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風斬る夜に  作者: 縦院 ゆい
二学期
15/21

左目

長い間、大変お待たせいたしました。

「はぁ?!何だって?!」

 夕食時、俺は思わず叫んでしまった。


 なぜかというと……

「天青、たしか、京都に行くんだったよな?」

 父さんがそう話してきた。

「修学旅行か?そうだけど。」

「ちょうどよかった。父さんの代わりにちょいと仕事してきてくんない?」

「はぁ?!何だって?!」

 思わず叫んでしまった。

「いや、無理だろ。バレるって。夜中はみんな起きてるよ。」

「だってさ……ここから京都まで遠いだろ。行くのが面倒なんだよ。」

「あのなぁ……ただの面倒くさがり屋じゃねぇか。」

「まぁまぁ。頼むよ。ちょっとあっちの方は結構厄介なことになってるらしくてさ。」

「なら、なおさら父さんが行くべきだろ?!」

「もうお前もほとんど一人前じゃないか。」

「……俺はこの間、失敗したばかりだよ。」

 この間––––異界への扉《クラック》の異変の時、俺は魔物に体を乗っ取られ、危うく瑠璃を魔界へ連れて行くところだった。

「それから、随分と術も上達している。もう、大丈夫だ。」

 父さんはそう言うけれど、納得できない。まだ、俺は未熟だ。

「ところで天青、左目、どうかしたのか?」

 父さんが、俺が眼帯をしているのを気にかけた。

「え?あぁ、ちょっと、ぶつけてさ……。」

「そうか。大丈夫ならいいんだが。」

「問題ない。ごちそうさま。」

 俺は食器を片付けて自分の部屋に戻った。


 鏡の前で、眼帯を外す。

 見慣れているはずの自分の顔。だが……

「……まずいな……全然治ってねぇ……。」

 左目の下に、呪術的な模様が刻まれていた。時々、青い光が模様の中を走る。

 気づいたのは夏休みの終わりがけ。

 修行を終え、顔を洗っていた時に気がついた。その時はしばらくすると消えていたから、特に問題はないかと思っていた。

 ところが、3日くらい前から、模様が消えなくなってしまった。

「呪い……か……?」

『呪い殺し』という特殊な呪術を施した眼帯をしているが、全く効果がない。

「……何だ……一体……?」

 青い光が走る。

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