迷い人なのだからな。
「ひ...、ひええ...。お助け下さい。
まさか、戦いの最中に闇黒領域に踏み出しているとは気づかずに、申し訳ありません、助けて...」
「我に慈悲を求めるか、人間よ。面白い、そんな戯言がこの〈魔王〉に届くものか!」
魔王の横に居る、悪魔の部下が魔王に向かい
人間を見下しながら問い掛ける。
「魔王様」
「有無」
「ころ...、殺される」
魔王は、部下の悪魔と何やら、顔を見合わせて、合図を送り合い迷い込んだ人間を見直す。
「貴様、怪我をしておるのか」
魔王は、その人間の元に行き、頭上に手を突き出し念じ始める。
辺りが聖なる光に包まれ、彼のボロボロだった身体がみるみる癒えていく。
「え...、これは...」
「傷を負っていたのでな」
「ありがとう...ございます」
人間は不思議そうに、先程までの恐怖に満ちた表情は消え、意味のわからないこの状況に、ただただ力が抜けたようで座り込むだけだった。
「貴様!魔王様の御厚意を受けながらその様な態度とは、どういうつもりだ!私が消し炭にしてやるぞ!」
悪魔の部下が人間の態度に怒り憤慨するが、魔王が腕を振り払い、部下に言う。
「よさぬか、我が癒したのに意味が無くなるではないか」
「ハッ!申し訳ありません魔王様」
人間が魔王に向かい恐る恐る、小さく問い、魔王は自信満々の表情で答えた。
「なんで...」
「何故だと、それは我が!」
〈プリーストだからだ!〉
そうこの物語は、魔王なのに何故かプリーストで、人々に慈悲を与えるそんな魔訶不思議な日々を綴ったものである。
聖




