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風斬る夜に  作者: 縦院 ゆい
夏休み
3/21

「どこから話せばいいですか?」

 私は神主さんに尋ねる。

「ではまず、夢の内容について詳しく教えてほしい」

「はい、わかりました」

 私は、説明を始めた。


 この夢を見るようになったのは1ヶ月ほど前の頃。

 この夢では、気がつくと私は森の中にいた。しばらくさまよい歩いていると、突然、地震のような揺れと、何かの叫び声のような轟音がしてくる。私が音の方へ向かう途中も何度も地震と轟音がする。そして、森の中の泉につくと、そこの中央から黒いものが吹き出ていて……

 そこで、私はいつも目を覚ます。

 日がたつにつれて、私の夢は鮮明になっていきました。歩いている途中にこの神社が見えたり、轟音がなんとなく笑い声に聞こえたり、黒いものが人のような形に見えてきたり……

「私の思い過ごしならいいんですが、これ、何かを暗示しているんじゃないかと……」

「おそらく、それは予知夢だろう」

「何の、ですか?」

「『異界への扉(クラック)』……?」

 天青君がぽつりと呟く。

「間違いないな」

 天青君の言葉に神主さんは反応し、そう言った。

「クラック……? 何ですか? それ」

「この地に伝わっている、異世界への扉だよ」

 神主さんは詳しく教えてくれた。


 この世界には魔界や天界といった異界が存在する。

 ここの世界と魔界や天界をつなぐ扉が『異界への扉(クラック)』と言うらしい。神社の近くにある泉もその一つだと言う。

 この扉はここの世界で死んだ者、あるいはこれから生まれる者のみが入ることができる。

 しかし、それは扉が壊れていない時だけである。扉が壊れればば、天界にいる天使や、魔界にいる悪魔がこの世界に入ることができてしまう。

「悪魔や天使がこの世界に入ってくるとどうなるんですか?」

「大変なことになるだろうね」

 実際、この世界には天使も悪魔も存在する。だが、扉が壊れ、大量の悪魔が入ってくると、この世界における善悪のバランスが崩れてしまう。そうなれば、この世界はたちまち崩壊してしまう。

「だから、そうならないように風斬一族はここで守っているというわけだ」

「ってことは、私のこの夢はある意味正夢だと……」

「そういうことになるな。しかし、凄いね、君は。僕たちでもつい最近気づいたんだよ、その事については。もしかして、どこかの巫女さんかい?」

「いえ、そんなことないです。ただの高校生です」

「へぇ……あっ、そうそう。ペンダント、直してあげるよ。ちょっと見してごらん」

 神主さんに言われ、私はペンダントを渡す。

「1日だけ、預かっていい?」

「えぇ、大丈夫です」

「何もないけど、ゆっくりしていってね。」

 神主さんは部屋を出ていった。

「そういえばお前、このあとどうすんの?」

 天青君が聞いてきた。

「このあと? うーん、そうだなぁ……。とりあえず、宿を取りに行かないと……」

「予約とか、してないのか?」

「やり方分かんなかったからね。一人部屋くらい空いているよ、きっと」

 私は立ち上がる。

「また明日来ます。ありがとうございました」

 そして、部屋を出ようとしたとき、腕を掴まれた。

「……泊まっていけよ」

 突拍子のない言葉だった。

「えっ……でも、迷惑になるといけないし……」

「いいから。宿はこの近くには無い。それにまた、この坂を登らないといけなくなるだろ」

 そういって私の手を掴んだまま部屋を出ていった。

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