エピローグ
結局の所、マルコとティファナが共犯という形でシエラの思惑通りに事件は終息を迎えた。ティファナ母は、悲しみの余り自殺し、村の子供達の意識も未だ戻っていない。過疎化の進んだ村だった為、きっと遠くない将来、村自体が失くなるのだろう。
アリスと母親はその事件の後、引っ越しし、また木々に覆われた暗い森でひっそりと暮らし始めていた。
「おはよう、母さん」
「おはよう……アリス」
もはや、母親には目の前にいる我が娘がアリスなのか、シエラなのか判別はついていない。だから、〝alice〟と呼びかけても実際は〝ciela〟なのか彼女自身にしか分からなかった。
黙々と朝食を食べるアリスにココアを差し出す。震えそうになる手を必死で制した。この瞬間は、いつも緊張してしまう。
「おいしい!」
アリスは母親に向かって無邪気な笑顔を向ける。その様子に少しばかりホッとする。
「良かった! ……今日もなーんにも入ってなくて」
「ッ……!」
母親の表情が凍った。
――目の前にいる少女は……
彼女は椅子から立ち上がると、カバンを手にし、ドアの前に立つ。
そして、振り返り、
「いってきます、母さん!」
いつも通り挨拶した。じっと見つめ、母親の言葉を待っている。
「あ、いって、らっしゃい……シエラ……」
彼女は満面の笑みで答えた。
「何言ってるの母さん? 私の名前はアリスだよ」
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