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思い出の場所

 今日は友見との約束の日の前日、金曜日だ。

 明日のために今日はまだ9時だけどもう寝よう。

 「(久しぶりにあのデパートに行くな。)」

 少しだけワクワクしながらベッドに眠る。

 こういう時はワクワクしすぎてなかなか寝付けないのが普通なのだろうが、なぜか今日はすぐに眠れた──。


 だが、目を開けるとそこは教室だった。僕が知らない教室だ。

立ち上がると、いつもよりも目線が低い。……いや、違う。僕の身体が小さいのだ。

 窓へ向かい、外を見ると夕焼けが綺麗だった。そして時計を見る。

 〝4時半〟やはり今は夕方だ。みんな帰ってしまったのだろう。教室は静まり返っている。

 誰もいない教室の一番後ろの窓側の席の横に黒色のランドセルがポツリと置いてある。

 きっと僕のだろうな。

 ……待てよ。ランドセル、そして僕の体の大きさ、これは、僕は今小学生なのか?

 わけがわからない。僕はベッドで寝て、それから……。

 そうだ! これは夢だ! 

 僕はすぐに右頬を叩く。それと同時に痛みが走る。だが、何も変わらない。

 もう一度、今度は左頬を叩く。先ほどと同じく傷みが走る。だがやはり何も起こらない。

 夢から覚めない。ていうか僕はこんな教室知らない。これはまた幸人の視点か?

 と、思った時にさっき叩いた両頬に涙が流れる。僕は今泣いている。頬を叩いた痛みで泣いているわけじゃない。何で泣いているのか分からないがなぜか涙が止まらない。辛い感情になる。

 僕は一人、誰もいない教室で泣いていた──。


 その時、目が覚めた。時計を見ると朝の6時。土日は平日と違って少し遅く起きるのだ。だから別に5時半じゃなくても6時でいいのだ。

 朝ごはんの支度をしなければいけないため、だるい体を起こしてキッチンへ向かう。

 朝ごはんはちゃんと栄養をとったほうがいい。だから今日は豚の生姜焼きを作って食べた。

 一人で食べても、大人数で食べてもご飯の味は変わらないと思う。だってそんなにただの思い込みだから。

 生姜焼きを食べ終わったら、歯磨きを3分間して、着替える。今日は少し冷えるため紺色のパーカーを羽織る。

 友見との集合場所は僕たちが通っている高校の校庭だ。

 僕たちの家よりも、高校のほうが目的地に近いというただそれだけの理由だ。

 僕はちゃんと集合時間の5分前に校庭に着くように家を出た。


 校庭に着くと、まだ友見はいなかった。

 外は風が吹いて少し冷える。やはりパーカーを着てきて正解だった。だいぶ寒さを軽減できている。

 少し待ったが友見がこない。スマホを開いて時間を見る。集合時間の1分前だ。とちょうどその時、友見が遠くから走ってくるのが見えた。

 カバンを肩からかけて、冬用のコートを着ている。

 僕のところに来ると息を切らしながら、間に合った? と聞いてくる。

 ギリギリ1分前だと伝えると良かったと安心していた。

「お前こういうのは集合時間の5分前に来るのが社会の常識だぞ」

「ごめんごめん。でも間に合ってるからいいでしょ?」

 まぁ、遅れるよりはいいか。

 友見の体力が回復したら駅へ向かって歩き出す。

 まずは僕が行きたいデパートだ。隣町にあるので駅へと向かっているわけだ。

「そういえばお前の行きたいところってどこだ?」

 今更だが聞いてなかったので聞いてみた。そしたら、

「まだ秘密!」

 と教えてくれなかった。まぁどうせ今日知れるんだし別にいいかと思い、それ以上は聞かなかった。


 駅に着き、隣町へ行く。随分長い間来てなかった街だから、懐かしさを感じる。

 一方の友見は来たことがなかったのか、あたりをキョロキョロしている。

「道は調べたから、着いてこい」

 一度しか行ったことのないデパートだから道はあまり覚えていないため、Googleナビに道案内を任せる。

 十数分歩くとデパートに着いた。久しぶりに来たがやはりでかい。

 隣で友見も驚いた表情をしている。

 僕たちはエレベーターで3階の本屋へ行く。

「ここで僕は、幸人と一緒に……この小説を買ったんだ」

 と言い、僕は夢物語というタイトルの小説をカバンから取り出す。

「へぇ、こんなところにも来てたんだ」

「まぁな。そしてここで本を買って、その後1階のレストランで……何を食べたっけ?」

「忘れてるじゃん……。まぁ何年も前のことだから無理もないだろうけど」

「悪いな」

「なんで謝るのよ。別にいいじゃない。私は忘れることこそ人間らしさだと思うよ」

 人間らしさ、か。僕は人間なのだろうか。もしかしたら宇宙人かもしれないし、小さい個体のビックフットかもしれない。はたまた、誰も知らない何かかもしれない。それは誰にも分からないことだ。

 僕と友見は1冊ずつ今いる本屋で本を買い、もうすぐお昼になるので少しデパートの中をブラブラしていた。

 途中、友見がこんな事を言ってきた。

「悠馬くんはさ、幸人くんのこと、どう思ってたの?」

「親友だよ」

 僕は即答する。そりゃそうだ、僕たちは固い友情で結ばれていたのだ。いや、今も結ばれているのだ。

 僕の答えを聞くと

「そっか!」

 と、短く笑った。


 時計の針が12時半ごろを指したとき、僕たちはレストランで食事をとっていた。

 僕はマルゲリータを、友見はカルボナーラを頼んだ。

 マルゲリータなんてそうそう食べる機会がないためゆっくりと味わう。

 それに対して友見は無言でパクパク食べている。

 そういえばこいつは親がいるからお金があるのか。

いつもこんなものを食べているのか、と少し羨ましい気持ちのままマルゲリータを食べすすめる。

 僕たちは食べている間は何もしゃべらなかった。


 もうデパートは満足したので次は友見の行きたい場所に行くことになった。

 この街ではないそうなので僕たちはまた駅へ向かった。電車の中で目的地を聞くも、着いてからのお楽しみ、と言われてしまった。

 ちなみにどこに行くのかは微塵も見当がつかない。

 そうして2つ先の駅で降りて、今度は友見についていく。

 しばらく歩いて着いたのはカラオケだった。

「もしかして……ここか?」

 僕が聞くと友見は首を横に振った。

「いや違うよ、私が行きたい場所は夜のほうがいいの。だから時間を潰して行こ?」

 カラオケなんて歌える曲がないのだが……。と言ったら時間さえつぶれれば別にいいと言い、近くのゲーセンに行くことになった。

 もちろん僕はお金がないので友見がやっているクレーンゲームを見たり、メダルゲームのメダルを友見から少しだけ分けてもらって、実際にやってみたりした。


 そうしているうちに外は暗くなっていた。

 僕たちは夜ご飯を食べずに歩いた。

 そうして着いたのは一つの公園だった。この公園は丘の上にあるため坂を登るのが大変だった。だが、そのかわり街中が一望できる。

 きっと夜に見たかったのは一つ一つの家の光が輝いているからだろう。

「ここは昔、幸人くんと一緒に夜まで遊んだ公園。夜になるまで遊んでたなんて本当に子供だったんだなぁって思う。でもその子供の時の幼い心のおかげでこんな景色を知れたんだけどね」

 友見の方を見ると少し寂しそうな顔をしながらこう呟いた。

「もう会えないもんね……」

 その通りだ。僕たちはもう幸人には会えない。だから忘れなくちゃいけない。人間らしく生きるために。

 そのために僕はきっと幸人のすべてを知って、悔いが残らないようにしたいのだ。


 僕たちは街の景色を堪能して、駅へ向かった──。

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