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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
殺し屋シキ編

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第65話 月と顔文字

「日本はいま夕食時か?」

「そうですね。18時ぐらいでしょうか。1度ログアウトしたい所です」


 この世界の時間の密度は現実の3倍。そして今は54時少し前。だから18時だ。


「わかった。それじゃ57時、日本時間で19時にまたログインしてくれ。急ぎで悪いが今日の正午(60時)に品を届ける予定なんだ」

「わかりました!」

「ベッドはそこらにあるのを適当に使ってくれていい。安心してくれ。お前さんが寝ている間に悪戯はしないさ。部屋にカメラがあるから、心配ならスマホと連携させて監視してくれて構わない」


 しっかりしてるなぁ~。

 こっちの不安な要素を察してきっちりフォローしてくれる。


「いえ、心配はしてません。僕を倒した所で、イヴさんに得はありませんから」

「そうかい。じゃあ安心して眠りな」


 お言葉に甘えて僕はログアウトする。



 --- 



「ふぅ!」


 フルダイブ機器を外し、体を起こす。


「ぬぬぬっ……! ぬぐぅ!!」


 思いっきり背伸びをして、体に活を入れる。


「よし!」


 キッチンに行き、小鍋にチョコレートと砂糖と牛乳を入れて、温めながら混ぜ混ぜし、できたホットミルクチョコレートを大きめのカップに入れる。そこに更にいちごのシロップをひとまわし入れて、出来上がり。


 僕特製脳みそ復活ドリンク、その名も『シュガーバレット』! 脳みそに糖分の弾丸を撃ち込む!


「糖分補給♪ 糖分補給♪」

「……またそんな甘ったるいもの飲んで。よく飽きないね」


 キッチンに梓羽ちゃんが入ってくる。


「ふっふっふ~。フルダイブしまくって糖分不足になった脳に、これをぶち込むのが最高に気持ちいいんだよ!」

「それ、絶対良くない部類の『快感』だからね」


 シュガーバレットを一口飲む。

 きたきたっ! ミルクのまろやかさとチョコレートの甘味といちごの酸味が混ざり合って、舌から頭のてっぺんまで甘ったるい快感が昇ってくるぅ!!!


 最高だね……やみつきだ。


「19時からまたダイブするからさ、悪いけど夕飯ラップしといてくれる?」

「19時までに食べきれればいいんでしょ。今から作るよ。パスタでいい?」

「さすが梓羽ちゃん! パスタ最高! 特にほうれん草と厚切りベーコンの入ったペペロンチーノがお姉ちゃん、食べたいかも!」

「はいはい。ちゃんと食材は買ってあるよ」


 可愛すぎて出来過ぎるぜこの妹。


「ああ、そうそう。夏休みのどこかでフルダイブの慣らしに付き合って」

「え!? まさか梓羽ちゃん、なんかゲームやるの!?」


 もしかしてインフェニティ・スペースに梓羽ちゃんも!?


「ううん、やらないよ。夏休み明けにAR(仮想空間)の適応力テストをやるんだよ」

「あぁ~」


 仮想空間は今やこの社会と切っては離せないものだ。仮想空間、ARを利用した仕事は山ほどあるし、基本はリモートで会議はARでやるという会社も多い。だから学校でもARにおける能力が成績の1部として扱われ、進路にも響く。定期的にARの適正を測るテストも行われる。


 テストではAR内で走ったり、パズルをしたり、パソコンの打ち込みをしたりと、色々やらされる。


「でも梓羽ちゃんなら練習しなくても余裕じゃない?」

「基準点は余裕で突破できると思うけど、誰かさんのせいで高得点を期待されちゃってるんだよ」


 梓羽ちゃんは僕の顔をまじまじと見る。


「え? 僕?」

「歴代最高得点を叩きだしたって聞いたけど?」

「そうだっけ? ごめん、お姉ちゃん中学の記憶8割方抹消してるから点数とか覚えてないや」


 あの中学にはトラウマが眠ってる。

 僕が持っていったモデルガンが原因で、僕はある教師に目を付けられ、卒業するその日まで学校で浮いた存在にされたのだ。おかげでテストの結果とか、些細なことはもう覚えてない。ARの適応力テストもぼんやりとやった記憶しかない。全然集中できなかった気がするけど、あれで最高点ってあの中学レベル低いんじゃ……。


「そうだ、あのこと言うの忘れてた。お姉ちゃんに嫌がらせしてた杉浦(すぎうら)だけど、退職したよ」

「え!? そうなの!? ――なんで?」

「さぁ、なんでだろうね?」


 くす。と梓羽ちゃんは小悪魔な笑みを浮かべる。


「……梓羽ちゃん、もしかして何かやった?」

「別に。ある不良生徒を更生させる過程で、邪魔だったから排除しただけだよ」

「何かやってるじゃん!」


 僕の妹、ちょっと怖いかも。


「ほら、台所使うからその糖分の塊と一緒に出てって」

「はーい」


 僕はカップを持って自室に退散する。

 ベッドの上のスマホにメッセージが表示されている。見てみると、月上さんからだ。


(月上さん……!)


 僕はカップを机に置き、ベッドに座ってスマホを手に取る。

 メッセージにはこう書いてあった。


『8月20日に祭りがある。一緒に周りたい( *´艸`)』


 という簡素なメッセージと共に、その祭りのホームページのリンクが貼ってあった。


「行きますとも!」


 そうすぐ返そうと文を書くも、手が止まる。


「……祭り、か」


 凄く行きたい……けど、人混みは苦手だ。

 月上さんに絶対醜態を晒してしまう。

 月上さんは完璧な人。その隣に、こんな恥さらしが立っていいのだろうか。


「い、一応、言っておこうかな……!」


 僕は『人だかりでは緊張してしまうので、お恥ずかしい姿を見せてしまうかもしれませんが、それでも大丈夫でしょうか?』と送る。すると、


『そんな心配されること自体が不服(# ゜Д゜) 1つや2つ無様な姿を見ても、私のあなたへの感情は変わらないヽ(`Д´)ノプンプン』


 うっ……ちょっと怒らせちゃったかな。

 メッセージがさらに届く。


『それにレイの恥ずかしい所、見てみたい(*ノωノ)』

「月上さん……」


 しかし月上さん、メッセージの最後に顔文字付けるタイプなんだ。しかも文章だとテンション高い。


(ちょっとオジサンっぽい……)


 月上さんの意外な1面に僕は笑ってしまう。

 普段は無表情なのに、メッセージでは表情豊かだ。


「『ごめんなさい。つまらないことを言いました。お祭り、楽しみにしてます!』」


 送信、と。


「20日……それまでにもっと月上さんに近づいておかないと! よーし! やるぞインフェニティ・スぺース!!!」


 ベッドの上に立ち、声高に宣言すると腹がぐぅ~っと音を立てた。


「……っと、その前に腹ごしらえだね」

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

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「もっと頑張ってほしい!」

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― 新着の感想 ―
これは妹がやりましたね。(⌒∇⌒);
レイちゃんはVRでイリーガルトリガーハッピーを駆除未遂で、妹ちゃんはリアルでF×ckingティーチャーを排除と 妹ちゃんの標的は不良生徒だったのか欠格教師だったのか……愛が重そうなタイプな気がするね
月上さんに「メッセージの最後に顔文字付けるタイプなんだ。しかも文章だとテンション高い。」対して思わず笑ってしまいました。意外な発見です!( ..)φメモメモ
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