左目
長い間、大変お待たせいたしました。
「はぁ?!何だって?!」
夕食時、俺は思わず叫んでしまった。
なぜかというと……
「天青、たしか、京都に行くんだったよな?」
父さんがそう話してきた。
「修学旅行か?そうだけど。」
「ちょうどよかった。父さんの代わりにちょいと仕事してきてくんない?」
「はぁ?!何だって?!」
思わず叫んでしまった。
「いや、無理だろ。バレるって。夜中はみんな起きてるよ。」
「だってさ……ここから京都まで遠いだろ。行くのが面倒なんだよ。」
「あのなぁ……ただの面倒くさがり屋じゃねぇか。」
「まぁまぁ。頼むよ。ちょっとあっちの方は結構厄介なことになってるらしくてさ。」
「なら、なおさら父さんが行くべきだろ?!」
「もうお前もほとんど一人前じゃないか。」
「……俺はこの間、失敗したばかりだよ。」
この間––––異界への扉《クラック》の異変の時、俺は魔物に体を乗っ取られ、危うく瑠璃を魔界へ連れて行くところだった。
「それから、随分と術も上達している。もう、大丈夫だ。」
父さんはそう言うけれど、納得できない。まだ、俺は未熟だ。
「ところで天青、左目、どうかしたのか?」
父さんが、俺が眼帯をしているのを気にかけた。
「え?あぁ、ちょっと、ぶつけてさ……。」
「そうか。大丈夫ならいいんだが。」
「問題ない。ごちそうさま。」
俺は食器を片付けて自分の部屋に戻った。
鏡の前で、眼帯を外す。
見慣れているはずの自分の顔。だが……
「……まずいな……全然治ってねぇ……。」
左目の下に、呪術的な模様が刻まれていた。時々、青い光が模様の中を走る。
気づいたのは夏休みの終わりがけ。
修行を終え、顔を洗っていた時に気がついた。その時はしばらくすると消えていたから、特に問題はないかと思っていた。
ところが、3日くらい前から、模様が消えなくなってしまった。
「呪い……か……?」
『呪い殺し』という特殊な呪術を施した眼帯をしているが、全く効果がない。
「……何だ……一体……?」
青い光が走る。




