風斬り
戸が開き、強い風の合間に光の刃が飛んできて、触手を切り裂いた。
「無事か! 瑠璃ちゃん!」
天青のお父さんが来てくれた。
「私は大丈夫です。でも、天青が……」
『コノ体ノ親玉ガ来タカ。面倒ダナ』
天青が刀でお父さんを切る。
ガキィィン!
刀と刀がぶつかり合い、風が強く渦巻いた。
お父さんの左手には札が挟まれていた。
「秘術『風斬り』」
お父さんの刀に風が集まる。
天青は刀を一旦引き、そしてもう一度斬りかかる。
私には、天青のお父さんの刀の軌道は見えなかった。
音は無かった。
天青の刀はお父さんの肩の上で止まっていた。お父さんの刀はすでに振り終わっている。
風が吹く。
カランッ
天青の刀身が床の上に落ちた。
お父さんは天青の胸に札を当てる。
「斬術『邪気払い』」
白い光が札から放たれ、天青を包む。
『クソッ。ヤハリ人間ノ体ハ使エヌ』
黒い何かが天青から離れた。天青はぐったりとお父さんに寄りかかる。
「瑠璃ちゃん、天青と隅にいて」
私は言われた通りに奥の隅に行く。
黒い何かがはっきりとしてくる。もやもやとしたものは薄汚れた包帯や触手になる。二つの目がギラギラと光っていた。
『ヤハリ我ニハコノ方ガヨイ』
触手が勢いよくお父さんに伸ばされた。
「秘術『風斬り』」
速い。
腕が目にも止まらぬ速さで振るわれる。
全ての触手が一瞬にして黒い霧となり、消えた。
その名の通り、風をも斬るほどの速さ。全てのものを斬ることができる。
これが『風斬り』。
『クソッ……』
「斬術『邪気浄化』」
刀が札を斬る。
白い光が札から溢れる。
『グアァァァ……!』
包帯男は光に包まれ消えていった。
部屋の中に静寂が訪れた。




