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成瀬悠馬

 秋風が体に触れる。もう秋がやって来たのか。体が冷える中、僕、成瀬悠馬なるせゆうまは一つの墓の前に立っている。

「久しぶりだね。幸人ゆきと

 幸人とは俺の唯一の親友、辰巳幸人たつみゆきとのことだ。

 僕と彼はずっと一緒だった。僕は毎日のように家に行って幸人と話したり、ゲームしたり、勉強したりしていた。 その時は〝友情〟という言葉が大好きだった。だってそれは僕たちのためにある言葉だと思っていたから。

 僕と幸人はいつも一緒だった。中学の時も、高校のクラスは違ったけど、それでも学校終わりにはいつも一緒に帰っていた。毎日毎日一緒に帰って、そして僕は家に着くと荷物を置き、ゲーム機と勉強道具を持ってすぐに幸人の家に行く。それが俺の日課だった。ほとんど自分の家にはいなかったけど、僕は幸せだった。この〝友情〟という関係がいつまでも続くと思っていた。

 でも幸人は突然死んだ。


 幸人。君はいつも優しかった。

 秋風に吹かれるたび、体が冷えるたびに思い出す。幸人との思い出。

 僕は立ち上がり、墓の前で一礼して振り返る。これからは自分1人で頑張らなくちゃいけない。そう思いながら家に帰り、ベッドの布団に包まる。幸人……君との思い出をもう一度だけ作りたい。そう思ってしまう。

 何をどう悔やんでも幸人は死んだ。だからもう、お別れだ。最後に君のことを考えて寝よう。風呂にも入ってないし、ご飯も食べてないけど、そんな事どうだっていいんだ──。


 出会いはいつだったっけな。……そうだ。中1の時だ。僕の親はほとんど家に帰らずに遊びまくっていた。たまにお金を渡してくれるけど、郵便ポストに入れて、すぐに帰ってしまう。実際の親の顔すら見れない。そんな日々だった。だからいつも一人ぼっちだった。そんな僕だから、誰も優しくしてくれなかった。友達なんてものは僕の世界には存在しなかった。

 でも中学校に入学して、いつも通り一人で廊下の陰に座っていた僕に幸人が話しかけてきてくれた。

「えーっと、成瀬悠馬くん、だよね?」

「そうですけど……」

 緊張してどちらも敬語を使ったあの会話が僕たちの初めての会話だった。

「俺、辰巳幸人っていうんだけど、1人で何してるの?」

「別に何もしてないです。ただボーっとしてるだけ」

「なんで?」

「え?」

「なんで皆と話さないの?」

 あの優しく心配してくれた目を僕は一生忘れられない。初めて心配してくれる人に出会えた。僕はうれしいなんて言葉で表せないほど、感激した。

 そこで俺はすべて話した。親がほとんど帰ってこず、友達もいない日々のこと、全部だ。幸人なら心配してくれて、僕の痛みを分かってもらえると思った。すると、幸人の目から涙が落ちた。一瞬何かしてしまったのかと思い、焦りだす。すると幸人は、

「辛かったよね。もう大丈夫。僕が友達になってあげるよ」

 こう言った。

「友達……」

 僕とは無関係な言葉だと思っていた。だけど、この瞬間は友達になりたいという思いが強かった。


「じゃあ、今日はゆっくりしていってね」

 その日の帰り道、幸人にどうせ1人なら俺の家に来ないかって誘われた。僕はすぐに了承した。友達の家になんて行ける日が来るとは。

 すぐに家に帰り、勉強道具だけを持って言われた通りの住所に向かった。

 その家はそこそこのサイズの家だった。でも僕の家よりはでかくて、凄かった。ワクワクしながら幸人に続いて家にお邪魔する。

「いらっしゃい」

 と幸人のお母さんらしき人物が笑顔で挨拶をしてくれた。思っていたよりも若い。もはや20代なんじゃないかと疑ってしまった。でも実際は33歳らしい。俺は親がいま何歳なのかも覚えてない。物心ついた頃には家を放置し、遊びに行ってたから。俺にはそれよりも前の記憶がない。というか、それが一般的だ。そんな赤ちゃんくらいの時の記憶なんてある人のほうが少ない。

 幸人の部屋に行くと、そこはたくさんの物が置いてあった。フィギュアや、ゲーム機、自分で作った木製のティッシュケースだったりと、色々だ。

 初めて友達の部屋に入った感想は、〝楽しい〟という感情だった。自分とは全然違う趣味のものがたくさん置いてあって、すごく楽しい。

 そこで僕はゲームというものを教えてもらった。思っていたよりも5倍くらい楽しかった。だが、生活費だけでも大変なのに、ゲーム機を買うかねなんて僕にはなかった。すると、

「じゃあゲームがしたいとき、俺の家においでよ」

 と幸人が言った。幸人は優しくて、顔も僕より全然良くて、だからモテそうだなぁと思った。まぁ、実際モテてたんだが。

 クラス1の美少女と言われているマドンナさえも惚れてしまい、告白したがすぐに断ったらしい。なにせ、今は恋愛に興味がないらしい。〝今は〟ってことは〝いつか〟恋愛に興味がわいたら付き合うってことか? それは辞めてほしい。俺といる時間を彼女なんかに使わないでほしい。そんな事を考えながらその日は早めに帰った。


 それからというもの、幸人の家にいる時間が増えた。それでも喧嘩にもならないし、むしろ仲が深まった。幸人といるのは本当に楽しかった。

 そのまま2ヶ月ほど経った。僕たちは互いに馴れ馴れしく名前で言い合う仲になった。

 だが、それと同時にクラスでイジメを受けるようになった。暴力を振られ、机に落書きされ、靴を隠されたり。もちろん先生は見て見ぬふりをする。

 でも、そんな事どうでも良かった。だって俺には幸人がいるから。いじめなんて絶対になくなることはないんだから、誰かがいじめられる役を引き受けなきゃいけない。だから僕がいじめを受けた。

 そんな僕に幸人は心配してくれた。そしてそれと同時にそんなことはするなと言われた。初めてこんなに強い口調で言われた。

 きっと僕のために叱ってくれたのだろう。僕の親もそういう性格なら良かったのにな……。

 僕は幸人に言われた通りに、いじめてきた奴らに反抗して、喧嘩をした。そして喧嘩の原因はなぜか僕のせいになった。まぁ、小学校の時だってそうだったからな。先生なんてそういう生き物だから仕方ないと受け入れた。

 その事を幸人に話したら、一緒にムカついてくれた。

 ただこれに関しては幸人にも迷惑がかかるから、何にもしないでほしいと頼み込んでおいた。幸人は最初は、反対してきたが、本気で頼み込むと嫌々了承してくれた。幸人はとにかく優しいんだ。


 そういえば文化祭の時もそうだ。僕は一緒に校内をまわってくれる人がいなくて、どうしようか迷った時に、一緒にまわってくれた。そのために他の友達の誘いは断っていた。優しいな。幸人は優しい。誰にも親切にされたことがなくて、誰かに親切なことをしようなんてことを1回も考えたことのない僕とは違うな。

 その日の夜はいつものお礼で僕が料理を作ったっけ? 確か、一番得意な生姜焼きを作ったんだっけ。あの時、幸人はたくさん褒めてくれた。僕はいつも一人だったから料理は人並み以上にできた。自分のためだけにやっていたことが誰かのためになるなんてな。これも幸人のおかげで知れたことだ。ありがとうって言わなくちゃ。

 そこまで思い出した時に僕は眠りについた──。

読んでいただきありがとうございます!!ぜひたくさん見て感想を書いてくれると嬉しいです。

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