僕の日常
家に帰ると、ふと近場の銭湯に行きたくなった。
久しく行ってなかったので、たまにはと思い、すぐに準備して出かけた。
まだ日は落ちてないので自転車で向かった。
その銭湯はかなりの有名どころだが、家からかなり近いので僕はラッキーだ。まぁ、たまにしか行かないからあまり意味はないけど。
銭湯につき、体を先に洗い、湯船につかる。ここも幸人と1回だけ来たことのある場所だ。家の風呂は少し狭く、足もまっすぐ伸ばせないのでここでは遠慮なく足を伸ばす。
10分ほどしたら少し暑くなってきたので、露天風呂へ向かう。外は寒いので、すぐに露天風呂に飛び込みたくなるが、他の人がいるためそんなことはしない。
足からゆっくりお湯に入り、リラックスする。
意外といいもんだな。そういえばこの温泉で幸人とどっちのほうが長く湯船に浸かってられるか勝負したな。今思えばなんて子供らしかったのだろう。
僕は幸人がいなくなってからあまりはしゃがなくなり、落ち着いた性格になった。子供のような無邪気さはもう僕には残ってない。
風呂から出ると、僕はコーヒー牛乳を飲む。銭湯で飲むコーヒー牛乳は最高に美味い。
幸人は、普通の牛乳が好きだったっけ。普通の牛乳ならいつでも家で飲めるのに、と前に言ったら『家とここの牛乳では味に大きな差があるんだよ』と言っていた。僕はあんまり違いを感じない。
コーヒー牛乳を飲み干し、帰ろうと思ったその時、
「あれ?悠馬くんじゃ〜ん」
後ろから聞き覚えのある声がしてきた。振り返ると予想通りの人物がいた。
それは友見だ。
「幸人くんのおばあちゃんには会ってきた?」
「ああ、幸人の昔の頃の写真とかも見せてもらった」
「そっか、何か手がかりになりそうな情報はあった?」
「幸人の親はクズだってことだ」
「あれ?それを私が言ったらバカにしてるって言ってきてのは誰だったっけなぁ?」
「……それは悪かった」
「いいよ、いいよ〜。てか他にはないの?」
「あとは、今の幸人の親はどっちも本当の親じゃないってことくらいか」
「え?そうなの?そんなの聞いたことないんだけど」
こいつ、本当に従兄弟か?
「俺も初めて聞いたよ。きっとその環境が辛くて逃げ出したんだと僕は思っている」
「そうなんだ……。まぁ話は進んだし良かったんじゃない?」
「ああ、そうだな」
幸人が死んだのはきっとあの環境のせいに違いない。そうだ、きっとそうだ。
「悠馬くんはさ、今から帰るの?」
「そうだけど……」
「じゃあさ、私も一人で来てるから一緒に帰ろ?」
「えぇ〜、めんどくさ」
「女の子が誘ってくれたのにそんな事言わな〜い」
と頭をチョップされた。
結局2人で歩いて帰ることになったが、帰り道はあんまり話さなかった。あんまり、だから少しはしゃべったのだが。
僕と友見の話の話題はいつも幸人だ。僕も、そしてきっと友見も幸人と〝関係のある人〟だから話し始めたんだ。
友見は、分かれ道で「じゃあまた月曜日にね。明日幸人くんの通っていた中学校に行ってくるから」
「ああ頼んだ」
友見も本格的に動き始めてくれている。僕ももっと調べなければいけない。
明日は……家の掃除をしないといけないんだった。
はぁ、かったるいな。家に帰っても一人だし、暇なんだよなぁ。
と、思いつつも日が沈み始めているのでまっすぐ家に帰ったのだが。
日曜日はいつも掃除だ。家中を1日中掃除しまくる。
家の半分ほど掃除し終わったとき、時間でいうと午前11時頃にドアベルが鳴った。ドアを開けるとそこには友見がいた。
「……今日は幸人の中学校に行くんじゃなかったのか?」
「午後しか許可が取れなかったんだよ、しょうがないでしょ」
「で、何をしに来た?」
「暇だからさ、一緒にご飯食べに行かない?」
「それは無理だ。僕は家を掃除しなくちゃいけない」
「いいじゃん、そんなの親に任せれば」
「その親がお金だけ置いて、家に帰ってこないと言ったらどうする?」
「まじか……なんかごめん」
「別に気にしてないから良いよ。でもご飯は行かないから」
「そこをなんとか」
「行かないったら行かない」
「お願い!土下座するから」
「なんでそんなに行きたいんだ?」
「その……、誘う友達いなくて」
「かわいそうに……」
俺が哀れな目を向けると友見が少し怒った。
「とにかく!一緒にお出かけでもいいから行こ!」
「お出かけのほうが時間かかるだろ!バカなのか?」
「はいそうで〜す!私はバカで〜す!」
そのまま小学生のような喧嘩は20分ほど続いた。
「全く、あいつってやつは!」
結局今日は帰らせたが、来週の土曜日にお出かけすることになった。
そして、行き先が2人の幸人との思い出の場所ということで、僕は今どこに行こうか迷っている。
たくさんの思い出の場所がある。一緒に買い物をしたり、テーマパークに行ったり、夜空がきれいで街が一望できる公園だったりと、まぁいろいろだ。
……一番の思い出の場所、か。僕にとっては幸人と過ごした日々、そのすべてが思い出なんだけどな。
そんな考え事をしていたら家の掃除が終わった。外は暗くなり始めていた。
掃除が終わったため自分の部屋に行く。そして引き戸を開ける。
奥の方から1冊の小説を取り出す。
その小説は〝夢物語〟という名前だ。これは昔に幸人と一緒に大きいデパートへ行った際に買ってもらった小説だ。
僕は来週の土曜日にそのデパートへ行くことに決めた。
翌日の昼休み。屋上で僕と友見が話し合っていた。
「何か分かったのか?」
「うん、幸人くんと君は違うクラスだったから分からなかったと思うけど幸人くんはいじめられてたんだって」
「いじめ……」
「担任の先生の先生はそれに気付いて何回も声をかけたそうなんだけど、いつも大丈夫って言って話してくれなかったそうよ」
「そうか……」
本当なら僕が気付いてやらなければいけなかったのにな。僕は何回も相談していたけど、幸人は僕には相談はしなかった。ずっと抱え込んでいたのだろう。僕はバカだったんだな。
「……それ以外には何かあったか?」
「いや、何も。今話したので全部だよ。いろいろ話してくれたけど、ほとんど君が知っているようなことだった」
「分かった。あ、土曜日のことだが行きたい場所、僕は決まったぞ」
「お、意外と早いね!私も急いで決めないとな〜」
昨日は日曜日。つまり今日は月曜日。土曜日まで、退屈だな。早く土曜日になってほしい。
そう願いながら、チャイムが鳴ったので僕は友見と軽くお別れの言葉を言って教室に戻った。
もうこの作品も折り返し地点くらいにはなってきているので、ブックマーク保存などなどをしてくれるとありがたいです!




