友情に縛られていく。
ぐっすりと眠れた朝の気分は最高だった。カレンダーを見て気づいた。今日は終業式だったのだ。
明日から春休みに入る。そうしたら高校3年生だ。大学生になったらもう成人。つまり大人だ。
大人……か。嫌だな。就職して毎日毎日奴隷のように働いて、大変だろうな。
でも仕事終わりのビールは美味しそうだな。そう考えると少しは救われる。
友見ともお別れだ。意外と短い時間だったな。それでもいい思い出になった。
リラックスをしていると、朝ごはんを食べていなかったので、空腹になってきた。
パンにジャムを塗り、冷蔵庫にあった野菜ジュースを取り出す。
それぞれを食べ終わったあと、温かいホットミルクを飲む。やはり作ったばかりでは熱くて飲めないな。
少し冷めるまで待って、飲み干した。
ホットミルクを飲むと、昨日の悲しい感情を思い出す。
でも、幸人は死んだんだ。その事実は何も変わらない。それを理解した僕は意外と大人に近づいているのかもしれない。
学校に着くと、久しぶりに幸人のいた教室に行ってみたくなった。なぜか、これがもう最後だと思ってしまった。
幸人のいた教室に行くと、20人ほどがクラスで話していた。まだ、少し早い時間帯なのでもう少しあとに、残りの人たちが登校してくるのだろう。
「失礼します」
と言い、僕は教室に入る。ちょうど担任の先生はいなかった。
そして幸人の席の前に立ったその時。
「おい!」
3人の男子生徒と、2人の女子生徒が話しかけてきた。その中のリーダー的存在感を放っている一人の男が。
「そいつになんのようだ?」
初対面にしては強い口調で話しかけてきた。それに僕はちゃんと答える。
「彼は僕の親友だから、会いに来ただけだよ」
すると、その5人組全員が笑い出した。
「アハハハハハハ!あんな馬鹿と親友だって!」
「しかも、会いに来たなんて。もうあいつはこの世にいないのに!」
ゲラゲラと笑っているそいつらに僕は一言言ってやった。
「違うよ」
「は?」
「違う。幸人は馬鹿じゃないよ。僕にとっては神様みたいな人だった」
「は?何いってんだよテメェ」
リーダー的な男がさっきよりも強い口調で圧をかけてきた。
「あいつが神様?んなわけねぇだろ。あいつはゴミだ。俺達が遊んでやってた生徒を助けるために、学年主任の先生にチクりやがった!だから、今度はあいつで遊んでやってたんだよ!」
その怒号がクラス中に響き渡り、全員が静まり返る。
それでも僕は言葉を発する。
「幸人は優しいんだよ。間違っているのは君たちだ」
そう言った瞬間。
「じゃあ今度はテメェで遊んでやろうか?ああ!?」
僕が、断ろうとした瞬間、このクラスの担任の先生が帰ってきた。そして、影で見てた一人の生徒が全てを話した。
これで幸人のことを馬鹿にしたことを叱ってくれるだろうと、安心したが。
「早く出ていきなさい」
何故が僕だけがクラスから追い出された。
理由が分からずに帰ったふりをして、扉の横に隠れて、教室の中の会話を盗み聞きした。
「まっさか幸人に親友がいるとはな」
「しかも変なやつですよ。めんどくせぇ」
「まぁまぁそう言わずに、ね?別にいじめのことはまた隠してあげるから、自由にして、ね?」
それを聞いて怒りがこみ上げてきた。なんせ、いじめを隠すと言ったのは、紛れもないそのクラスの担任だったからだ。すぐにでも証拠を手に入れて校長先生に言いに行きたかったが、なぜかそんなやる気が起きなかった。
幸人がいじめられてたのは知っていたが、まさかあれほどとは。まぁ、あいつらはきっとバチが当たるだろう。
教室に戻り、授業が始まる。そしてそれをあと3回繰り返してお昼になった。お昼ご飯はおいしいから好きだ。
そして昼休み。僕が教室にいると、友見がやってきた。そのまま屋上に連れて行かれた。
この屋上は友見と初めて出会った場所だ。
そんなことを思っていると友見が本題を切り出してきた。
「私さ、今日引っ越しちゃうんだよね」
いやいや、いきなり過ぎるだろ。
「昨日も本当は準備しなくちゃだったけど、親に無理を言って、幸人の家に行ったんだよ」
そうか。つまりもうお別れか。
俺の顔を見て察したのか、友見が僕を安心させようとしてきた。
「大丈夫。別に死ぬわけじゃないんだしまた会えるよ。もしかしてそんなに寂しいの?」
「違う、馬鹿にすんな」
「そっか〜、寂しいのか〜」
「だから違っ……」
友見に言い返そうとした言葉が、喉のところで止まった。
友見は泣いていた。そして自分でもなぜ泣いているのか分からないようだ。
「あれ?なんで泣いてるんだろう……。おかしいよね」
「おかしくなんかない。お前は一人の人間だ。辛いことがあったら泣いていいんだ。大人になっても泣きたければ泣けばいい。それは誰にも否定できない」
僕は友見をまっすぐ見据えてそう言った。
すると今度は友見が僕をまっすぐ見据えてきて。
「ありがとう。幸人のことを知れたのは君のおかげだよ。本当に感謝してる」
「また会おうな」
「うん!絶対ね!」
僕たちは小指と小指を結んだ。
また僕はひとりぼっちになってしまった。先ほど友見のお見送りをしてきた。
最後に友見が僕を勇気付けようとしてくれた。
「君はこれから好きなようにやるんだよ。寂しくなっても君の心には幸人がいるから。君が忘れない限り幸人は生き続けてるから」
そうか。そうだよな。僕が幸人を忘れなければいいだけの話だよな。
「そっちも大変だろうけど頑張れよ」
僕も一応、応援しておいた。
「じゃあもう出発するから。また絶対会おうね」
「ああ!当たり前だ」
そう言い、友見はこの街を離れた。
寂しい気持ちと裏腹に、少しだけ安心感があった。なぜなら僕には幸人がついてるから。もしかしたらこれは友情だけではなく、愛情でもあるのかもしれないな。それもまた良いな──。
僕の名前は成瀬悠馬。僕には辰巳幸人というたった一人の親友がいた。その人は死んでしまったけど、僕は絶対に幸人のことを忘れない。そして忘れないからこそ、僕はこれから現実に悩まされていく。それでも僕は、幸人の事が好きだ。大好きだ。それは友情ともとれるし、愛情ともとれる。もう、誰にも幸人のことを否定させない。僕が、今度は幸人の事を守り続けるから。だから安心して眠っていいよ、幸人。
僕はまだ肌寒い外を歩いていた。白い息を吐きながら、僕は幸人のことを想っていた。
幸人。僕と出会ってくれてありがとう、
僕は君とまだ友情という鎖で結ばれていて、縛られている。
僕はこれから生きていく中で友情に縛られていく。
そして家に着いて、扉を開けて誰もいない空間に向かって。
「ただいま」
そう呟いた。
しばらくの間投稿できてなくて申し訳ありません。最近忙しすぎて。これからも投稿頻度は低いかもしれませんが、頑張って投稿していく予定ですので、これからもよろしくお願いします。
友情に縛られていく。今回で最終回です。もしよければ感想など呟いていただければ、モチベーションが上がります。




