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風斬る夜に  作者: 縦院 ゆい
夏休み
4/21

口癖

 あのあと、私は天青君に部屋を案内された。

「本当に、いいのかなぁ……?」

 当然、ここに来る予定だった訳だから、近くにある宿は何軒か知っていて、天青君の「この近くに宿はない」が嘘だということはすぐに分かった。でも、なぜか断れないまま、私は今、こうして天青君の家の一室にいた。

 部屋にいても、特にやることがないから、外に出た。


 神社に来たのだ、お参りに行かなくてどうする。

 そう思ってお賽銭箱の前まできた。

 そこに、天青君はいた。

 お賽銭箱にもたれかかるように座り、手に握った紙を見つめていた。私に気づいた天青君は、立ち上がり、その紙を服の中に入れた。

「お前、何しに来たんだ?」

「ここ、神社でしょ? だから、お参りに来たの」

 私はお金を入れ、手を合わせた。

「天青君は何してるの?」

「……"君"付け、やめてくんない? 俺、そういうのあんま好きじゃない」

「あっ……ごめんなさい」

「何でお前が謝るんだよ」

「ご、ごめん」

 また、つい謝ってしまう。

 友達にもよく言われたっけ。よく謝るね、って。

「ごめん、が口癖か」

 そう言われて、私は下を向く。

「悪い。責めるつもりで言った訳じゃない」

 私が傷ついたと思ったらしい。そう言われた。

「ううん、大丈夫だよ。ただ、前にもそう言われたなぁって思って。ダメだよね、謝ってばっかは」

 あはは、と頼りなく笑う。

「どうにかなんないかなぁ、これ」

「そういっているうちは、無理だな」

 天青に言ったつもりじゃないのに、そう言われた。

「自分で変わろうと思わない限り、無理だ。……父さんは、そう言ってた」


 強い風が吹く。

「あっ……」

 帽子が飛ばされてしまった。

 取りに行って、拾って、後ろを振り向いたときには、天青はいなかった。

 今度は弱い風が吹いた。


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