第5話
今回は鈴木、燈山男たちの少しむさ苦しい話です。
そして事態は急展開へ.......。
佐々木 孝章
物語の主人公、家族に愛されず基本ほぼ全てにおいて負け組。
周りからは変態と言う認識が強く、趣味はAV鑑賞。
プロローグで沙港高校を退学させられた。
本堂 祐樹
孝章の幼馴染で、孝章を煽る事も多いが基本的には良き友人。
二ノ宮 真衣
父親が大会社社長、母親がPTA会長のお嬢様。
孝章を下着泥棒事件の犯人と告発したが自作自演だった。
二ノ宮 剛三 大会社カップラーメンやインスタント食品で大もうけした
『ニノミ屋』の社長、真衣は娘。
佐々木 千尋
孝章の事を照れ隠し等一切なしで本気で嫌って避けている妹。
佐々木 早苗
孝章の母親、夫を亡くしている、依存症の毛があるがそのくせ他人を信用できない人物。
フォールンアントラーズの仲間達
霧崎 優実 フォールンアントラーズのリーダー的ポジション。
気配りの利く人物で、二ノ宮剛三にはめられ家族を失った。
月守 聖 酒ばっか飲んでる美人だが汚い女、女子高生。
喧嘩と麻雀が強く、麻雀倶楽部で働いている。
鈴木 次郎 フォールンアントラーズのチーム名の命名をした男
プロのハッカーで、理屈っぽく、テンプレと言う言葉がよく似合う。
燈山 卓 とあるバーでウェイターをしている。
体育会系でノリが良い男。
野木 あゆみ 水商売をしている、美人で巨乳でのんびりした女の人。
母親と言う言葉がよく似合う人。
第5話
霧崎さんに誘われ、フォールンアントラーズのメンバーになってから1週間の時が過ぎた。
その間、聖とは絆を作り、あゆみさんとは体の関係まで作ってしまい。
表の世界にいた頃より充実している時間を過ごしている様に見えたが......。
「孝章ー!酒を持って来い!ダンボールに入ってっからダンボールごとな!」
「そういえば孝章君、私メインの話はまだなのですか?」
燈山と鈴木のむさ苦しい男だけの酒盛りに巻き込まれていた。
「燈山さんはお久しぶりです、鈴木さん貴方は意外とでしゃばってるじゃないですか!」
「お久しぶりとは何だ!昨日も会ってるし!」
「貴方は実は3話ぶりの登場なのですよ!連載の日数で言えば3週間です!
その上キャラが当たり前過ぎて、特徴もない、断言しましょう。
この話を読んで貴方の事を忘れてる方は80%以上です」
「何か知らんけどすっげーショック.......」
何故こんな酒盛りに巻き込まれたと言えば。
最近俺がメンバーの女子と絡みすぎて男の付き合いを疎かにしてるだろと燈山にいちゃもんをつけられ。
鈴木と燈山に無理やり連れてこられたのが原因だ。
正直な所彼らは嫌いではない、何せ霧崎さんに勧誘されたあの日、AVやエロゲを共に語った仲だ。
しかし今日はあゆみさんからも誘いがあったので優先すべきは.....分かるよな。
「孝章が乗り気でなさそうだし!
昨日客から貰った裏AVでも再生しようぜ!」
「マジっすか!」
「いいえ孝章君、ここはエロアニメです!ちょうど今日予約していた
初回限定版が届いたのです!一緒にどうですか?」
「それも捨てがたい.....」
この後、燈山と鈴木で一悶着あったのは言うまでもない。
結局ちょうどいい区切りをつけて交互に再生する事を俺が提案し
その案が通って俺たちは酒を飲みながら鑑賞を続けた。
はっきり言うと俺たち、傍から見れば気持ち悪い集団だ。
両方が全て再生し終わる頃には、全員に酒が回っている状況だった。
「俺の話を聞きやがれっ!この糞眼鏡っ!」
「どうせ貴方の話は、女を妊娠させちまったとか、女に金を騙し取られたとか
毎回話のオチは同じです誰も求めていません、それよりも私の肉体を見てください!!
メタモルフォーゼの時間です!!」
「マジで上着脱ぎやがって!それこそてめぇの裸とか誰も求めちゃいねーよ!」
燈山は酒で何時もより陽気になっている程度だが
鈴木はアルコールが回ると露出癖があるようだ。
公園で裸になって警察呼ばれた、地○ジ良しとか言っている人にならない事を願いたい。
しかしここで裸になっても警察は来ないが俺たちの目の毒なので
燈山と協力してこれ以上脱がないように抑え、そのまま上着を着用させようとした。
「何故抑えるのですか?分かりました!
脱がすと言うのですね!この男子の修学旅行にありがちな展開!」
「ちげーよ!!」
俺と燈山は二人で声を揃えて、鈴木の頭に拳を放った。
衝撃でアルコールは回った状況ではあるが、正気に戻す効果があったのか。
私とした事がと言いながら急いで上着を着て無事その場は収まった。
「コホン...先ほどは失礼、今日の事を振り返って思った事があります
.................友達とは良いものですね」
突然の鈴木の言葉に、燈山と俺は唖然とするが。
燈山はいたって普通の突っ込みを返す。
「正気に戻ったと思ったら何だよ唐突に!まだ酔ってんじゃねーのか」
「確かに酒の効果で大胆な事を言ってるのかもしれませんがこれが本心なのでしょう。
正直私は理屈っぽく、何を言っても感情がこもっていなくて、本心を言ってるのか分からないですがね
けど今日皆で一緒の席で酒を飲み交わし、AVやエロアニメを見てその後大騒ぎをする。
私はここに来るまで友達と言える友達がいなかったので
ここで辞書やwikiには載っていない友情を育むと言う事を学びましたよ」
その言葉に俺たちは押し黙る。
友達.....。俺は表の世界にいた頃小さい頃から一緒にいた
本堂を思い浮かべる。
父親を亡くしていたあの頃妹と馬が合わなくなり始めたあの頃
あいつと遊んで笑っていなければそもそも生きてはいられなかったかもしれない。
俺は重くなってしまった空気を打ち破るようにこう言った。
「鈴木さんそういう所が理屈っぽいんですよ!
こんな風に馬鹿やって、他人が見たら何やってんだろって思う事を
理屈じゃなくて楽しんでできるのが友達なんですよ」
俺がそう言うと、燈山も言う事を見つけたのか続いて声を張り上げる。
「そうだ!鈴木!俺たちはフォールンアントラーズの仲間だろ!
理屈うんぬんとかじゃなくて楽しいから一緒に夜遅くまでここで一緒に酒のんでんだろ!
お前の口から楽しいって言葉を聞いてないぞ!俺たちといておまえは退屈か?」
その質問に対して鈴木はあわてて口を開く。
「そんな事はないですよ!退屈ではありません
しかし感情とは分かりにくいもので(ry」
「鈴木さん!楽しいか、楽しくないか2択でお願いします」
「.....まとめると楽しいの一言ですね....ふふふっ」
鈴木の微笑に俺たちも声を揃えて笑い始める。
その時俺は本堂と一緒にいた頃の暖かい雰囲気を思い出した。
裏世界に生きる人間は確かに他人を利用することばかり考えている人間は沢山いるだろう。
実際俺はそんな人間しかいないと思って、最初は怖かった。
だが、実際に会い、実際に話し、一緒にいるうちに俺の偏見と言う氷はすでに溶けていた。
一緒に馬鹿やって笑い合える友人の、鈴木、燈山。
同い年で同じ境遇にいてここに来て初めて心から分かり合えた仲間の、聖。
俺の全てを優しく包んでくれた母親のような存在の、あゆみさん。
そして、死に掛けそうになった俺を拾ってくれた恩人の、霧崎さん。
皆、皆、こんな世界でも寂しくて誰かを求めていて、そんな中で俺たちは一緒に生きようと決めたんだ。
裏の世界も表の世界も関係ない、ここが俺の新しい居場所なんだ。
そんな事を考えていると、ノック音が聞こえ残りの3人が入ってくる。
「酒くさくて良い部屋だ!まぁ男ばかりのむさ苦しさはごめんだけどな!」
「孝章君が私の店に行けなくなったのは皆で騒いでたからなんですねー~
私も仕事休んで参加したかったですよ~3人だけでずるいです~」
「...君たちは相変わらずだな」
聖、あゆみさん、そして霧崎さん、この光景を見てそれぞれ言いたい事を遠慮なく言い合う。
「全員揃ったようだし、一つ言っておこう。
今まで具体的な案がなかったが、二ノ宮陥落作戦を今週中に決行する。
明日は申し訳ないが、皆仕事を休んでくれ、明日は全員で作戦会議だ!」
この霧崎さんの言葉を聞きそれぞれがそれぞれの感想を漏らして室内は賑やかになる。
気のせいか数人はしばらく驚いて放心している様にも見えたが、俺は特に気にしない事にした。
正直俺たち一人一人は蟻だ、社会の底辺ともいえる存在だ。
蟻一人がどんなに頑張った所で大きなことは何もできやしない。
だが全員で力を合わせれば......この信頼できる俺たちの仲間となら奇跡を起こせるかもしれない。
「よし全員で円陣組んでみようぜ!」
「何故、円陣を組まなければならないのですか?」
「俺の思い付きだ!!気合い入るだろこれからの戦いに向けてな!」
「やれやれ、それではその思いつきとやらに乗ってみましょうか」
燈山の思いつきにより、皆で円陣を組む。
「では二ノ宮家のこれ以上の悪事を止めるためにも、次の作戦は失敗できない戦いになる」
霧崎さんが前置きを入れると、また燈山が口を割り込み。
「掛け声は新入りの孝章に任せてみようぜ!」
「それいいな!孝章アタイたちが気合い入りそうなガッツの入った掛け声を頼む」
「えっ...この流れどうみても霧崎さんでしょ!」
「私の掛け声で気合いが入るか?....」
「孝章君ファイトです~!」
「孝章君、ここで逃げるのはただの蟻、ここで掛け声をかけるのはよく訓練された蟻ですよ!」
全員が俺の掛け声を待っている状況になる。
こう誰かを引っ張る役ってやった事ないから恥ずかしいのだが。
ここで逃げたり、テキトーな事をしたら作戦の幸先が不安になるだろう。
俺は半分やけくそ気味にこう叫んだ。
「おっしゃー!皆で力を合わせて絶対に成功させるぞー!!」
「おー!!」
この叫び声と同時に丁度良いタイミングで窓から、爽やかな朝日が差し込んできた。
運も味方につけ俺たちは幸先の良い作戦のスタートをたった今切ったのである。
第6話へ続く