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第6話 1人ぼっちの砂漠

 第8フロア、『シップ・ドック』。

 このシップ・ドックのシップってなんのシップかな、と思ってたら宇宙船(スペース・シップ)のシップでした。

 簡単に言うと宇宙船の船着き場。天井のない格納庫だ。スペースガールが宇宙船に乗って次々と宇宙へ飛び出している。


 体が軽い。ここは重力が弱い設定なのかな。


 そういえばスペースガールって宇宙環境ヨユーって設定だった。この宇宙と繋がっている空間は人間だったら即死だなぁ。


「……へい、ガイド・ガール」

『何か御用でしょウカ』


 またガイドガールを呼び止める。


「あの、そこらにある宇宙船って、勝手に使ってもいいんですか?」

『ここにある宇宙船は自由に使ってもらって大丈夫デス。レンタル料などはかかりまセン』


 良かった~。もうお金ないから有料だったら本当に詰んでた。


「ロケット型の物があればボールみたいなやつもあるけど、なにか仕様が違ったりするのかな?」

『ロケットタイプは3人まで乗れマス。ボールタイプは1人用デス。4人以上の宇宙船はあそこの操作盤で注文シ、レンタル料を払うことで使用可能デス』

(よし! 1人用に直行だ!)


 ボール型宇宙船に近づき、観察する。


(この赤いボタンを押すと開くのかな? あ、開いた。中は本当に1人ぐらいしか乗れない。カプセルホテルみたいだ)


 宇宙船の中に寝そべる。すると正面のパネルに周辺MAPが映った。メッセージで『目的地を選んでください』と出る。


 とりあえず近くのプラネット(他のRPGで言うところのダンジョン)に行こう。『砂の惑星 難易度☆』、『緑の惑星 難易度☆』、『炎の惑星 難易度☆☆』。星の数が敵のレベルの高さを表しているようだ。


 砂か緑かな。全ロスが無ければ炎の惑星から突っ込んでも良かったけどさ、今の武装で高い難易度に挑みたくはないよね。う~ん……砂の惑星って多分、砂漠だよね? 緑は樹海ばっかりとかかな。

 おっと、その前にステータスダウンが解除されているかチェックしてみよう。もう1時間ぐらいは経っているはず。


「よし、ステータスダウンは解除されてる」


 これで準備完了。

 後は樹海か砂漠かを選ぶだけ。樹海は視界が悪そうだな。砂漠も砂嵐がうざそう。正直どっちでもいいけど……うん、砂漠にするか。

 樹海ではなく砂漠を選んだのはグラを確かめるためだ。このゲームのグラフィックのレベルを確かめるためには樹海より砂漠に行った方がいい。砂漠ってオブジェクトが少ない分グラフィックの誤魔化しが効かないからね。グラなんて……と思うかもしれないが、スナイパーにとってはグラフィックの繊細さはかなり重要。標的の近くの物体の1模様から標的との距離とか計算することもあるからね、グラのレベルが低いと困るのだ。


「さぁ出発だぁ!!」


 1人の空間ゆえにはしゃぐ僕。

 体を浮遊感が包む。同時に、椅子以外の全てが透明になり、周囲の景色が丸見えになる。


「うわ! わ! 凄い!」


 外から中は見えていない。内側からのみ外が見えている。だって誰もこっちを向かないし、中身丸見えの宇宙船なんか見当たらなかったしね。

 宇宙船が瞬く間に飛び上り、ステーションから宇宙空間に入る。


 宇宙を、旅する。まるで自分が宇宙空間を進んでいるように錯覚する。気持ちいいというか、凄まじい感動がある。


 宇宙の偉大さ、宇宙の寂しさが、目から脳に、脳から心に流れ込んでくる。


 視線の先に砂色の球体が見えた――と思ったら、1秒後にはその球体に飛び込んでいた。気づくともう僕は巨大砂漠の上を宇宙船で飛んでいた。


『これより空を周回します。着陸ボタンをタッチすると真下に着陸します。周回速度は着陸ボタンの横にある速度メーターから操作可能です。コロニーに生息する機世獣(きせいじゅう)より攻撃される恐れがあるため、早い着陸をおすすめします』


 機世獣(きせいじゅう)、っていうのはインフェニティ・スペースにおける魔物、モンスターにあたる存在だ。機世獣(きせいじゅう)は機械の獣であり、その性質から寿命は無くスペースガールが破壊しないと永遠に生きる。


「なるべく人の居ない所に降りよう……」


 砂の惑星にも湖があったり、森があったりするけど、その辺りは人が多い。

 僕は最初に出た場所から山を1つ越えた先にある砂漠に着陸する。


「ん~! 1人最高~!!」


 宇宙船から砂漠に降り立つ。 

 広大な砂漠に、たった1人。ゾクゾクする。

 足下の砂を1握り掴み、観察する。


(うん。現実の砂とまったく一緒の手応えと見た目だ)


 グラフィックについては安心して良さそう。


「さぁやるぞ! 最悪のスタートを乗り越えてみせる!!」


 と、2歩進んだ時だった。

 僕のレーダーに敵機が反応し、視界の端で小型MAPが起動。MAPに赤いアイコンが2つ現れる。

 そのアイコンの位置に、機械の犬がいる。名前が傍に出る。『メカドッグ・ソード』と『メカドッグ・ライフル』。ソードのメカドッグは口にレーザーサーベルを咥えており、ライフルの方は背中にライフルを背負っている。


 僕は腰のホルダーからコルガバ(コルトガバメント)を抜き、ライフルわんちゃんの頭を撃つ。


 頭の上のゲージが10%ほど減る。次に右前足を撃つと、今度は右足のゲージが満タンから10%減った。


(なるほど。部位ごとに耐久値が設定されているんだ)

「バウ!!」


 犬のような咆哮と共に、ライフルわんちゃんが背中のライフルからビームを出した。

 スペースガールとなった僕はかなり反応速度が上昇しているようで、簡単にレーザー弾を回避することができた。そして――



 ドーン!!!!!



 ……背後にあった宇宙船が爆発した。


「宇宙船ンンンンンッッ!!!?」

宇宙船が破壊されて退路を断たれるのは初心者あるあるです。救済策は幾つかありますが、初心者で使えるものは少ない。即リスポーンするのが吉。

宇宙船は自作も可能で、格納庫さえ確保できれば巨大な宇宙船を造ることもできます。中にはホワ〇トベースやアー〇エンジェルを造っている人もいます。ステーションをほとんど利用せず、マザーシップで大勢の仲間と共に未知の惑星から惑星へ旅しているヤ〇ト的ロールプレイをしている方々も居ます。男のロマンが詰め込まれた女性限定のゲーム、それがインフェニティ・スペース。

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― 新着の感想 ―
う、宇宙船ダイーーーーーーーーン!!!!
バランスボール撃っちゃらめぇぇぇ
ああああ宇宙船がぁぁぁぁ!? ちなみにあの破壊された一人用の宇宙船のイメージは某尻尾が生えた戦闘民族が乗ってるポットの認識でOK?
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