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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
殺し屋シキ編

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第80話 散財

 大都市エレクトラに到着。


 もう夕方だけど、煌びやかな街だ。カジノ、ホテル、劇場。背の高い建物ばかり。

 街の中心には大きな湖があって、湖の中心にはオケアノス軍直轄の金色の塔、『イリスタワー』がある。湖に掛かった4つの大橋のどれかを渡ることでタワーに行くことができる。


 イリスタワーの最上階の広間にてオークションは行われる。僕とイヴさんはタワーの足許にある駐車場で待機する。


「中はビッシリ軍警。オークション会場にも下手したら観客より軍警の方が多い。あたしらの出番があるのかね」


 僕とイヴさんは軽トラの荷台に座り、夜空の下でPC越しに会場を眺める。


「それにしても中にすら入れてもらえないとは。オークションは現場に居てなんぼだろう。ここまで来てリモート参加はねぇよなぁ?」

「僕としては人が少ないここの方がいいですね」

「えぇ~? あの熱気がいいのによ。おっと、そろそろ始まるか」


 オークション会場のステージに、黒服のお姉さんが上がりオークションのルールの説明を始める。

 今回出品されるのは89品。イヴさんの目的であるフェニックスは№12。僕のお目当ての緋威は№22。そして、怪盗が狙う宝珠トライアドはラスト、トリの№89だ。


『オークションの基本的な流れを説明します。まず我々が商品の入札金額を提示します。その金額で購入したい場合はお手元の端末より『入札』という表示をタッチしてください。他に入札者がいなければ落札となります。入札者が2人以上いらっしゃった場合は『競り』に移ります』


 これだけ人が居て、あっさり一発目で落札できることはほとんど無いだろうなぁ。

 会場の客だけでなく、僕らのようなリモート参加の人も大勢いるだろうし。


『競りのルールは単純です。こちらの合図を目途に、入札者はお手持ちの端末にて価格の吊り上げを行ってください。制限時間までに最も高い額を提示した方の落札となります』


 一般的なオークションと相違ないね。


『価格の吊り上げは10万チップ刻みで(おこな)うことができます。制限時間については基本的に1商品3分ですが、運営の判断で制限時間の短縮もしくは延長を行うことがあります』


 早々に決着が着いたと判断したら早く打ち切って、もっと金を絞れそうなら延長する。ってことだろうね……。


「いいかシキ、オークションの心得はな……『競わない』だ」

「え? オークションなのに……ですか」

「そうだ。まず自分の頭の中で限度額を決めておく。そんでその額を超えたらきっちり手を引く。単純だがこれが大切だ。欲出して深追いしたら火だるまになるぞ」

「わ、わかりました。勉強になります!」


 緋威は非常に優秀な武装だけど、所詮は武装だ。手持ちは3500万あるけど、出せて1000万かな。それ以上はもったいない。


「始まるぞ」


 段ボールに乗ったPCを、僕とイヴさんは凝視する。


(トライアドが出品されたタイミングにラビリンスが来るとは限らない。すでに舞台裏にはトライアドはあるはず。もっともトライアドが無防備になるのはステージに上がった後だけど、その前に盗りに来る可能性は全然ある。常に気を張らなくちゃね)


 ちなみにラビリンスの武装についてわかっているのは4つのみ。


・トリックアーム(ワイヤーや煙幕を手のひらから射出できる手)×2

・ノクターン(特殊外套。常時ステルス性1.5倍、夜間はステルス性3倍)

・セレナーデ(ダークライトのレーザーダガー)

 

 怪盗らしい装備だ。強力なのはノクターン。条件が緩いのにステルス性に掛かる補正が高い。

 ラビリンスは基本的に夜に活動するらしい。だから夜に強い武装を好むんだろうね。レーダーは頼りにならないと考えていい。


(僕らの出番はトライアドが『盗られた後』だ。ラビリンスがトライアドを奪い、会場から脱出し、タワーから出た後で追跡する。いくら気を張った所で、僕らが彼女の盗みを妨害することはできない)


 さすがに人がいっぱいいるオークション会場に狙撃をぶち込むわけにもいかない。


(だけど彼女の動きや武装の使い方を観察することは大切だ)


 ラビリンスの情報はあまりに少ないからね。一挙手一投足を見逃せない。


(ラビリンスが会場内の軍警に捕まることはきっと無い)


 ラビリンスの実績を見るに、これだけの警備でもまだ甘いと言える。

 余程の秘密兵器でも無い限り、オケアノス軍の負けは見えている。

 

『続いては№12! 半永久的にエネルギーを供給し、高い出力も持つコアエンジン、フェニックス!!』

「きたきた!」


 水晶玉の中に赤い炎のようなエネルギーがゆらめいている。幻想的なアイテムだ。アレがフェニックス……。


『2000万チップからスタートです!』


 もちろん、イヴさんは競りに参加する。

 入札者は6人。次々と値段が吊り上げられていく。


「2500万……2700……2750……」

「3000万だこらぁ!!」


 イヴさんは価格を3000万に吊り上げた。


「イヴさん、限度額はいくらなんですか?」

「……3000万」


 今が限度額ギリギリ。だけど、


『4000万! 4000万が出ました!!』

「なにぃ!?」


 競りに残っているのは2人。イヴさんともう1人だ。一騎打ちである。


「もちろん、イヴさんはここでリタイアですよね?」

「よ、4200!!」

「イヴさん!?」

「ここまで来て引けるか! 手持ちは6000万ある……まだ張れる!」


 さっきと言っていることが違う!


『4300万が出ました!』

「4400万!」

『4500万!』

「4800!!!」

『5000万!!!』


「じゃあ……6000万だぁ!!!!」


『落札です! 6000万で落札!!』


 結局、イヴさんは全財産を使ってしまった。

 落札した瞬間こそガッツポーズをしていたけど、すぐさま自身の過ちに気づき、口から魂をはみ出した。


「……や、やっちまった……」

(僕は同じ(てつ)を踏まないようにしよう)


 オークションは順調に続いていき、そして、


『続いては№22緋威! 特殊モードを搭載したマントです! 特殊モード『炎纏』時の緋威はガードナーの装甲すら焼き切る!! 価格は……1000万チップからです!!』


 え……?


「え、えぇ!? 1000万!? なんでぇ!? ただの武装ですよぉ!?」

「……ここに出品されるってことはそれだけ希少に決まってんだろ。詳細をチェックしてみたが、緋威はリミテッドアイテムで限定量3、つまり世界に3つしかない武装だ。市場に出にくい特殊外套で、限定量があって、さらに性能も強いとありゃ……そりゃこんぐらいの値段はするわな」

「わわわわわ……!? どうしよう!?」

「おい、あと30秒で打ち切られるぞ。どうする?」

「参加します!」


 イヴさんがPCを動かし、競りに参加する。参加者は――9人。

 そしてあっという間に入札価格は2000万まで膨れ上がった。


「うわわ……!」

「どうすんだシキ! 時間ないぞ!」

「に、2200万!!」


 さらに競りは加速していき、

 競りの参加者は残り3人。入札価格は――2600万。


(も、もうすでに最初に設定していた額を大幅に超えている!!)


 諦めろ! 諦めろ僕! 諦めるのが吉だ……でも、でも……!


(ここで逃したらもう二度と、こんなチャンスに巡り合えないかもしれない。で、でも、ただの1武装に3000万近く払うなんて馬鹿げている……!)


 僕が家にしているあの戦艦ですら100万なのにっ!


(で、でも……でも……!)


 喉を鳴らす。

 欲しい。欲しい欲しい欲しい!

 だってカッコいいモン! 赤いボロマント大好きだもんっ!


「3000万!」


 また1人脱落。

 競りは一騎打ちになる。


『3100万です!』

「3200万!」

『3300万です!』

「3400!!」


 そこでようやく決着が着く。


『3400万! 3400万で落札です!』

「落札できた……けど……全財産、100万まで減っちゃった……」


 後悔はない。ここで逃していたらきっと引きずっていた。それに比べればまだマシ。大丈夫……お金はまた稼げばいいさ。


 不思議な感覚だ。胸の半分は熱いけど、もう半分はポッカリ穴になっている。


「オークション、怖いです……」

「ああ。恐ろしいよ……」


 僕もイヴさんもそれから30分ぐらい引きずったけど、オークションが終盤になるにつれ気を引き締め直した。


 遂に……来る。


『皆様お待たせしました! 本日の目玉商品! 宝珠『トライアド』の登場です!!』


 怪盗のお目当ての品、トライアド。

 会場内に緊張感が溢れかえる。

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

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「もっと頑張ってほしい!」

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― 新着の感想 ―
んまぁ、オークション慣れしてないんだなあ
オークションはある意味で危険よね 時間制限付きのオークションだと最後の何秒かに吊り上げて落とすのが常識になってるからね…
更新お疲れ様です。 昔のソシャゲとかで同じようなこと(その時の環境キャラをかなり高い額・しかも素寒貧寸前→ちょっとしたらそいつ以上にヤバいのが来て絶望)したのを思い出しましたww まさにご利用は計画…
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