独断と偏見による、支配と影響、そして権力の意味
それほど考えなくても良さそうなことを、どや!?と、熱く人に話をしてしまう。そんな日常の会話を全面に出してみようかと思った作品。
短い内容で、「くだらねぇ」と読んで貰えれば、幸いです、かな
昼間や夕方は何気に忙しく、猫の手も借りたいぐらい、、ではないが、それでも少しは大変な忙しさである。それ以外は、居なくても平気なのではないかと思えるぐらい少なくなる。ましてや日が落ちて客足も遠退いた閉店前のこの時間なら、尚更である。
「この前やってた、映画見た?」
カウンターで暇そうに砂糖を補充するあじゃが、棚を整理するアメリーに話しかけた。
「え?この前って、あの“歴史モノ”?」
「うん、そうそう。」
「それがどうしたの?」
「いや、昔の人って無いものを作り出しては、取り上げられたんだよねって思い出してね」
「何をまったく。でもそうみたいだね、折角作ったのに持ってかれて、また作るはめになってって、私なら、直ぐにでも撃ち込んでるわ 」
アメリーは、手で銃の形を真似しては“あじゃ”に向けて射つふりをしながら冗談まじりに笑っている。
「そもそも、何で偉そうに振る舞う“やつ”は、皆同じに“高い”所に居たがるんだろ?」
「それわかるー、やたらとデカさとか広さとか、高さとか、こだわるよね」
アメリーは、あじゃの顔を見ながら整理する手を止め興味津々に詰め寄ってきた。
店内を掃除していたヨークが、菷と雑巾を片しにカウンターにもどってきては、話に入ってきた。
「何を話してるかと思ったら、権力者の話?どうしたの?」
「偉いやつは、何で高さとかデカさとかこだわるのかって話」
「そうね。ようは、何で見せびらかすのかってことよね?」
「そうそう」
「それはどの国でも同じよね。権力者は皆同じように見せびらかすのよね。」
ヨークは蒸しタオルで手を拭きながら目の前に置かれた紙ナプキンを整えた。
「権力者か、、権力者は、元々表には出てこないはずだけど、いつの間にか“広告”のように表舞台に出てくるようになったのよね」
「そうなの?」
アメリーとあじゃは、不思議そうに話を聞いている。
「本来なら、支配する力と影響する力は別のモノだったのよね、歴史上見ていても、全て兼ね備えてる人物なんていないのよ。神や仏は、まぁ別の話として、世界を揺るがしたヒトッリャーやナポレーホン、マーリーもそう、織田のニョブ長もそうかもね。ただその時の状況や時代が“権力者”に仕立てあげたのよね。本人達は至って自分の“気持ち”を“行動”してただけで、たまたま“ソコ”にいた人達が、賛同して“担ぎ上げた”だけなのよね」
ヨークはそう話ながら、あじゃとアメリーの間に入ってきた。
「だってそう思わない?何かを成し遂げようって思ったところで何ができる?一人じゃ何も出来ないでしょ?今の時代ならネットとかあるからできるかもだけど、“かれら”の時代だと無理じゃない?」
「かもねぇ、確かにねぇ」
「だとしたら、“誰か”が、いるってことよね?それでいて、他の“誰か”にもわからせるようにするわよね?」
「うんうん」
アメリーとあじゃは、首を縦に振った。
「それじゃ、“誰か”って“誰”ってな話になるのよね。それが、支配する力と影響する力の話に繋がるのよ。それじゃ、何故“高い”所にこだわるのかってなるんだけど、」
ヨークは言葉をとめ、「ちょっと失礼」と言ってはトイレへと向かった。
あじゃは、ヨークを見送りながらアメリーに話かけた。
「やっぱヨークだねぇ、この手の話には熱くはいってくるねぇ」
「あはは、確かに。それにしても支配と影響って、どっちがどっちになるんだろ?」
「どっちって?」
「話からすると、“本人”と“その他”に分かれるとするなら、どっちが影響力で、どっちが支配力なのかなって」
「あー確かに。」
「ごめんなさいねー、っと何だっけ?」
ヨークは手を拭きながらまた、あじゃとアメリーの間に入ってきた。
「ねぇねぇ、支配力と影響力って何が違うの?」
アメリーは、ヨークに質問した。
「あーそうねぇ、影響力ってのはそのままの意味で、何かに影響を受ける、与えるってこと。考えや行動が、誰かに伝わっていくことよ。」
「じゃぁ、支配力は?」
「支配力は、、私の個人的な解釈だけど、目に見えない“力”かな。」
「なにそれ?」
あじゃとアメリーは、腑に落ちない表情をしては互いに顔を合わせた。
「はいはい、説明するわよ。影響力は解ったと思うけど、支配力って、別に“何か”をもって与えるモノじゃないと思うの。何にでもそうだけど、見る、聴く、触るといった実感的なのもあるけど、それ以上にその人に“入る”モノがあるのよ。それが、支配力。何かと言うとね、、」
ヨークは二人の顔を覗くように目を動かした。
「あっわかった。」
あじゃは、手をあげて声をだした。
「はい、あじゃさん」
「ずばり、“ここ”よね?気持ち!!」
あじゃは自分の胸を叩いては自慢気な顔をして見せてきた。
「正解!!」
「やったね」
あじゃは両腕を上に上げては笑顔で喜んだ。
「正解って言っても、私の意見だからね?」
ヨークは二人に確認するように、個人的な解釈だと、伝えては話を続けた。
「私が思うに支配力は、目に見えるモノだけだと限界があると思ってるの。実際“こうですよ”って見せられても、その時しか理解しないじゃない?後から思い出してもなんかズレてくるのよね。」
「それわかる。旅先で飲んだ飲みモノを、家で飲んでもあの時の味じゃないもん」
アメリーはヨークの話に割って入っては「でしょ?」と顔をして「正解!?」と聞いてくるように覗きこんだ。
「うーん、それは影響力かな」
「えー、、、」
アメリーは残念そうに肩を下げた。
「アメリーの言うのは、あの時の味を忘れられないってことで、影響を受けたってこと。もし支配されているのであれば、どんな味だろうと疑問を感じないで、飲むと思うのよ。それが、私の言う“支配力”よ」
「ほー」
あじゃはアメリーを見ながら、ヨークの話に目を丸くした。
「それじゃ、支配力と影響力は解った? そうなると後は“権力者”と、何故“高い”所にこだわるのかってことよね?」
ヨークは二人に確認しては、話を続けた。
「じゃぁ、まず“権力者”は、どういうモノかってことになるんだけど、“権力者”って、ただ単に“言葉”と“名刺”なのよね。」
「はい???」
あじゃとアメリーは今迄よりも理解し難い“キーワード”に頭を抱え込んだ。
「ふふふっ、そんなに難しく考えないでいいのよ。」
ヨークは頭を抱える二人を見ては背中を触るように叩いた。
「“言葉”と“名刺”って言ったけど、簡単にはその人のいる“場所”や“地位”を表す“標識”のような気がするの。その人は“ソコ”ですよ、この人は“ココ”ですよってね」
「はぁ、、」
「うん、その反応は“正解!”」
「わーい、、、ってなるかい」
アメリーはヨークに突っ込むように体を叩いた。
「私達にもあるでしょ?学生なら“学生証” 会社員なら“社員証”。簡単に考えればそうゆうこと。その人は、“ここ”でやってます。“こんなこと”やってますみたいにね。」
「ほー」
「それでいて、自分のことを皆に“見せたい”“見られたい”とか、“こうなるんですよ”“こうできるんですよ”とアピールするために、“高さ”にこだわるのよね」
「なるほどねー」
「ふふふっ、権力者は“高い”場所にいて、皆に“こうですよ”と“見せ物”のように振る舞っているのよ。
だから私は、そうゆう人を見ると「頑張ってるなぁ」って思っちゃうのよ」
ヨークは右手の甲で口を抑えては軽く笑みをこぼした。
「それじゃ、“権力”って?」
あじゃとアメリーは、口を揃えて聞いてきた。
ヨークは二人の顔を見ては口をひらいた。
「話してるところごめんね、ちょいっと通るよ」
F.りかが、キッチンから姿を表し三人の後ろを通り過ぎようとしていた。
「あっF.りか、あなたの思う“権力”って何?」
アメリーが通るF.りかに声をかけた。
F.りかは足をとめ、少し考える素振りをしては、言葉をだした。
「ん?そうだね、なんだろ、、、紐を操る“人形師”かな」
誰も居なくなった店では、今日もまた4人のアルバイトが、明日の準備に腕を奮っている。




