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Day Dream~黒夢中~  作者: 上谷梅
第一章 アリス イン ザ フォレスト
1/8

プロローグ

 その部屋には二人の人物が居た。

 一人は足を怪我しており、酷く怯えている。

 もう一人は手に何かを持ち、その人物を無表情で見下ろしている。何の感情も灯さない無機質のような瞳で一歩ずつ近づいてくる。

 一人は足を引きずりながら必死で後ずさった。

「お、お願い! やめて! こ、殺さ、ないで!」 

 心の何処かで無駄だと分かっていても、見上げながら懸命に命乞いをしていた。恐くて目を逸らす事も出来ずに、それでも口と、手足は震えながらも必死で動かした。けれど、そんな抵抗は無駄だとばかりに相手は一歩ずつ、確実に距離を縮めてくる。自分の脚から滴り落ちる血を踏み付け、じりじりと追いつめてくる。その冷たい瞳を見れば、否応なしに悟ってしまう。

〝自分は此処で殺される〟

 背中に小さな衝撃が当たる。振り返った。どうやら壁にぶつかったようだ。恐慌しながら、前を向く。居ない。

「ひッ!?」

 相手は真横に居た。自分と同じ目線までしゃがみ込み、膝を抱えるように座り込んでいる。反射的に身体がのけ反った。が、

「いッ、つッ!」

 腕を掴まれ、引き戻される。爪が皮膚に食い込む程の力。痛みから、さらに涙が溢れてくる。

――自分は一体今、どんな顔をしているだろうか?

 きっと、顔全体の毛穴という毛穴から汗が吹き出し、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだろう。その醜い顔に彼女は美しく微笑んだ。

「た、助けて」

 言葉になっていたかどうかは分からない。もう、掠れてしわがれた声しか出なかった。

 口と口がくっつきそうになるくらいに距離を詰められ、視界一面が彼女の顔で占拠される。目が笑っていない氷の微笑。彼女はゆっくりと、大きく口を開いた。

「だーめ」

 痛烈な痛みと共に、自分の視界が赤く染まった。


 彼女の顔面に赤い飛沫が降り注ぐ。それを拭おうともせずに、もう息絶えている人物に向かって何度も何度も斧を振り下ろした。

「キャハハハハハハハハハハhhhhhhhhhhhh」

 言葉になっていない狂った彼女の高笑いが部屋に響く。全身が真っ赤に染めあがる頃、ようやく斧を床に放り投げた。

「あんたが裏切ったりするからいけないのよ。この子を傷つける奴はどんな奴だろうと許さない!」

 今、この部屋には一人しか居ない。

 勢いよくドアが開いた。

「うッ……アリスを、アリスを返して!」




分からない所等ございましたら、感想にお書きください。

後書きを使って、随時、解説していきます。

また、誤字・脱字の報告もお待ちしております。

気軽にお書き下さい。


すいません。連載のサブタイトルを間違えました。特に記載する必要のなかった項目なので、そのままにさせて下さい。

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