終わりはさみしい、けど
楽しい修学旅行はあっという間に終わってしまった。
友達といろんな場所に行った。
夜遅くまでみんなとおしゃべりした。
ちょっとしたハプニングもあった。でも、そのおかげで神様とお話することもできた!
お家に帰るまでが修学旅行、か……。
「楽しい時間が、ずっと続けばいいのにな……。」
帰りのバス、みんなは疲れているのか眠っている人がほとんどだった。
まだ、家に帰りたくないよ。
バスが学校に着いた。
みんなは楽しかった、とバスを降りて帰路につく。
――――――家、帰りたくないな……。
「瑠璃。」
天青が後ろから声をかけてきた。あの神様のおかげもあって、顔色もいつも通りに戻っていた。
「どうした?帰らないのか?」
気が付くと、みんないなくなっていた。
「え?か、帰るよ?」
天青が顔を覗き込んでくる。
「ど、どうしたの?」
「何か、思い残すことでもあったか?」
「いや、そんなことないよ?」
私は思わず顔を反らしてしまう。私、つまらない顔していたのかな。
「手、出して。」
何をするつもりなんだろうと不思議に思いながら、私は右手の手のひらを差し出す。
手のひらに置かれたのは一本の簪。飾りは深い青のきらきら輝く丸玉と銀色の鎖の装飾に繋がれた水晶の花。
「似合うと、思って。」
これ、私に?
「迷惑かけたし、心配させたから、その……お詫び、というか。」
とっても綺麗で、気持ちが晴れやかになる感じがした。
「ありがとう、天青。」
天青ははにかんだ。
いつもの道を、いつもよりもたくさんの荷物を持って歩いた。
「瑠璃。」
別れる直前、天青は立ち止まった。
「お前が何を悩んでるかなんて、俺には分からない。でも――――」
私の眼をまっすぐと見据える。
「――――俺は、ここにいる。」
天青の左目に、青い光が宿る。
「苦しければ、辛ければ、俺のところに来い。動けないなら、俺を呼べ。いいな?」
天青の言葉は、不思議だ。彼の言葉はいつも、私の中にすとんと入ってくる。憂鬱な気持ちを浄化してくれる。
「うん。」
私は今、笑顔を作れているだろうか?
「またな、瑠璃。」
天青は笑顔で私を見送った。