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第60話 最強のスナイパー

『推薦者の方も同行していいとのことデス』

「お、マジか! こりゃラッキー!」


 チャチャさんは嬉しそうに指を鳴らす。


「マザーベースの内部なんてそう見る機会ないよ。一体どんなメカ達があることやら……じゅるり」


 六仙さん、コロニーの王様かぁ。緊張する……けれど興味はある。

 別にスナイパーだからってライバルだとは思ってないけど、それはそれとしてこのゲームで1番狙撃が上手い人に興味がないわけがない。なにを隠そう、僕はスナイパー大好きっ子だからね。


『それではこちラニ』


 ガイドガールはカウンターの奥にあるエレベーターへ僕らを誘導する。


『マザーベース直行の軌道エレベーターデス』


 軌道エレベーターと言えば地球と宇宙を繋ぐケーブル、この場合はコロニーとこの宇宙空間にあるレセプションを繋ぐエレベーターだ。


 エレベーターに乗ると、エレベーターは急速に降下。レセプションセンターを出ると外の景色が見えるようになり、宇宙が間近に見える。エレベーターはコロニーの外郭を通過。宇宙から青空へ、大海原が眼下に広がる。


「ここがオケアノス……」


 真下に巨大な都市。島国だ。海に囲まれている。


「オケアノスの主都『アシア』。海に囲まれた都市でね。この都市の北と南に果てしない海が、東と西に果てしない大地が広がる」


 西の方を見ると、確かに海の先に果てしない大地が見える。

 景色が分厚い鋼鉄の壁に遮断される。そして、


『着きまシタ。『本拠地(マザーベース)』デス』


 エレベーターを降りる。

 だだっ広い場所に出る。スペースステーションと同様に、近未来感のある内装だ。

 少し違和感があるとすれば、窓が1つもない。外の景色が一切見えない。それでいて壁が分厚い鉄製だ。秘密基地なのだから外からの視線を通さないのは当然と言えば当然だけど……少し構造に違和感を覚える。


(人多いなぁ)


 ミニスカ軍服の女の子がいっぱいだぁ。制服かわいい。やっぱりゲームだしね、機能性よりデザイン性だよね。

 マリンブルーの上着とベレー帽、黒のスカート。上着は肩まで出ているタイプもあれば長袖タイプもある。


 ガイドガールの後ろについて歩いていると、見知らぬ女性が前に立ち塞がってきた。


「ここからは私が引き受けます」


 眼鏡を掛けた女性だ。大人で、色気のあるお姉さん。

 ガイドガールはお姉さんに頭を下げて踵を返した。


「シキ様とチャチャ様ですね」

「は、はい! そうです!」

「お姉さんは軍警の人?」

「はい。私は『ネス』、六仙様の補佐官を務めています。さぁこちらに。六仙様がお待ちです」


 うわぁ、きっちりロールプレイしてるなぁ。本当の軍人さんみたい。


 ネスさんについていき、歩くこと2分ほどで六仙さんの部屋の前まで辿り着いた。ここに来るまで7つの障壁(セキュリティ)があったけど、全部ネスさんが解除してくれた。


 ネスさんは扉の横にある端末を操作する。


「六仙様。シキ様とチャチャ様をお連れしました」


 あの端末はインターホンだね。


『オッケー。通してくれ』


 インターホンから声が聞こえた。女性にしては低い声だ。


 ガチャ。と錠が開いたような音が鳴る。

 ネスさんが先導し、扉を開く。僕とチャチャさんはネスさんの後ろをついていき、部屋に入る。


「やあやあ、はじめまして。小さなスナイパーさん」


 スーツにスラックス。肩には青い軍服を掛けており、手には白い手袋を嵌めている。背は高く、スラっとしていて、非常に整った顔つきをしてる。

 青のロングヘアーだから女性だってわかるけど、髪が短ければホストと間違えてしまうと思う。美女というよりイケメンだ。


 驚いたのは六仙さんが座っている場所だ。恐らく執務用の机の上に、胡坐をかいて座っていた。きちんと机には椅子もついているというのに。


「六仙様、またそのような所に座って……机は座る場所じゃありません」

「いいじゃないか別に。できるだけ高い所に座りたいんだよ。僕は」


 六仙さんは優し気な瞳で僕らを見る。


 や、やばい。こっちの挨拶の番だ……なんて自己紹介しよう。えーっと、えっとぉ……。


「はいはーい! あたしチャチャさんでーす! 趣味はメカ(いじ)りでーす!」

「うん。よろしく。チャチャ君」


 チャチャさんが先行してくれた。よし、これに倣おう!


「し、シキです。趣味は模型作りと狙撃です……」

「はっはっは! 趣味は狙撃か! スナイパーとして最高の趣味じゃないか」


 うっ。この人ホントかっこいいな。顔だけじゃなく声もイケメンだ。


「君の活躍は見ていたよ。この前のランクマッチ、素晴らしかった。あのツバサを撃ち抜くなんて凄いよ。シーナが実力を買っただけある」


 この人がシーナさんやツバサさんを率いていた人か……確かにカリスマ性みたいなものをひしひしと感じる。


「ぼ、僕なんてまだまだです……」

「謙遜することは無い。君の実力は本物だ。狙撃の腕で言えば君の右に立つ者はいないんじゃないかな」

「え? あ、あの、チャチャさんから六仙さんは最強のスナイパーだと聞いたのですが……」

「はっはっは! そう言われてはいるけどねぇ」


 六仙さんは肩を竦めて笑い、


「狙撃の腕で言えば君の方が上だよ。間違いなく。他の分野、近接とか早撃ちとかはどっこいかな。もし条件を揃えて君と1対1で戦ったら、10回に3回勝てれば良い方だと思うよ」

「六仙様! 王たる者が、そう易々と勝ちを譲っては……」

「だって事実だもん。狙撃手としては、君の方が上だ。だけど」


 六仙さんは微笑みながらも、視線を尖らせる。


「もしもあのランクマッチ、ツバサの代わりに僕が紅蓮の翼に入っていたなら――100回やっても100回僕が勝つ」


 確たる自信が、その眼差しからは感じられた。

 1対1では負けを認めているのに、チーム戦なら負けないと言い切れるなんて……この人のプレースタイル、気になるな。


「そう考え込まないでくれ。君と僕ではタイプが違うってだけだ。そう、僕らは同じ狙撃手だけど、その特性は正反対なのさ。ま! 僕について気になるならシーナにでも聞いてくれ」


 暗に『これ以上自分については聞かないでくれ』と線引きされた……。


「ねぇねぇ王様、なんでシキっちょをここに呼んだの? ランクマッチの(ねぎら)いのため?」

「それもあるけど、1番の目的は顔合わせだよ。僕もシキ君の実力を買っているんだ。困った時はその力を借りたいと思ってね」

「え!?」

「顔も知らない相手にいきなり頼み事を投げられても困るだろ? だから今の内に顔を合わせておくのさ。いざという時のためにね」


 この人、僕のこと必要以上に評価してないかな……。


「ここへ来たのはマイハウスを買うためと聞いている。もしコロニーの住民になるのなら大歓迎するよ。色々と厚遇もしよう」

「厚遇、ですか」

「とりあえず1か月毎にかかる住民税の免除と無期限のビザを約束しよう。こっちのお願いを聞いてくれたら、またその度に境遇をグレードアップさせる」


 僕にとってはただありがたい話だなぁ。

 住むかどうかも、依頼を受けるかどうかも僕次第。ただ住むなら優遇するというだけの話。


(ゆえに深読みしてしまう。何か裏があるのではないかと……)


 と言っても、ここで深く考えた所で意味も無し。ここは話を合わせておけばなにも問題は無い。


「あ、ありがとうございます。住むことになったらよろしくお願いいたします」

「うん。あ、ちなみにチャチャ君、君にもお願いがある」

「あれぇ? 用があるのはシキっちょだけじゃなかったんだ」

「君のような優秀なエンジニアをみすみす見逃すことはしないさ。TW(ティーダブリュー)を作らせたら君より上は居まい」

「嬉しい評価あざまーす!」


 チャチャさん、やっぱり凄いメカニックなんだなぁ……。


「君には我が軍直属のエンジニアになって欲しいんだけど」

「お断りしまーす! 組織とか嫌いなんだよね。自由が無いとチャチャさんはダメなのだ~」

「ふむ。君との交渉は長引きそうだ。また別の機会にしよう」

「別の機会というか、諦めて欲しいんだけどにゃ~」

「君を口説き落とす手札はある。まぁ楽しみにしていてくれたまえ」


 六仙さんはネスさんに視線を送る。するとネスさんは僕らの後ろにある部屋の扉を開いた。


「僕からの用は以上だ。すまないね、ほとんど一方的に喋ってしまった。何か困ったことがあったらネスを通して言ってくれ。できるだけ力になろう。では、また会える日を楽しみにしているよ。お二人さん」


 部屋から出る。すると、


「こちらが私のフレンドコードです」


 ネスさんがフレンドコードの書かれた紙を渡してくる。


「六仙様に用がある際はこちらから、お願いします」

「あ、ありがとうございます」


 とりあえず、良い人脈ができた……と考えていいのかな?

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シキちゃんは孤高のスナイパーだけど、六仙さんは猟犬を使って狩場に追い込むタイプのスナイパーなのかな?しかしプレイヤー300万人の都市国家の王様のロールをこなしながらランクマッチも現役なのか、MMOなの…
更新お疲れ様です。 ふむふむ、今の段階ではあの戦いなら100回やったら100回勝てる自信があるのか…。本人も言ってますが多分、撃ちたい(撃って当てられる)環境を『自分で作る』のがシキちゃんなら、六仙…
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