第98話 監獄へようこそ
一区切りついた所で、ネスさんからフレンド通信が来た。
通信に出ると、テレビ通話が始まった。右手首の腕時計型端末から電磁ウィンドウが表示される。ウィンドウに映ったのはネスさんと机に座った六仙さんだ。
『やぁシキ君~、お元気~?』
「落ち込み気味です。困ったことがありまして……」
『君にかけられた懸賞金の事かな?』
「そ、そうです! 六仙さん、なにかご存知で?」
『うん。恐らく、懸賞金をかけたのはグリーンアイスだ』
グリーンアイス。オケアノス最悪のテロリスト……。
「こ、根拠は?」
『やり口が一緒だからさ。彼女は気になる相手、警戒する相手の実力を測るためにこういう手法を良くとる。そもそも簡単に3億というチップを支払える無法者なんて限られているしね』
それじゃ、僕はグリーンアイスに目を付けられているってこと?
『とりあえず君にはマザーベースへ来て欲しい』
「え? ――あ! なるほど。軍事施設の中なら賞金稼ぎも手が出せないですね」
『それもあるんだけど、一緒に監獄に行って欲しいんだよね。ラビリンスのやつがさ、君にしか宝物庫の場所を教えないと言って聞かないんだ。悪いんだけど、協力してくれないかな?』
ラビちゃん……1度面会したかったし、ちょうどいい。
「わ、わかりました。今からそちらへ列車で向かいます」
『おっと待った。公共機関は使わないでくれよ。列車や客船でドンパチされるとめんどくさい。戦艦に住んでると聞いている。海路を使って軍艦を向かわせよう。一旦、君はそこで待機だ』
「了解です!」
それから迎えに来た軍艦に乗って、僕は大都市アシアへと向かった。
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軍警本部で六仙さんとネスさんと合流。
それから本部近くにある大監獄へと3人+護衛の方々で行く。
「ここが我が軍の監獄『ヴォルテックス』だよ」
ドームの形をした施設だ。中に入り、受付をパスしてエレベーターで地下へ。
「牢は全て地下にある」
地下4階で降りる。
機械の床。機械の壁。機械の牢。全てハイテク仕様。ついでに看守もロボットだ。
機械質の鉄格子の隙間から中を覗くも、囚人は寝込んで微動だにしていない。他の牢も同じだ。ほぼ全員、ログアウトしている。静かだ。
「言うてゲームなのでね、大抵のプレイヤーは捕まった瞬間ログアウトして懲役が明けるのを待つか、アカウントを消して作り直すかする」
歩くこと数分、ようやく目的の牢の前に到着する。
「やっほー! シキちゃん! 会いたかったよーん♪」
囚人服を着たラビちゃんだ。ちなみに、他の囚人は別に囚人服を着ていない。なぜかラビちゃんだけ縞模様の囚人服を着ている。
さらにこの牢屋だけなぜか豪勢な家具や冷蔵庫が置いてあり、しかも壁には女性のヌードの壁紙などが貼ってある。
「な、なんですかこの牢屋……ここだけ設備が全然違うんですけど……」
「まったくどこから持ってきたのやら……」
「シキちゃーん! 再会のキスしよ! キース!」
「しないよ。ラビちゃん、宝物庫の場所を六仙さんに教えてあげてくれないかな?」
ラビちゃんは「ふふん♪」と機嫌良く喉を鳴らすと、牢屋のベッドに寝転んだ。
「いいよ。嫌な予感がするからね。アイツらに盗られるぐらいなら、軍にお宝預けた方がマシ」
「賊にバレるような場所に宝物庫があるのかい?」
「すっかり忘れてたんだけどさ、トライアドは互いに引き合う力があるんだよね。詳しく言うと、半径1km以内に別のトライアドがあるとオレンジ色に輝くんだよ。それ使えば宝物庫の場所を見つけることもそう難しくないと思ってね」
トライアドは1つ、グリーンアイスの手にある。そのトライアドを探知機に使えるってわけだ。
「アイツら……グリーンアイスにトライアドを揃えられるのは気分が良くない」
「へぇ。同じ罪人なのに、グリーンアイスは気に入らないんだ」
「あんなのと一緒にしないでよっ! 美学のない人間は嫌いだ。とにかく、宝物庫の場所教えるからトライアドを盗ってきて! グリーンアイスに先越されたら許さないからね!」
「やれやれ勝手なレディーだな……勝手に盗んでおいて奪い返せとは」
「なんかすみません」
なんで保護者のような気分になってるんだろう、僕。
「でもいいのラビちゃん? 宝物庫の場所を教えたら、トライアド以外のこれまで盗んできたお宝も全部持ってかれちゃうよ?」
「私の宝物庫って1つじゃないんだよね。色んなコロニーに宝物庫を隠し持ってる。だからオケアノスに全ての宝があるというわけじゃない。問題なし!」
「ちなみにオケアノス以外のコロニーに隠した宝物庫の場所は……」
「ええ? 教えないよ」
「だろうな」
とにかく今は他のコロニーはどうでもいい。オケアノスの宝物庫、そこにあるトライアドが重要だ。
「それで、宝物庫の場所は?」
僕が聞くと、ラビちゃんは口角の片端を上げ、
「オケアノスの宝物庫の場所は――砂漠地帯にあるピラミッドの地下だよ」
そういえばジョリー・ロジャーの近くにピラミッドがあった。アレかな。
「あそこにあるピラミッドはレベル上げ用に軍が設置した人工ダンジョンのはずだ……本当にそこに宝物庫が?」
六仙さんが聞く。
「うん! 軍警の管轄下にあるからこそ盲点になる。さすがに軍警の管理施設の地下に怪盗の宝物庫があるとは思わないでしょ?」
確かに。
「その地下にはどうやって入る?」
「ピラミッドの最奥に祭壇があるっしょ。そこに3つのアイテムを置けばいい」
「そのアイテムとは?」
「スク水の女の子の写真と、バニーガールの写真と、メイドの写真。しかも、撮影から3日以内の写真でないといけない……」
僕と六仙さんはお互いに銃を出し、ラビちゃんのベッドに風穴を空ける。
「「真面目に!!」」
「マジメまじめ大真面目!! ホントにそうだから! マジマジ!」
嘘じゃ無さそう。嘘であってほしいけど。
「ちなみに私の好みの女の子じゃないとダメだから! 判定AIに私の趣向を反映させてるからね!」
「へぇ。君の好みのタイプって、たとえば?」
「シキちゃんみたいな子~♪」
「え!?」
「承知した。じゃあこちらで衣装は用意するから」
六仙さんは僕の肩に手を置き、
「頼んだよ」
「えぇ~!?」
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