パートナー
「辰巳幸人くんについて知りたくない?」
そう友見は微笑んだ。
「知りたいっちゃ知りたいけど……」
「ほんと!?良かった!」
随分と喜ぶんだな、と思った。
「そんなことを聞いてくるのってことは何か幸人について知っているのか?」
「ううん、何も知らない」
は? こいつは僕に幸人のことを教えてくれるんじゃないのか?
「あ、ごめんね、言い方がおかしかった。幸人くんについては結構知っていると思う。だけどもうそれはすべて君が知っているようなことだろうから。君が知りたいことは何も知らないって意味ね」
「そうか、じゃあなんで僕に話しかけてきたんだ?」
「それはね私が幸人くんのことを知りたかったから」
なるほどな。だが何でこいつは幸人のことを?
「君は幸人くんと仲が良かったからね、いろいろ聞きたくなっちゃって」
「なんでそんな事知ってるんだ?」
「幸人くんについてクラスの人とかにも聞いてみたんだけど、そしたら君の名前が挙がったから」
「ふうん」
「興味なさそうだね」
「だって幸人のことをお前に話すつもりはないし、ていうか何でお前はそんなに幸人のことを知りたいんだ?」
すると友見は一瞬黙り、そして喋りだす。
「私は幸人くんの従兄弟だから」
「!!」
そんなの知らなかった。まさか幸人に従兄弟がいるとは思っても見なかった。いや、別によくあることか。僕は従兄弟なんていないからな。
「そうか、お前の幸人に対する気持ちは分かった。血のつながった従兄弟だからこそ突然死んでしまった理由を知りたい、と」
「そうそう!でやっぱり教えてくれない?」
…………どうするか。正直幸人については僕だけが知っていればいいような気がする。というか幸人のことをたくさん知っているのは僕だけでいい。そう思った。
「話す気はない。僕は僕で幸人について調べる。そして知り尽くしたら…………」
「尽くしたら?」
『キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン』
「わ、今日は掃除がないから授業そろそろ始まっちゃう。じゃあまた会いに行くから!」
慌て過ぎだろう。授業に遅れたからといって別に退学になったりするわけでもない。ちょっとだけ叱られるってだけだ。なんでそこまで規則正しくするのか。
僕にはわからないな。正しいことがすべてじゃないのに
家に帰り、ポストを確認するとお金が入っていた。これでまた生きられる。そして生かされる。
今日は幸人に従兄弟がいた事を知れただけで嬉しい。だから今日は久しぶりにカレーライスを作った。1人で椅子に座って、『いただきます』って言って食べて、食べて、食べて、洗い物をしてシャワーを浴びてベッドに横たわる。そしてまた幸人が好きだった本を開く。確か3章まで読んだんだっけ。
僕は4章を読み始める。やっぱり悲しいストーリーだな。僕はこんな経験なんかしたくない。と思ったが、たった今両親が遊びまくっているため1人で生きていることを思い出す。
幸人がいれば一人じゃないのに。
今日は眠かったので、4章を読み終わるとすぐに部屋の電気を消して眠った。
またしてもちゃんと5時半に起きれた。夢も見ていない。きっとあの2日間が異常だったんだ。
朝食を食べて、学校に行く。今日は木曜日。今日さえ乗り切れば、あとは金曜日で、土日になる。といっても、暇だからボーっとしていることに変わりはないが。
学校に着くと、友見が僕のクラスをドアから覗いていた。廊下を通り過ぎる人たちにクスクスと変な人扱いされているのを理解しているんだろうか。
「何やってるんだ?」
「あ!おはよう。成瀬悠馬くん」
「名前呼びでいい」
「お!これで私たちは友達ってことだね?」
「全然違う。赤の他人だ。」
「ひどーい!て、そんなことを話しに来たんじゃなかった!」
友見の表情がちょっぴり真剣になる。
「幸人くんとは中学生の頃は別の学校だったからあんまり分からなかったから、昨日幸人くんの親に聞いてみたんだよね」
「そうか、で何が分かった?」
「幸人くんは中学生の頃にお父さんが死んじゃったんだって」
「?じゃあ今の幸人のお父さんは?」
「再婚したそうよ。なんか昔の父親は人間としてクズだったそうよ」
「バカにするな。幸人の父親だ。どんな人間であれ僕はバカにはしてほしくない」
「バカにはしてないよ。事実を言っているだけ」
「とにかく、幸人の今の父親は、昔の父親とは違う人なんだな」
「そゆこと」
「分かった。助かる」
「……ねぇねぇ、一個だけ頼み事をしていい?」
「……内容は?」
「私のバイトに新人として来てくれない?私ミスばっかだから、まともな新人連れてこないとそろそろクビにするぞ!って言われて」
「嫌だな。行かない」
「そこをなんとか。ほんとにピンチなんだよ」
「別にクビになったって別の仕事があるだろう。いいじゃないか、それも経験だ」
「そんな経験したくないんだけど……」
「とりあえず、もうすぐ朝の号令が始まるから、ほら帰った帰った」
僕は半ば強引に友見をクラスに帰らせた。すると、廊下のすぐそこにある3年生のクラスが並んでいる階へと続く階段から声が聞こえた。
「悠馬くん!私あきらめないから!」
しつこいな。そろそろあきらめてくれてもいいのに。
……でも、手を組むってのも案外悪くないのかもな。流石に僕一人では調べきれない。なんで幸人は急にいなくなったのか。気になって仕方がないこの気持ちを理解し合えるのはあいつだけだ。
それに従兄弟ってことは僕の出会う前からの付き合いってことだ。僕の知らない何かを知っているかも。『君の知りたいことは何も知らない』って言ってたけど、もしかしたら嘘かもしれない。従兄弟なら昔の幼い頃とかま知っていていいはずだろうに。
「また昼休みも来たら、考えてやるか」
「悠馬くん!」
やっぱり来た。本当にしつこいな。だが、それだけ幸人のことを知りたいってことか。
幸人のことを好きになってくれているのはちょっぴり嬉しい。もちろん、友達として好きって意味だ。異性として好きになっていたら僕はこいつに何をするか分からない。
「本当に幸人について一緒に調べてくれるのか?」
「うんうん!もちのろんだよ!」
「はぁ、仕方ないな。分かったよ、ただバイトは行かない。今は別のところでちゃんとバイトしてるから」
断るために嘘をついてしまった。本当はバイトなんかしてない。でも、そろそろしたほうがいいのかなって思ってきてる。だって親の送ってくれているお金だけじゃちょっと苦しいから。
「バイトに関しては君に言われたから、辞めることにする。なんか私には合ってなかった気がするからさ」
「じゃあ、私たちは〝協力者〟つまり〝パートナー〝だね!!」
「……なんかちょっと嫌だな」
「えーー!いいじゃん!」
「まぁいいけど、じゃあお前はお前で色々調べてくれよ?」
「任せておいて!」
僕にパートナーができた。もちろん一時的なものだが。幸人について知れたら、こいつともおさらばしよう。
幸人、君は何者だったんだ──?
全てを知るときが近づいてきている、なぜかそんな気がする。
ここまで読んでくれてありがとうございます!!感謝しかねぇ!!




