第三者の私はいじめの加害者じゃない
そもそもの始まりは、リカちゃんだった。リカちゃんは結構可愛い女の子だった。
若干つっている猫目に、艶々の唇、きめ細かい肌に、凄く可愛い声。多分将来的にも美人に成るだろうと、予想出来るどころか、現時点で既に可愛い女の子だった。
うん、自分で自覚して女王様になれる位には
「ゆかってさ、物凄くウザくない?」
リカちゃんの一言で始まった。ゆかは、ちょっと噂好きの一般的なまぁ・・平凡な女の子だった。どうやらリカみちゃんはゆかちゃんが嫌いみたい。
「確かにウザいよね!」「めっちゃどんくさいし」
そうだそうだと、リカちゃんの取り巻き達は同意する。小学生の集団心理は物凄く単純で、一つのムカつく事が有れば他の人格を無視する。スクールカーストのトップがリカちゃんなら下はゆかちゃんだろう。
小学生の基準なんて物凄く安易な物だ。可愛いか否か性格がいいか否かそんな感じで単純に出来ている。リカちゃんは性格最悪だと思うけど、外見が可愛いから皆納得できてスクールカーストのトップ。因みに私もリカちゃんに及ばないながらもそこそこ外見が良いほうで基本的に波風立てない性格と聞き上手なのも相まってそこそこ上だ。
ゆかちゃんは悪い子じゃなかったけど、かまってちゃんな部分が多くて、外見もブスじゃないけど平凡だ
ったから仕方ないと思えば仕方がない。私は多分関わりなんて無いと思うし、ゆかちゃんとも縁とか無いし、どっちかと言うと、リカちゃんとの方が関わりが深い。
「茜もこっちきなよー」
「んー?私はいいや」
私はいじめが始まっても無視した。立場的に私はリカちゃんの友達なんだけど、ぶっちゃけ私の外見が良いだけでリカちゃんの傍にいさせてくれてるだけだし、同じグループにいるだけ。
第三者ポジで傍観し、いじめに参加する事も、いじめを助けようとする事もなく、日々を過ごしてた・・・
「裕佳梨ちゃんって可哀想・・」
誰かがそう言った。言ったのは何も知らない別のクラスの女の子達だった。どこから情報が漏れたのか、いじめが露見したみたい。で、誰がチクったと思う?
「茜ちゃん・・私、いじめられてるの・・」
裕佳梨ちゃん自身だった。私の目の前にいきなり現れて、何人かの女の子達と一緒に空き教室に入れられた。
「可哀想だよねー」「酷いよねー」
別クラスの女の子達は見事な連携でそういった。・・・そう言えば、めぐみちゃん達が裕佳梨をウザいって言ったのは、こう言う部分だったと思う。
「そうなの、茜ちゃん」
涙ぐみながらそういい出すゆかちゃん。多分本気で泣いているんだと思う。
「同じクラスだから知ってるよ、じゃあね」
「ちょっと待ってよ!!」
帰ろうとしたら、物凄い力で止められた。
「何?早く家に帰りたいんだけど」
早く帰ってプリキュ○見たい。今日再放送なんだよね
「だから!助けてよ!」
「いや」
今度こそ私は振り払って家に帰った。だって助けてって具体的に何をすればいいのか分からないし、正直いじめは良くないと思うけど、ゆかちゃんよりリカちゃんの方がいい。どっちも性格が悪いなら可愛い方が絶対にいい。
ある日私は職員室に呼ばれた。私は何も悪い事はしていないので一体何故呼ばれたか分からなかったけど、取り合えず中に入ると泣いているゆかちゃんと慰めている別クラスの女の子達がいた。
「一体何のようですか?先生」
「茜、このクラスでイジメがあるのは知っているな?」
「うん。知ってる」
「何でゆかを助けてあげないの?」
視線を合わせてゆったりとした言葉でそう諭す
「ヒック・・ううぇえん・・茜ちゃん・・助けてって言った・・のに・・ヒック」
「大丈夫?」「ねー酷いよね」
茶番劇だ。
私の感想はこの一言に尽きた。だって先生はイジメを知っているのに何で何もしないで私に押し付けようとするんだろう?何で私が悪いみたいにいいだすんだろう?私は見ていただけだ。
「あのね、見ている人も加害者なんだよ?勇気を出して助けてあげよう!大丈夫だから!」
プッチン
先生の爽やかな言葉によって私は何かが切れた
「無責任なこと言わないで下さい。私は無関係です」
「無関係じゃないよ!同じクラスの仲間じゃない」
「だったらリカちゃんだって仲間ですし、同じクラスだからと言ってゆかちゃんなんか友達じゃない」
ピクっとゆかちゃんが泣き喚きだした
「ほら、ゆかちゃんだって泣いてるし・・」
「泣いてるんだったら泣かせときゃいいじゃないですか。それともアレですか?世界の子供がないていたら皆救わなければなりませんか?ふざけんなです」
「論点のすり替えをしないの!いい?傍観者も加害者なのよ?」
先生は私を怒るようにそういってきた。傍観者や第三者も加害者だといい出す世間。しかし何故第三者や傍観者が加害者になるのだろう?一体いつ私達が害を出したのだろう?
「先生、イジメの定義をご存知ですか?イジメとは物理的、心理的な攻撃を受けて苦痛だと本人が感じているものです。つまり今私が巻き込まれていると言うのは精神的ないじめを受けているのであり、私はゆかに物理的にも精神的にも攻撃してません」
「この間ゆかちゃんを泣かせたじゃない!」
ゆかちゃんの友達である別クラスの女の子がそう言い出した
「私は無理難題を言われてノーと返事したでけです。質問に対しての答えがイエスorはい、しか求めていないならば碌に意見も言えない独裁国家へと亡命してください、さぞ居心地がいいでしょう。そもそも貴方達が私に何を求めているかは検討もつきませんが、私は傍観者なだけで加害者ではありまでん。もう帰ってよろしいですか?」
しかし、先生は何故か私の手を掴んだ。
早く帰って塾の予習復習をしなきゃ駄目なのに・・・
「そんな事言っていたら将来苦労するんだぞ」
コレは教師が良く言う言葉。私はこの言葉があまり好きではない。勿論将来私みたいなのはきっと苦労するのかと言われればそうかも知れないが・・・
「先生、では将来苦労をしない大人とかいるんですか?面倒事に首をつっこみまくる愚かな大人は良い大人だといえるんですか?今の人格形成が途中の子達は加害者も被害者も第三者もそれぞれ等しく苦労するというのは私だけでしょうか?」
「それは・・」
「後、先生って単に面倒事を放棄したいだけですよね?残念ながら私は赤の他人を救うほど偽善者ではないので・・・今度こそ失礼します」
先生の手を思いっきり振り払って私は職員室を後にした。ゆかは思いっきり泣き始めたが私にはどうでもいい、泣きたいなら泣かせておけばそれでいいのだろう。
あの後もイジメは改善されず、寧ろ私がリカちゃんに喋ったせいで自体は悪化。別クラスで流行っていたゆかちゃん可哀想ブームも終わりを告げ、ゆかちゃんを助ける人物は現れず、挙句の果てに自殺しだしたのも私は関係ない。
実はちょこっとだけ体験談です。
そこから色々と考えて書いた話です。よかったら感想下さい!