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風斬る夜に  作者: 縦院 ゆい
夏休み
10/21

包帯男

 今夜は月が出ていなかった。

 普段は静かなこの森は、今日はとても騒がしい。

 次から次へと魔物が出てくる。どうやら俺が泉へ行くのを足止めしようとしているようだ。

「お前ら全員、霧に還りやがれ! 剣術『霧散』!」

 風斬りの剣術を使い、魔物を霧に還す。

 10分ほど走ってようやく泉に着いた。

 泉――『異界への扉(クラック)』の中央に、穴が空いていた。全てを飲み込みそうなほどの、ブラックホールのような穴。

 その少し上に、包帯男のような魔物がいた。

 頭から腰にかけて包帯が乱雑に巻かれている。二つの目が、ギラギラと光っている。足はない。黒い煙のようなものがゆらゆらと吹き出ている。そして、包帯の隙間から、黒く長い触手が出ている。ひときわ目を引くのはこめかみ辺りから伸びる太い二本の触手。

『ヤハリ来タナ、風斬りのガキヨ』

 俺は刀と紙の札を構え、上を見上げる。

『丁度ヨイ。ツイサッキ、作戦ヲ変えたトコロダ。マズ、お前の体カラ貰おうジャナイカ』

 包帯男は触手を俺に向け伸ばしてきた。

 俺は札を一枚投げ上げる。

 襲ってきた触手を刀(竹光に呪術的な装飾を施したもの)で斬る。触手は黒い霧になって消えた。

 目の前に落ちてきた札を斬る。

斬術(せんじゅつ)『七色陣』!」

 札から七色の光が直線状に伸び、無数の光の針が放射された。その針が刺さった触手や包帯男から分裂した魔物が黒い霧に還る。

「剣術『刹那』!」

 刀が包帯男の本体を八つ裂きにする。

『ヌルイ攻撃ダナ、ガキ』

 切れたところから大量の黒い触手が生えてくる。

 俺は、その触手を跳ね返すので精一杯だった。

『遅イゾ。ソノ程度ナノカ、風斬りの一族ノ(ちから)ハ』

 先ほどよりもかなり早いスピードで触手が動く。跳ね返すどころじゃない。触手と触手の合間を縫って逃げる。

『イツマデモ逃ゲル(ちから)ガ残ッテイルモノナノカ?』

 後ろと前から触手が俺を襲う。横に逃げようとするも、触手の方が速かった。

『ツカマエタ』

 触手は俺の体をギリギリと絞め上げる。

「く……苦……しい……」

 袴から数個の珠を取り出す。

「風術……『鎌鼬(かまいたち)』……!」

 珠から強烈な風が吹き荒れる。

『グ……』

 触手の力が弱まる。力一杯触手を押し退け、脱出した。

『ヨクモ……ヤッテクレタナ……』

 触手で俺の体を殴られる。

 木にぶつかってそのまま倒れた。

 意識が、朦朧とする。

『危ナイ危ナイ。人間の体ハ脆インダッタ』

 体が持ち上げられる。

『手間ヲカケサセルナヨ、ガキが』

 こめかみ辺りに、触手が押し当てられている。

『大人シクシテロヨ。人間(ガキ)

 体の中に何かが無理矢理ねじ込まれたような感覚がして――――――


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