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花と女2〜エピローグ〜


 月が出ていた。

 赤く長い髪と、白いワンピースの裾を風に遊ばせて、悠良は花畑に立っていた。

広大な敷地では、数多くの草花や木々が生きている。しかし、動物の気配はない。

 セリーヌによって作り上げられた、作り物の自然。

 決して枯れない植物たち。

 悠良は、小さくため息を吐き出した。

 長い一日。

 たった一日だ。

「風邪ひくよー、悠良ちゃん」

 軽い声がする。声とは違う手が、悠良に白い上着をかけた。

「ここは冷える」

 悠良は振り返らない。

 自分には、この二人がいる。常に、ともにいる。

 しょせん、彼女の想いはわからない。

「翠華もさっさとどっかに消えたし。やっと三人、落ち着くね」

 怜の言葉に、莉啓が静かに反論する。

「俺は貴様がいない方が落ち着く」

「ええっ、まだこんなこといってるよこのひと! 悠良ちゃん、なんとかいってやってよ!」

 長年組んできたというのに、なかなか思いは通じていない。

 それでもこの二人は、これで仲がいいのだろう──悠良は苦笑した。

「悠良、この自然公園は、どうする?」

 死んでいる人間が作り上げたもの、行ったものは、なかったものとして処理されなければならない。カンパニーに関する建造物も、記憶も、すべてはもう消されていた。

 残るは、この自然公園だけだ。

 悠良は月を見上げる。青い月。視線を落とすと、決して枯れない木々や花が目に入った。

「自然」ということばが、胸に広がる。

 自然とは何なのか。

 生きているとは、何なのか。

「放っておきましょう。セリーヌ=エリアントがいなくなったんだもの、そのうち枯れるわ」

「いいの? ……そんなことして」

 ま、俺はかまわないけど──怜の問いかけに、悠良は静かな笑みを返す。

 本来なら、天界の掟に反することだ。

 しかしすべてを消してしまうことなど、やってはいけないことのような気がした。

 それでは、あまりにも悲しい。

「行きましょう。次のターゲットのところへ」

 きゅっと上着の首もとを閉め、悠良は毅然といい放った。

 当然のように、二人の聖者があとに続く。



 三人の旅は終わらないのだ。

 たとえ、死神と罵られようとも。  



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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