第6話
今回は終盤に向けた転機となる話になります。
登場人物紹介
佐々木 孝章
物語の主人公、家族に愛されず基本ほぼ全てにおいて負け組。
周りからは変態と言う認識が強く、趣味はAV鑑賞。
プロローグで沙港高校を退学させられた。
本堂 祐樹
孝章の幼馴染で、孝章を煽る事も多いが基本的には良き友人。
二ノ宮 真衣
父親が大会社社長、母親がPTA会長のお嬢様。
孝章を下着泥棒事件の犯人と告発したが自作自演だった。
二ノ宮 剛三 大会社カップラーメンやインスタント食品で大もうけした
『ニノミ屋』の社長、真衣は娘。
佐々木 千尋
孝章の事を照れ隠し等一切なしで本気で嫌って避けている妹。
佐々木 早苗
孝章の母親、夫を亡くしている、依存症の毛があるがそのくせ他人を信用できない人物。
フォールンアントラーズの仲間達
霧崎 優実 フォールンアントラーズのリーダー的ポジション。
気配りの利く人物で、二ノ宮剛三にはめられ家族を失った。
月守 聖 酒ばっか飲んでる美人だが汚い女、女子高生。
喧嘩と麻雀が強く、麻雀倶楽部で働いている。
鈴木 次郎 フォールンアントラーズのチーム名の命名をした男
プロのハッカーで、理屈っぽく、テンプレと言う言葉がよく似合う。
燈山 卓 とあるバーでウェイターをしている。
体育会系でノリが良い男。
野木 あゆみ 水商売をしている、美人で巨乳でのんびりした女の人。
母親と言う言葉がよく似合う人。
第6話
翌日の会議の日がやってきた。
このオフィスに全員が集まることは滅多にないが今日は全員揃い
かつ全員の顔は真剣そのものだった。
このグループの結成した目的、二ノ宮への復讐に進展があったのだから当然の事だった。
グループが結成されたのは3年前でその間活動は行われていたが
二ノ宮の尻尾を掴むのは雲を掴むのと同じようなもので困難を極め。
3年間大きな進展はなかったのだが、昨日ついに二ノ宮の尻尾が見えたのだ。
霧崎さんは手早くプロジェクターや資料の準備を行い、会議が始まった。
「これより我がチームの二ノ宮陥落作戦会議を行う
先に私が概要を話すので、質問は後にしてもらいたい」
「プロジェクターを見て欲しい。
3年前復讐の具体的内容は二ノ宮の罪の証拠を掴みそれを世間に公表する事だった
私は二ノ宮の関わる事件全てをマークし、被害者となった人物で私について来る事を応じる人間を仲間に加え
その一人一人と事件を調べ、証拠を掴む手法を取って来た」
霧崎さんはマウスをクリックしプロジェクターの画面を替え。
2ページ目の説明を行った。
「しかし二ノ宮は簡単に証拠を隠蔽できる。
もし隠蔽工作をする事ができない証拠があった所で我々は刑事ではない
事件後の証拠を見つけるにはかなり不利がある、それに時間がたてばなくなる可能性が高くなるのが証拠だ。
このやり方での証明はほぼ不可能と言ってもいい」
聖は霧崎さんの長くて難しい話のおかげで既に寝ていた。
俺も授業みたいな形式で話されると寝てしまう持病のせいか、うとうとしていると。
霧崎さんが行き成り机を強く叩き、俺たちを夢の世界から連れ戻した。
「だが!それならば別のやり方でその復讐を達成するしかない。
1年前から先ほどの手法と同時並行でやっていた事だが
ハッキング能力のある鈴木や、元会社の重役である私が二ノ宮の会社や色々な所から情報を集め
次起こる事件をあらかじめ予測する。
事件現場に居合わせれば、被害者が出るのを未然に防げる証拠を掴むのは極めてたやすい
予測が難しく1年間失敗し続けたが、ついに予測に成功した!」
「我々は事件の起こる日と場所、被害に合う人物が分かっている
何か質問はあるか?」
霧崎さんがそう問いかけるとしばらくは皆考えているのか誰も手を挙げる事はしなかったが。
その雰囲気を破り燈山が勢いよく手を上げこういった。
「それってもう勝ちなんじゃないんすか。
発生日、被害者が分かってるなら人数もいるしいくらでも勝てるっすよ」
燈山が軽く勝ちを宣言すると。
霧崎さんと鈴木辺りが呆れていた。
正直俺も勝ちだと思うのだが、2人のあの反応からして違うようだ。
「そんなわけあるか、まだ問題は残ってるのだから
まだ作戦は固める必要はあるぞ。
一番大きな問題は、この作戦には被害に合う人物の協力が必須だ。
被害に合う人物にどう信用してもらう?」
「そ...それは.....」
何も考えずに発言した燈山が黙り込むと
これ以上質問はないと霧崎は判断して次の話に進める。
「さっき話した被害に合う予定の人物の基本情報だ。
名前は本堂 祐樹、現在高3で二ノ宮の娘と同じバイト先で働いている。
動機はバイト先でのトラブルと思われる。」
それを聞いた瞬間俺はずっと閉じていた口を開け。
手を上げ大声でこう言った。
「ちょっと待ってください!
今本堂 祐樹って言いましたよね!」
「.....そうだが」
霧崎は話の腰を折られて機嫌が悪そうだが。
俺は構わず話を続ける。
「本堂は俺の幼馴染です!
バイト先も知っています、四範川駅の近くの大型のスーパーです!」
それを聞いて全員が呆然としていたが。
しばらくすると霧崎がにやりと笑い。
そのまま話を続ける体制に入った。
「どうやら我々はとんでもないJORKERを持っていたようだな。
信用させる方法をこれから考えるつもりだったがその必要はたった今なくなった
孝章君、本堂祐樹の事は君に任せる全ての事情と当日どう動くべきかを話してくれ」
「分かりました」
「では当日相手が取ってくる動きの予想。
予想に合わせた対策を練ろう、相手が動くのは2日後だ
それを踏まえた上で無駄話はできるだけしない方向でお願いしたい。」
そして俺たちは、当日取ってくる相手の行動の予測と
対策を一晩中練り続け、会議の終了は朝の8時。
会議が終わると同時に全員が気だるそうに寝室に戻って行った。
しかし俺には寝る前にやる事があった。
本堂への連絡だ、俺から携帯にかける事はほとんどないし。
かけてもでない時があいつにはほとんどなので
出るかどうかは分からないが、学校に着いて暇そうに携帯を弄ってるとしたら
出てくれるだろう、そう思って発信すると俺の予想が当たったのかすぐに応答した。
「孝章、おまえからかけてくるとか珍しいじゃないか
てかおまえ退学になったって聞いたけど大丈夫なのか?」
そういえば事件に巻き込まれて以来話してなかったな。
俺は手短に今まで俺に起きたことを話した。
「大変....だったんだな、それで今日はその報告だけなのか
こんな時間にわざわざしかも携帯にかけてまで俺と話すんならまだ何か用があるんじゃないか?」
無駄に勘が良いあいつの性格に助けられ俺は本堂に会議のことと
会議で決まった本堂の取るべき行動を話した。
「正直信じられないんだが.....おまえがこうなっちまった所を見ると
信じるしかねーんだよな..分かった!当日はおまえの言うとおりに行動する」
本堂は多少歯切れは悪かったが俺の事を信用してくれたようだ。
これで霧崎さんの言ったミッションの達成には成功した。
そのまま電話を切ろうとすると本堂に呼び止められて多少低いトーンでこう言った。
「後おまえ、二ノ宮に復讐してその後どうするんだ
濡れ衣を晴らして家族の下に戻るつもりでいるのか
霧崎とかいう奴の下について裏の世界で生きていくつもりなのか
そのリーダーの言う事をホイホイ聞いてるのも良いのかもしれねーけど
結局最後に道を決めるのは自分だぞ、それを忘れない方が良いと思うぞ
後、どんな道を選んでもたまには俺と遊びにいけるようにしとけよ、じゃあな」
そうか、二ノ宮への復讐が成功すれば復学は無理かもしれないが
家族の下に戻る事はできる、そうすれば表の世界には帰れるのだ。
けど霧崎さんや皆と仲良くなれた。
裏の世界の仲間たちとの関係は終わりにしたくはない。
最後に選ぶのは自分か.......。
しかしそれは二ノ宮への復讐が成功すると言う前提の上での話だ。
この作戦が失敗すれば二ノ宮は陥落しないし俺たちに明日はない。
正直俺は頭は良くないので、今俺の出した結論は今目の前にあるものを片付けると言う事だけだった。
来たるべき日の四範川駅。
俺は二ノ宮と本堂のバイト時間の3時間前、スーパーの前にいた。
フォールンアントラーズの最初で最後の二ノ宮陥落作戦。
失敗は許されないこの作戦に俺は緊張と気合いで拳を握り締めていた。
続く