夢の正体
暗い部屋。なぜか今日はいつもよりも早く起きてしまった。時計を見ると4時と書いてある。今日は金曜日。
昨日、僕パートナーができた。これで幸人についてたくさん知ることができる。
二度寝すると5時半に起きれないような気がしたから、本を読む。もう少しでこの本も読み終わる。今は5章を読んでいる。この本は6章で終わりだ。朝のうちに読んでしまおう。
そんな時にその小説に書いてあるあるセリフに目がいった。
それは一人ぼっちの主人公が、知らない人から『かわいそうだから友達になってあげるよ』というセリフだ。
あれ? なんでだろう? どこかで聞いたことがあるような……。
そうだ、幸人だ。幸人と親友になるきっかけのあの言葉だ。
目ヤニを掻きながら、読み進めていく。僕はこの本が好きだ。悲しいストーリーも好きだし、幸人に似ているから好きだ。
あくびをする。ふと同時にあることを思い出す。
それは幸人のおばあちゃん家だ。あそこに行けば何かが分かるかもしれない。しかも明日はちょうど土曜日だ。スマホのLNIEを交換していないため、事前にアポは取れない。というか会ったことがないのだが。
いや、幸人の親に頼めばいいのか。なんでこんなことが思いつかなかったのだろう。早く明日にならないかな。そうすれば幸人の昔の話も聞けるかもしれない。確かおじいちゃんは亡くなってしまったって幸人が言っていたから今は一人暮らしなのだろう。
本を置き、準備をする。家は隣の県だと幸人が言っていた。お金と、スマホと、ペットボトルに水道水を入れて、冷蔵庫で冷やしておく。お金に余裕がないためこうするしかない。店で買うとお金がかかるから。
そうこうしているうちに5時半にかけていたアラームが鳴った。準備は途中でやめて、ご飯の用意をする。食べ終わったら7時には家を出る。学校と家の距離が遠いこともあるが、僕自身が歩くスピードが他の人よりもおそいのだ。
学校に着くとやはり友見が廊下から教室を見渡している。
「おはよ~!」
「相変わらずだな。何かつかめたのか?」
「つかめたってわけじゃないけど、提案があってさ。幸人くんのおばあちゃんに会えば何かわかるかもって思ってさ」
それはまさしく僕が朝考えていたことと合致していた。
「僕もそれを考えてた。そして今日幸人の親に会いに行ってアポを取ってもらう。許可さえ下りれば明日にでも会いに行くつもりだ」
「わ!行動力のおばけ!」
「うるさいな、用件が済んだら帰ってくれ」
「はぁ〜い、じゃあ明日は君が幸人くんのおばあちゃんに会いに行くってことだから、私は幸人くんの中学生の時の担任の先生にでも会いに行こうかな」
「そんな事できるのか?」
「もちろん!じゃあ各々調べたことを月曜日に共有するっことで」
「ああそれでいこう」
挨拶をして帰っていく友見を見ているとやはり幸人に似ているような気がする。ちょっぴり楽しい。
でも所詮は幸人の従兄弟。幸人とは違うからどうしても普段通りに明るく喋ることができない。
『いろんな人に対して態度を変えることは決して悪いことじゃないと思うんだよな〜』
そういえば幸人が昔こんな事を言っていた。幸人が言うのならそれが正しいのだろう。君は絶望の淵にいた僕を助けてくれて、いろんな事を教えてくれて、まるで家族みたいだった。本当の家族。僕が求めていたものだ。
「君にもう一度だけ会いたいな……」
そんなことをつぶやいた。
土曜日になった。昨日幸人の親に会いに行ってアポを取ってきた。電車で行くことになるけど、その前に途中で何かお見上げを持って行ってあげよう。手ぶらで行くのは失礼というものだ。
僕はこの街で1番有名な饅頭を買って電車に乗った。初めて乗ったが、すごく楽だな。人が少ないってわけじゃないけど、座れる場所もいくつかある、それくらいの人数が電車に乗っている。
早くつかないかな〜。とゆらゆらと電車に座っている。少し眠たくなってしまって、目を閉じた。
少しして目が覚めた。どのくらい時間がたったのだろうか。スマホで確認すると9時5分と表示されている。確か電車に乗ったのが8時50分くらいだったから、そんなに寝てはないか。良かった。多分降りる駅はもう少し先だ。
するとアナウンスで、僕が降りるべき駅を言っている。僕は降りたときに大きく深呼吸をし、体を伸ばした。
ここから二十分ほど歩いたところにおばあちゃん家があると幸人の両親が言っていた。
教えられた住所をたどって少し古い、Theおばあちゃん家、見たいな外見の家に着いた。
ピンポンを押すと中から女の人が出てきた。歳は60後半といったところか。事前に幸人の両親におばあちゃんの名前を聞いていたので、本当に彼女が幸人のおばあちゃんなのか確かめる。
「辰巳紀子さんですか?」
「ええそうよ、あなたが幸人の親友なのね。どうぞ中に入ってちょうだい」
招かれたので僕は言われたとおりに家に入る。すると目に入ったのはこたつだ。もうこたつを出しているのか、と思っていると
「ごめんね。私寒がりで」
「いえいえ、人によって寒さの感じ方も違いますから。あ、これ僕の住んでいる街で有名な饅頭です」
と言い、僕はお見上げを紀子さんに渡す。
「まぁ、ありがとうねぇ。えーと、今日は幸人について知りたくて来てくれたのよね?」
「はい」
「じゃあちょっとお茶を出すからこたつでゆっくりしていてね」
「分かりました」
やっぱりいくら幸人のおばあちゃんでも、2人で話すのは気まずいな。僕は幸人以外基本的にしゃべってなかったからな。
「はい、麦茶でいい?」
「あ、大丈夫です」
紀子さんがこたつに入り、話が始まった。
「それで幸人の何を知りたいの?答えれる範囲なら答えるわよ」
「では、まず僕が一番気になっていることを聞かせてください。幸人はなんで突然いなくなって死んでしまったのか、分かりますか?」
「ごめんね、幸人は本当に誰にも相談してなかったみたいでね。もちろん私にも。だからそれに関しては幸人しか知らないのよ」
「そうですか……」
まぁ予想通りだ。なら次の質問に行こう。
そこから雑談みたいな感じでたくさん話し合った。幸人の幼い頃の写真も見せてもらった。だが、その写真に写っていた、両親らしき人たちに見覚えがあった。
それは、あの不思議な夢に出てくる2人だった。頭の理解が追いつかなかった。しかもこの父親は死んでしまったのは知っている。友見が教えてくれたから。だが、この母親はだれだ? 今の幸人の母親とは顔が全然違う。
「この女の人は誰ですか?」
気がついたら僕は質問していた。
「この人はね、幸人の本当の母親よ」
「え?じゃあ今の母親は?」
「別の人よ。血は繋がっていない人。ちなみにこの父親の人については何か知っているの?」
「幸人が中学の時に亡くなってしまったと言う事なら」
「そうよ。でも、この女の人も消えてしまったの。この父親がひどい人でね。あ、ちなみにこの女の人が私の子供ね」
「今は生きているんですか?」
「死んだとは聞いてないからどこかで生きていると思うわよ」
「そうですか、ありがとうございました」
そろそろ帰らないといけない時間になっていた。
「分かったわ。お見送りしてあげようか?」
「大丈夫です」
僕は優しく言う。幸人に年寄りには優しく接したほうがいいと教えてもらったから。
幸人について色々知れたな。なんだか嬉しい。だけど、もしあのおばあちゃんが言っていることが本当なら、僕の見た夢はきっと幼い赤ん坊の頃の幸人視点だ。そう考えると確かに父親はクズだな。まぁ、別にいいが。
ふと、なんで僕は幸人の事を全部知ろうとしているのか、自分に対して疑問が浮かぶ。
だが、その答えは簡単だ。それは、
「僕が心から幸人の事を好きだと言っているからかな。もちろん、友情として」
僕はそう自分に対して微笑んだ。そして電車で家に帰った。
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