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第7話 

いよいよ次回で最終回です。

第7話 


本堂のバイトの1時間前俺、燈山、本堂は打ち合わせのため近くの喫茶店で待ち合わせる。

3時間前に気合いが入りすぎてしまったが実はこの時間が集合である。

そこで俺と燈山は今日の作戦を再確認し本堂にやって欲しい事の説明をして。

微妙な予行演習をした。

ちなみにこの場に俺と燈山しかいないのは、霧崎さん、あゆみさん、鈴木、聖は

別にやる事があるからである。

「これでやれる事は全部やったかな!

 とにかく俺と孝章の役目は本堂君を助ける事が最低限の目標だ!」

「はい、有難うございます!

 孝章も頑張れよな!失敗して家追い出されるような事になっちまったら

 後でおまえを殺しに行くからな」

「えっ?」

「......冗談だ!」

この状況で冗談を言える本堂は昔から思っている事だが相当肝が据わっている。

作戦には本堂がやる事もあるし失敗すれば人生が崩れるかもしれない。

そんな中で俺のほうが緊張している状況と言うのは情けない気しかしない。

「心配すんな!やれる事はやったって言っただろう!

 絶対に成功するさ!大船に乗ったつもりでいてくれ」

「泥でできた大船じゃないと良いけどな」

「それじゃあ本堂は先に行ってくれ

 俺達は作戦のため後から追いかける」

時間があるなら俺達のやりとりをもう少ししても良かったかもしれないが

意外と時間が押していたので、本堂の皮肉はこの際スルーする事にした。

本堂も時間には気づいていたのかスルーに関しては触れず。

そのままコーヒーの代金を置き、手を振ってスーパーへと向かっていった。


__________________________________


今日の通常勤務は終了。

別にお金が欲しい訳ではなく趣味や社会経験として始めたこのバイトは

私に沢山の経験をさせてくれた。

今日はちょうど月1の給料日、ここは月の半分で辞めたり来なくなったりしない限り

月1制で給料を渡している。

だが私にはその封筒の額にはそこまで興味はない。

預金通帳にはその額の百倍いや、千倍の額が収まっているのだ。


私はバイトの控え室から窓をふと見るとそこにはスーパーの裏で

タバコやら酒やらを持ち込んでゲラゲラ笑っている不良

私はあいつらが大嫌いだ、いやあいつらだけじゃない世の中にいる屑みたいな奴が大嫌いだ。

不良と言えば、金髪で酒臭い品のない不良で暴力女。

授業を毎回寝たり、サボったり、クラス行事をサボるのは当たり前のド変態。

他にも数名私は自分の周りから蟻を潰すように存在を消してきた。

しかし私は悪くないのだ、あいつらは何時か善良な一般人に迷惑をかける。

こういう屑が後に犯罪を起こすなら、その前に止めなければならない。

迷惑を掛ける前に表世界から存在を消す、私は良いことをしている。


そして今日も私の周りから屑が消える。

そいつは私とよく同じシフトで入っているのだが。

仕事中にゲームをしてそれを上手く隠しているのが気に入らない。

その上バイト料はそいつとほぼ同額となってしまう。

私の頑張りは仕事中サボってる奴と同等、そんな事は認められない、許されない。

あいつは就職しても同じ事をするだろう、そうすればあいつがサボるために悪いことに手を出し

沢山の人に迷惑をかけ捕まる事は目に見えている。

父親の様に目障りな社員や迷惑をかけた社員を社会的に消すと言う私欲を満たしてる訳ではない。

私がやっているのは正義の行いなのだ。


ふと室内を見ると何時の間にか店長とターゲットが入室しており

店長はターゲットに給料を手渡す。

「額は....うっわー今月これっすか

 今色々とお金欲しい時期なんですよ、何とかできないっすかね」

「駄目駄目、うちも厳しいんだよ来月になったら昇給考えてあげるから」

そう答えるとターゲットはそそくさ鞄にお金をしまう。

こいつがサボってると分かればこの額でも十分過ぎるお金だと言うのにこの男は本当に救いようがない。

これから会議があるので、ターゲットは隣の部屋に向かい。

店長も私に給料を手渡し、店長が部屋を出て行くのを確認すると。

私は彼の鞄に、店長から手渡された封筒を入れる。


会議が終わって私がトイレに行き、店長は会議室の片付けがあるから最後に出る。

となれば最初に部屋に戻ってくるのはターゲット。

トイレから戻ってきた所で金がなくなった事を主張すれば、状況的にあいつが完璧に犯人になる。

金欠という分かり易い動機もあるのだから確実だ、後は二ノ宮の権力で黙らせれば良い。

私はこれから屑が消える様を想像した笑いをこらえて会議室に向かった。


____________________________________


狭い....非常に窮屈だ。

俺のいる場所は暗所であり非常に息苦しい。

俺は控え室のロッカーに隠れ様子を見ている。

ちなみに燈山も隣のロッカーにいるが、燈山は俺より体格があるので多分俺より苦しいだろう。

残念ながら二ノ宮の娘が今の段階で何かをしたか分からなかったが

給料を貰い、一人になったところで行動を起こすのは分かっていた。

恐らく会議が終われば来るだろう、この会議は15分はかからないと本堂は言っていた。

しばらくすると誰かが戻ってくる足音が聞こえた。

その1、2分後にもう一人が戻ってくる足音が聞こえる。

店長か二ノ宮だと思うが歩き方や足音から考察すると多分二ノ宮だろう。

そしてもう一人の店長が戻ってきたその時。

「給料の封筒がないわ!どこにいったのちゃんと鞄にしまったはずよ!」

計画通り、今ロッカーで自分の顔も何も見えない状況だが

恐らく新世界の神になろうとした男と同じぐらい俺はドス黒い顔をしていただろう。

順調に事が進みすぎて怖いくらいだ。

「お嬢様はお金の管理が甘いんですね、お金ありますからね」

「いえ私がなくすわけないわ!あんたのバッグにあるはずよ荷物検査するわ!」

「はっ?何言ってんっすか....店長、こいつの自己責任なのに人のせいにしようと..」

「良いじゃないか本堂!お金なんて入ってないだろう、気の済むまで調べさせればいい」

「分かりましたよー、皆どうせ金持ちの味方なんでしょ奪ってないし

 好きにしてくださいよ」

本堂は軽いノリで二ノ宮にバッグを渡すと。

当然ながらさっき二ノ宮が封筒を仕込んだので。

封筒が彼のバッグから2つ発見された。

「これどういう事!?」

「本堂おまえ本気で給料を......」

しかし本堂は何も反応せず、ただ携帯をいじっているだけだ。

「携帯弄ってないで何か言いなさいよ!

 警察に訴えてもいいのよ!!」

「いやぁ~、バッテリーが10%なんだよね、何でだと思う。」

「はぁっ?頭おかしいんじゃないの知らないわよ!!」

「実はさっき携帯弄ってたとき携帯内に入ってる動画見ててさー

 ロックをうっかり掛け忘れて閉まったら弾みで録画モードに入っちゃったんだわ」

「えっ.......」

「これ多分俺の鞄の撮影15分間くらいしてると思うんですよ。

 俺は奪ってないのはこれをみればはっきりするんじゃないかと」

元々彼女のやる事も単純で1パターン。

こいつならそれをやりかねないと言う動機さえあれば

後は無理やりのこじつけで犯人に仕立て上げ、二ノ宮の権威で黙らせる、それがこの娘のやり方。

しかしやり方が単純なだけにいくらでも対策できるのだ。

「そ..そんなもの再生しなくても明らかよ!

 どう考えてもあんたが......」

「警察だって暇じゃないんだし、警察沙汰にする前にこっちで解決したほうが良いんじゃないですか。

 それで何も写ってなければ警察でも何でも連れて行って構いませんよ」

そしてしばらくの沈黙が訪れる。

これに二ノ宮が同意したのだろう。

まぁ彼女からすれば偶然録画が始まったのなら決定的瞬間が撮られていないとも考えられるからだ。

しかし携帯の位置は先ほどの喫茶店で計算をし尽くし。

二ノ宮の手が写りなおかつ撮影が二ノ宮にばれにくい位置に置いたのだ。

写ってないわけがない、案の定その数分後。

「嘘よ!こんな偶然あるわけが!」

「偶然でも何でも証拠は証拠でしょう、今のシーンの封筒をしまうシーンでは

 俺は既に会議室にいるし、確かあの時一番最後に部屋を出たのは二ノ宮さんでしたよね

 自作自演をして僕に罪を擦り付けて何をしようとしてたんですか?

 ご丁寧に右手の人差し指の高級そうな指輪まで写ってますね、貴方もいまその指輪をしています。

 決まりです」

「ふざけるな....こんな事あっていいはずがないわ...」

歪みに歪み切った二ノ宮の表情と突然の展開に店長はびびりきっている。

俺達はもう既にロッカーを少し開いていた。

恐らくもう作戦の頃合だろう、俺達は勢いよくロッカーから出る。

窮屈な空間から開放されその開放感から俺は二ノ宮に対して何時もより大きな口調で呼びかけた。

「そこまでだ!!

 二ノ宮真衣あんたの負けだよ!

 種明かしをすれば、おまえが本堂をはめるのは既に分かっていた。

 俺達は事前に罠を仕込んでおいた、おまえに復讐するためにね」

突然のロッカーから現れた男二人に、店長はもはやパニックになり。

二ノ宮も驚きが隠せない状況でこっちを見ていた。

「あ..あなたは下着泥棒ね、復讐って言われても私何もしてないわよ

 むしろ私は被害者よ

貴方の勝手な妄想には付き合ってられないわ」

この状況でもまだパニックにもならず強がれる辺りはさすがお嬢様と言ったところだ。

「でもお金の件に関しては俺罪擦り付けられそうになったよね

 次はどういう言い逃れをするんですか?」

そこで本堂がさらに攻めると。

二ノ宮が高笑いを始めこう言った。

「二ノ宮の権力をなめるのも大概にしなさい、あなた方は私からみれば

 ただの蟻なのよ!お父様に頼めば国に住めないようにもできるんだから

 これで勝ったと思わないことね!今からお父様に電話をかけて今の状況を知っている人間全て消してあげるわ」

権力的には不可能ではないがリスクが大きすぎる方法だ。

彼女は余裕を見せているが、それはすぐ崩れるものである事は誰にでも分かるだろう。

父親の後ろ盾を使って自分を守ろうとするほど余裕がないのだ。

彼女が電話を掛けようとする前に、燈山が。

「おい俺を忘れんなよ!お嬢さん!

 親父と話すよりこれ見ようぜ!」

燈山は持ってきたノートPCを取り出す。

その画面を燈山は二ノ宮に堂々と見せると

ノートPCの画面を見て二ノ宮は目を丸くした。

「これうちの会社の前じゃない!!こいつは何してんのよ!」

画面には個人でできる生放送サイトでの生放送の様子が写っており。

そこには霧崎さんが自らが勤めていた会社ニノミ屋の本社の前で演説のような事をしている様子だった。

燈山がPC自体の音量を上げると霧崎さんの堂々とした声が部屋に響きわたった。

「Tさんは中学以降の人生を潰され、Nさんは結婚後の幸せな家庭を崩壊させられたのです。

 このニノミ屋の社長である二ノ宮剛三とその家族は、人の幸せになる権利を侵害する悪党なのです」

霧崎さんの演説に聞いている人間は半信半疑で黙って見つめている人間もいれば、二ノ宮に対する不満を小さい声で漏らしている人間もいた。

Tさんは月守聖、Nさんは野木あゆみである事は言うまでもないだろう。

後ろではマネージャーの格好をしているあゆみさんが、ディスプレイを用意している。

この後彼女にトドメを刺すために使うものだが今は触れない。

これを見ている二ノ宮真衣は二回目の高笑いを始めた。

「所詮は底辺の人間がやることね、こんなの私のパパに任せればすぐに沈静化するんだから。

 ほらみてごらんなさい、警備員が出てきたでしょ、こんな演説できなくなるわ」

二ノ宮の社長も異変に気づいたのか、警備員を使った武力行使に出始めた。

生放送の映像は演説している霧崎と押し寄せてくる警備員の映像を画面を半分に分けて見れるようになる。

カメラ等やオンラインの生放送サイトでの枠は鈴木が用意して、その前の宣伝もしっかりやっていたそうだ。

警備員が霧崎に近づこうとした刹那、どこから現れたのか推測不可能な動きで突然聖が何時もより大きく見える背中を見せ仁王立ちをしていた。

「ひとつ聞く貴方達は仕えている主が正義だと思うのか?

 私たちは武力など使おうとはしていない、言論を使って正当な行為をしているのに対し貴方達は行き成りの武力の行使。

 横暴ではないだろうか?」

警備員から見れば突然現れた金髪の凛々しい女の言葉に、多少士気が落ちている様に見えた。

ちなみに警備員への説得の台詞は鈴木に仕込まれたものらしく、聖だけに任せると言葉が感情だけになってしまい。

警備員に論破されたあげく、聖が警備員を全員病院へ送ると言う結果になりかねないからだった。

聖は必死に説得を続けるが、しばらくすると士気は回復していき。

「う...うるさい!」

「...おまえら惑わされるな、このまま突っ込め

 あの女は業務妨害をしているんだ、怪我をさせても構わん」

「わ...わかっ...」

「そうはいくか!聖様ー!助けに参りました」

そこには何処かの麻雀店で見た、もはや聖に群がるキモオタ集団とも言える男たちの姿だった。

中身はただの聖の崇拝者で麻雀のみが脳の人種だが、裏の世界で生きてるだけあってなかなかゴツイ面子も揃っている。

予測していない展開に警備員が戸惑い完全に士気が下がり、統制がとれなくなってしまったようだ。


「二ノ宮もう後はない、警備員も機能停止し演説は最後まで続けられる。

 その上さっき本堂がおまえの話を聞かずに携帯を弄っていたのは霧崎さんたちにおまえの犯行の証拠となる動画を送るためだ。

 その動画は今後ろで用意されているディスプレイで公開される。

 このままなら演説を通して悪い噂が広がっていくだろう、そうなればおまえのパパってやつは社長ではいられなくなる。

 二ノ宮俺たちの勝ちだ」


そう俺が告げた瞬間、二ノ宮は泣き崩れてしまった。

「何でだろうな、女が泣いてるのみてもっと泣けよって思ったの初めてだわ」

と燈山が言うが、彼女の地獄はこれからだろう。

父親が社長を退けば彼女も今の生活は続けられない、これから先彼女には燈山が思わなくても泣く場面は沢山あるだろう。

しかしこれはフォールンアントラーズのほとんどが受けた苦しみ、この先本堂や他の人間に及ぶはずだった苦しみ。

彼女が受ける事によって俺たちが受けた苦しみがなくなるわけではないが、ここから後先も二ノ宮によって苦しまされる人間はいなくなるだろう。

「ち....ちがう私が正しいのよ...この私が....正義...あいつらが悪」

壊れた時計の様にこの言葉を言い続ける二ノ宮を俺は細い目で見ながら。

俺はこの光景を持って二ノ宮への復讐を達成できたのだと実感したのだった。


そして、エピローグへ。

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