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心情

 いい一日だったなと思いながら、ベットで眠る。

 なんだか友見と一緒に出かけると、幸人と一緒に出かけた気分になる。いや、正確には近い気分になる。

 歩き疲れたので今日はぐっすり眠れそうだ。

 そんなことを考えていたら僕の意識がどんどん薄れていった──。


 そして目が覚めたらまたどこか知らない場所にいた。

 昨日は小学校だったが、今日は学校の屋上らしき場所に突っ立っている。

 また夕方だ。雲がほとんどなく、風が心地良い。

 すると屋上の扉が開いた。そこには首から上がない、女子生徒が立っている。制服と背丈を見て分かる。ここは中学校だ。

 ただ、首から上がないのではなく、黒く塗りつぶされている。まるで何かの絵を見ているようだ。グロくも何ともない。

 人間じゃない、見たことのない生き物に遭遇しているような感覚だ。怖い。

 だが、この怖い感情がどこか安心する。

 なにか僕を救ってくれそうな、そんな風に何処かで思ってしまう。

 人間じゃないのに、だ。

 すると、その女子生徒がゆっくりとこちらに歩いてくる。

 救ってくれそうなのに、なぜか体が震えて、後ろに後退りしてしまう。自分の意志で体を動かせない。そのまま、屋上の柵に背中がぶつかる。それでも近寄ってくる女子生徒から体が逃げようとしてしまう。

 ついには屋上から飛び降りようとした、その時。

「待って!」

 その女子生徒がしゃべったのだ。顔が見えないためどこに口があって、どこから喋っているのか分からない。

「私のこと覚えてない?」

 そんなことを問いかけてくる。

 まず僕はこんな人間のようで人間じゃない生き物を見たことがない。もちろん、会ったことがないので覚えているも何も無い。

 分からない、と言おうとしても何もしゃべれない。口が動かずに声が出ない。

 ……ていうか、この声、何処かで聞いたことのあるような?

 と思った瞬間、目の前にいたはずの女子生徒がパッと消えた。

 僕はわけもわからずにまばたきした──。


 まばたきをして、次に目を開けた瞬間には僕はいつものベットの上にいた。もう夢か現実か分からないくらいにいつも鮮明に記憶が残っている。

 まるで夢が僕を取り込もうとしているみたいに。

 学校に行こうとしたら今日は日曜日だったことを思い出し、1日中掃除をしまくった。つまらないな、僕の人生。そんな事をふと思った。


 月曜日、それは学生やら社会人やらが嫌がる曜日だ。

 僕は別に嫌ではない。ていうか毎日がつまらないから嫌だ。


 学校についてもあの夢のことを思い出す。いったい何なんだ? あの夢。

 今分かっていることは、僕が夢の中で見ている視点はおそらく幸人だという事と、前までは赤ん坊視点だったのに対し、最近は小学校時代やら中学校時代の幸人の視点を見る事だ。

 しかも中学時代なんて僕と出会う頃じゃないか。

 そして屋上の夢に出てきたあの女子生徒。彼女は何者なのか。

 分かっていることよりも、分からなきことが多すぎて頭がパンクしそうになる。そのせいか、授業が全く集中できない。これでは僕だけが授業についていけてない状態になってしまう。

 ……いやそれでいいのか。そもそも何でみんなに合わせているのだろうか。周りのことなど、どうでもいいのに。

 もう、いいや。何を選択したって僕以外に誰も横から口を出せない。だって結局他人だし。

 そんなつまらないことを考えていると気付けば昼休みになっていた。

 午前中の授業は何をやったのかほとんど覚えていない。

 どうだっていいけど。


 いつも通り一人でお昼を食っていると、友見がやってきた。

「またお前か。もしかしてお前も友達いないのか?」

「失礼ね!あんたみたいな陰キャじゃないんだし、友達くらいいるわよ」

「誰が陰キャだ、この野郎」

 いつも通りのくだらない会話だ。

「それで幸人くんの事どれくらい分かってきたの?」

「…………」

 僕は無言になる。すると友見が僕を元気づけようと明るく接してくる。

「ちょっと無言は気まずいからやめてよ、何かあったの?」

「いや別に」

「別にってことはないでしょ、私には話してよ」

「もうそろそろやめにしようかなって思ってきて」

「何をやめるの?学校?」

「いや、幸人の事。もういいかなって」

「いきなりどったの?いつもよりも元気ないじゃん」

「僕は本当は気付いていたのかもしれない」

「?」

 友見が何を言っているのか分からない時の顔をしてこっちを見てくる。

「幸人の秘密を知る手段を。僕は知っていたのかもしれない」

「秘密って?どこに何があるの?」

「それは……」

 言うかどうか悩んでいるとチャイムが鳴った。

「また話してくれるときに呼んで。ゆっくりでいいから」

「ああ分かった」

 友見は急いで教室に戻っていった。


 それからも午後の授業は何も頭に入ってこなかった。こうなるともう学校に行く理由もなくなってきたな。

「はぁ」と深くため息を吐いて家に帰った。

 家はゆっくりと考え事ができる、今まさに僕が求めている場所だ。

 友見にはああ言ったものの、確証はないんだよなぁ。なんとなくって感じで思いついただけだしな。それに秘密がある場所に行くには勇気がいる。今の俺にそこまでの勇気はない。友見になんて言おう。

 どうするべきか僕はずっと悩んでいた──。



 私は部屋でベッドに仰向けで倒れていた。

 部屋は何の変哲もないただの部屋。私には推しもいないしなぁ。グッズもなんにもない。

 悠馬くん、落ち込んでたなぁ。

 何が分かったのか結局教えてくれる前にチャイムが鳴っちゃったし。

 リビングに行ってお菓子をむさぼり食ってると、弟が2階の部屋からタッシュで階段を降りてきた。

「危ないよー」

「はぁーい」

 私が注意しても帰ってきても適当な返答しか帰ってこない。

 どうしたもんかねぇ。もうすぐ小5になるのに、あんなんでいいのかなぁ。

 私はいつも悩んでるけど、誰にだって悩みはあるよなぁ。だから幸人くんも死んじゃったわけだし。

 …………そろそろ幸人くんに対して、くん付けやめようかな。

 だって幸人は私の……。


 これ知ったら悠馬くんは怒るかなぁ? 絶対に怒るだろうな。

 だから言えずにいるけどそろそろ話さないといけなくなるかもしれないなぁ。

 悠馬くんも私に正直に話してほしいな。

 お互い仲が良いと、幸人も、喜んでくれると思うから。


「あー!またお姉ちゃん、スナック菓子のカスが口の周りについてる。きったねぇー!きっとゴリラみたいに大量に鷲掴みしてむさぼり食ったんだ!」

 からかってくる弟を黙らせたあと、私は部屋に戻ってまた考え事をしだした。もちろん暴力で黙らせたわけじゃない。ちょっと姉の権力ってものを見せてあげただけ。


 幸人についてこれ以上知れるのは悠馬くんだけっぽいなぁ──。

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