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第1話②『ドキドキ百合ルームシェア!』

 「ごめんね、霧亜。霧亜は大学通っててバイトしてるのにあたしの世話までさせちゃって。あたし……頑張ったんだけど、ただのOLになっちゃった。ほんとは法律関係の仕事につきたくて村出たんだけどさ、だめだった。あんな泣きじゃくってる霧亜を置いていったのがずっと心残りでなにもできなかったのかな…………あ、ごめん。霧亜のせいじゃないから。」


 悲しそうな顔で茉鈴が言った。


 「そんな悲しい顔しないでっ。」


 心配そうに目をうるませる霧亜。


 (霧亜だって、医者を目指してだめだったって言ってたのに…………あたしたち、2人して夢破れた悲しい大人なのに……霧亜はなんで明るく振る舞えるの?)




 霧亜が小学生の時。


 自転車の後部座席に乗っていた時、足をプラプラしていたせいでタイヤに足が巻き込まれ、ギプスをするほどの大怪我をしたことがあった。


 単純だが、そこで医者を志した。

 しかし、


 「なんでこんなこともわからないの!ほんっとイライラするわぁ……」


 霧亜は勉強が苦手だった。



 「びえぇぇぇぇ!」


 茉鈴の胸で泣きじゃくる霧亜。


 「霧亜ちゃん……!」


 茉鈴は霧亜をぎゅっと抱きしめた。




 夢を叶えられなかったことを思い出し、霧亜の心がきゅっと締めつけられた。


 「わたしは茉鈴のことが好き……だから、いいの。茉鈴がわたしの生きがいなの。茉鈴がいないのがすっごくつらくて…………だから、高校卒業してから霧亜に連絡取ってルームシェアしよって言ったんだもん……やりたくてやってるんだから茉鈴は泣かないのっ!すま〜いる!」


 涙を拭き、明るくにっこりと笑う霧亜。


 「ぷふっ……ほんっとうに天使だわぁ霧亜……かわいい。そういう明るくてコミュ力あってカワイイところが好き。」


 わしゃわしゃ。


 茉鈴の温かい手で頭を撫でられ、ほわほわとしてしまう霧亜。


 撫でてきた手を、両手で触れる霧亜。霧亜のほわほわが茉鈴にも伝染し、2人してほわほわとしていた。


 「朝作るから待っててね〜!」

 「いつもありがと。大変じゃない?」

 「茉鈴の世話とか家事は楽しいよ。人間関係は大丈夫だけど労働は大嫌い。」

 「それな〜!」


 2人の間に楽しい雰囲気が戻った。


 「ふま〜!マジで霧亜お嫁に行けそー!」

 「そんなこといって、そんなにお嫁に行かせたいの?」

 「絶対嫌。世話係の天使ちゃんはわたしのもとにいるべきなんです〜!」

 「えへへ……///」


 朝ご飯を食べた後、服を着替え外へ。


 霧亜の服は肩出しスタイル。


 「映画見に行くんでしょ。はいヘルメット。乗って。」


 霧亜がバイクに乗った。


 「2人乗り大丈夫なのそれ?」

 「そう思ってちゃんと調べてあるから。高速は通れないからね。」

 「爆走バイク!」

 「爆走したら捕まりますぅ〜!」


 ぷくっと頬を膨らます霧亜。すかさず茉鈴が人差し指で膨れた頬をつついた。


 「ま、確かに爆走バイクだね?ていうか電車でよくない?」

 「バイクでいーの。」


 霧亜は長袖の服を着た。そして2人はバイクに乗り、発進。



 ポップコーンを食べながら映画を見ている2人。


 「霧亜……いつもありがとうね。」

 「茉鈴……こっちこそ。」


 映画が終わり、2人は昼ご飯の場所を探していた。


 「楽しかったね〜!」

 「ふふっ。かわいい霧亜。」


 ヨシヨシと霧亜の頭を撫でる茉鈴。


 「えへへ〜。茉鈴〜っ!」


 ぴとっ。


 茉鈴に体をくっつける霧亜。


 「昔と変わんないね、霧亜。こうやってぴったりくっついて懐いてきてさ。ちっちゃい頃はカワイかったな〜っ。」

 「背は伸びたけどね〜。」

 「今もカワイイよ。」

 「えへへっ……茉鈴〜っ。」


 さらに茉鈴に擦り寄る霧亜。ヨッシーのぬいぐるみストラップを茉鈴にぴとっとくっつけた

 茉鈴と一緒にいてにこにこな霧亜の笑顔に、茉鈴は思わずほわほわとした気持ちになってしまう。


 どこで昼ご飯を食べるかを探していると、


 「あ、霧亜!」


 突然、どこからか声がした。

 声のした方向を向くと、女子大生らしき人物が。


 「雛瀬(ひなせ)!」


 霧亜が女子大生のもとに駆け寄る。それについていく茉鈴。


 門村(かどむら)雛瀬(ひなせ)。霧亜と同じ学部で霧亜の友達。中肉中背で、美人系統の霧亜とは違いとてもかわいらしい顔。


 「雛瀬!すっごい偶然だね!」

 「まあ映画公開されたしわりと会う確率高いんじゃない?」

 「そうかも?」


 霧亜と雛瀬の会話。


 「あ、霧亜が言ってたルームシェア相手ですか?こんにちは、わたし門村雛瀬っていいます!よろしくです〜!」

 「あたしは吉田茉鈴、24歳OL。よろしく〜。」

 「吉田さんOLなんですよね。霧亜から聞きましたよ。」

 「霧亜から聞いた?」

 「はい。」

 「あ、何話してるの。わたしも混ぜて!」


 茉鈴と雛瀬の会話に霧亜が入ってきた。

 霧亜が入ると、3人の間にほわほわとした空気が流れた。霧亜のコミュ力と雰囲気は、人をほわほわさせる力を持っていた。だから茉鈴はよく霧亜をなでなでするし、霧亜には友達が多い。

 霧亜が入ることで、初対面でも会話がそれなりに弾んでいた。


 「良かったら3人でどこか行く?」

 「いいね、行こ〜!」

 「行こ!」


 霧亜の提案に賛成を示した茉鈴と雛瀬。



 来たのはお好み焼き屋。

 店に入ると、美味しそうな音が霧亜まで聞こえてきた。


 「いらっしゃいませ!3名様でよろしいでしょうか?」

 「はい、3名でお願いします!」


 霧亜がそう言うと、店員は少しにっこりとした。


 「ではこちらへ──」


 女性店員の質問に答える霧亜。


 「え、あの子たちかわいくね?」

 「真ん中の子肩出しスタイルじゃん、めっちゃエロい……やば。」


 案内される途中で、霧亜たちに集まる視線。男性だけでなく女性の視線も集めていた。霧亜を見てトイレに向かう者も。

 席に座る3人。


 「さっきの店員さん、なんかにっこりしてたね?霧亜がにこにこしててカワイイから。」

 「茉鈴……えへへ〜。」


 茉鈴に寄り、体をぴたっとくっつける霧亜。身長が高い霧亜の子供のような擦り寄りは、見る者にギャップを感じさせる。


 「あーわかります!霧亜ってにこにこしててカワイイですよね!」

 「そうでしょ?あたし社畜OLだし、世話係って大変そうな感じなのに、文句のひとつも言わないでマジ天使なの〜!いってきますのチューもさせてくれてマジ天使すぎる幼馴染なんだけど〜!」

 「いってきますのチュー……ですか?え?霧亜にキスされてるんですか?」

 「違うよ、いってらっしゃいじゃなくていってきますのチューだから。あたしが霧亜にチューするの。」

 「幼馴染の特権って感じですね〜?」

 「そうでしょ?チューするとニコニコ笑うからすっごい天使で毎日癒されながら会社行ってるよ。」

 「霧亜って吉田さんが大好きなんですね。仲のいい幼馴染ですか……」

 「ちょ、茉鈴!いくらなんでもそれバラされるのは恥ずいって〜!!」


 既に茉鈴と雛瀬は打ち解けているような雰囲気だった。

 その女子会のような雰囲気からか、近くの客がその様子をチラ見していた。


 「うんまぁ〜〜っ!!」


 霧亜はお好み焼きを口に運び、満面の笑み。

 そのほわほわとした笑顔が伝染し、茉鈴と雛瀬も笑顔に。

 それを遠くから見ている従業員たち。霧亜が美味しそうに食べる様子を見てほっこりしていた。

 3人は各々の注文したお好み焼きを口に運びながら、楽しく会話。


 「ごちそうさまでした〜!」

 店を出た3人。



 「霧亜もう帰っちゃうの?遊ぼー?」

 「雛瀬。いいけど、茉鈴と一緒にいるって約束が……」

 「わたしも混ざる!」

 「しょうがないなぁ〜。茉鈴はそれでもいい?」

 「…………あぁ、いいよ。」

 「おっけ〜。」


 こうして、3人は楽しいひとときを過ごした。


 「ねね、土曜だし休みだから、霧亜ん家に行っちゃダメ?」


 食い気味に言う雛瀬。


 「雛瀬。うーん…………いい……けどわたしの家事の量が大変なことに…………まぁいっか!任せて!食事もなんとかするし!着替えは持ってきてくれる?」

 「うん!ありがと、霧亜!」


 雛瀬が霧亜に体を近づけた。


 (この子……やたらと霧亜がお気に入りみたいだけど…………まさかね。)


 茉鈴は雛瀬を見て、そんなことを考えていた。


 ガチャ。

 アパートの扉を開け、中に入る茉鈴と霧亜。

 むぎゅ。

 後ろから霧亜の大きな体に抱きつく茉鈴。


 「霧亜ああ〜。」

 「茉鈴。どうしたの?」

 「霧亜天使すぎ〜。」

 「ありがと。」


 そのままソファに座る霧亜と茉鈴。茉鈴は霧亜の体に抱きつき、癒されている様子。

 ほんわかとした空気が流れる。

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― 新着の感想 ―
ふむふむ…… なるほど…… 百合的なの初めましてなんですが、勉強になりますねぇ これくらいの感じなら微笑ましいという感覚を覚える人が多そう?かな?と、思いましたが、どうなんでしょ?
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