第45話 一発屋
橋を越え、ガンマンシティに到着。
「敵機は?」
「いません」
「わかりました。ここは確実に次のエリア縮小で外れます。なので、先に進みます」
「はい!」
僕とシーナさんはバイクでガンマンシティを走り抜け、荒野を走り、次の街――『リゾートシティ』へ行く。広大且つ建物が多い街だ。土産屋、喫茶店、レンタルカーショップ、ホテル、アミューズメント施設、カジノ等々、旅行者向けの施設が大多数。下はコンクリートで、ここでも海が見える。イメージとしてはハワイが近いかな(ハワイ行ったことないから適当だけど)。
2度のエリア縮小が終わり、3度目のエリア縮小範囲が公開されるが、この街は安全圏だった。位置からして、あと2回ぐらいはエリア縮小に耐えられるだろう。
シーナさんは路肩でバイクを停める。
「シキさん、EN残量は如何ほどですか?」
「もう30%以下です……」
「ではここでEN瓶を回収しましょう」
EN瓶1本で30%のENを回収できる。だから2本あれば十分、3本で十二分だ。手早く探して狙撃しやすいポイントへ移動しよう。
(うわ)
残念ながら、そうのんびりはさせてくれないらしい。
マップに、敵機の反応だ。
「500m先、敵機です!」
しかも僕達と同じ道にいる。スコープを覗いてみると、バイクに乗ったスペースガールがこっちに向かって走ってきていた。あのスペースガールは……!
「ツバサさんです!」
「早速仕掛けてきましたか」
シーナさんはバイクのエンジンを吹かし、ツバサさんから逃げる。
良い判断だ。
「シキさん」
「わかってます!」
ツバサさんには射程が無い。あの盾キャノンでも精々60mぐらいの射程。
現在距離200m。速度はすでに並んだ。僕達は逃げながら狙撃で削っていけばいい。
僕はアサルトライフルでツバサさんを狙う。ツバサさんはアイギスで銃撃を防ぐ。
(問題ない。削り壊す)
アサルトライフルの威力でもまったくのノーダメージにはならないはず。アイギスの耐久値は着実に削れているはずだ。
アサルトライフルを連射。ツバサさんはアイギスを上手く切り替えながら、ダメージを分散させる。だがそれもいつまでももたない。いずれ限界はくる。
「いける」
僕達は街を駆け巡る。酷く目立ってしまっているが、このままいけばツバサさんを落とせる。
……待った。そんなことツバサさんも承知の上では?
ツバサさんは頭も良い。そうシーナさんは言っていた。そんなツバサさんがこんな無駄な追走撃をやるだろうか。
やらない。断言できる!
「シーナさん!」
シーナさんが十字路を右折した時だった。
シーナさんの胸部に、ワイヤーが食い込んだ。
「「なっ!?」」
両サイドの建物を繋ぐようにワイヤーが仕掛けてある。
(一歩遅かった!!)
シーナさんがワイヤーに引っ掛かり、僕とシーナさんは団子になってバイクから落とされた。
熱いコンクリートの上を転がる。這いつくばった僕達に、バイクに乗ったツバサさんが迫る。
「シーナさん! レールガンを!!」
「ええ、そのつもりです」
シーナさんは電磁砲を装備し、エネルギーを溜める。その瞬間、視界の端で光が散った。シーナさんの遥か後方、ドーム状の建物の上、そこからレーザーの光が見えた。
(狙撃!?)
0.001秒で敵の狙いを考える。
普通に考えればシーナさんの急所か僕の急所――いや、
(違う!!)
上手くいけばどちらにも致命的なダメージを与えられる第3の選択肢がある!!
僕はスラスターを加速させ、シーナさんから距離を取る。同時にシールドピースをシーナさんとレールガンの間に張る。
遠方からの狙撃が、エネルギーを走らせたレールガンを穿つ。瞬間、レールガンがエネルギーの暴走を起こし、起爆する。
「!?」
プラズマ爆発。電磁を帯びた爆風が炸裂。
僕は距離を取っていたから爆風で吹っ飛ばされるだけで済んだ。でもシーナさんはレールガンとそしてレールガンを持っていた右腕を失った。ついでに言えば、僕のシールドピースも半分が消費された。
(間違いなく今の狙撃はレンさん! レールガンがエネルギーを充填した所を狙い、爆発を起こさせたんだ。敵ながら上手い……!)
あのワイヤーもレンさんが仕掛けたのだろう。ツバサさんがバイクで接近してきてから今に至るまでの流れ全て、紅蓮の翼が思い描いた光景そのもの!
「やっぱりツバサは……なんでも思い通りにできる」
崩れた僕達にツバサさんが迫る。
(な、め、る、なあああああ!!!!)
僕はベルトに挟んでいたサーベル端末を右手に取る。
「あっははぁ! シキちゃん、そんなただのサーベルで、一体何をするのさ!!」
「もちろん、斬る」
僕はサーベルを高出力モードにし、薙ぎ払う。
「っ!?」
ツバサさんは危険を察知したのか、バイクを捨てて空に飛んだ。
――ザン!!
僕のサーベルは15mまで拡張し、通常のサーベルとは比べ物にならない火力を持つ。
僕はサーベルで周囲の建物ごとバイクを焼き斬った。
「シキさん、今のは……?」
「拡張性全振りの『一発屋』です」
SCH-100。カスタムできるサーベル。僕はこのサーベルのカスタム容量を全て拡張性につぎ込んだ。
拡張性を伸ばせば高出力モード時の威力と射程が伸びる。
だが他のステータスは軒並み1なので、高出力モードの起動時間は僅か0.5秒(高出力モードの起動時間はサーベルのEN貯蔵量に比例するため)。さらに通常のサーベルは使い物にならない弱さ。そして高出力モードが終われば2分のリロードに入ってしまう。
たった0.5秒、たった一閃に全てのリソースを費やした、一発限りのサーベルだ。
「あなたの思い通りにはさせませんよ。ツバサさん」
ツバサさんは僕達の正面に舞い降りる。
「……まったく君は、とことん面白いっ!!」
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