第44話 天国への架け橋
通信機越しに戦闘音は聞いていたから、状況はわかっている。
ニコさんはクレナイさんを倒した後、ツバサさんに倒されてしまった。
『ごめん』
1言、ニコさんからそう通信が届く。
謝る必要は無い。格上であるクレナイさんと交換になったのだから、大きな功績だ。
『あなたは十分な働きをしてくれました。紅蓮の翼は3人揃うと非常に面倒でしたからね。クレナイさんを削った功績は大きい』
うっ……言いたいこと全部シーナさんに言われてしまった。
「に、ニコさん!! その、あの!」
『なによ』
「あああ、後は僕達に任せてください!!」
通信機の先で、ニコさんは笑い声を漏らす。
『うん。任せた』
通信が一旦止まる。そして、
「シキさん」
バイクに乗ったシーナさんが、僕が拠点にしていた家の前に停まった。僕は屋根上から飛び降りる。
「このバイク、武装ですか?」
「違います。これはフィールドに置いてあったものです。バイクや車などの乗り物、ドローン、EN瓶、修理キット、グレネード等はフィールド内で回収できるのです。さぁ、乗ってください」
「は、はい! 失礼します!」
シーナさんの後ろに乗るも、
(えっと、バイクの2人乗りとか初めてだし……ど、どこを掴めばいいんだろう……)
シーナさんの脇に手をまわしてみる。
「っ!?」
ビクッ!! とシーナさんが体を震わせた。
「うわ!? す、すみません!!」
「……シキさん、もう少し下でお願いします」
シーナさん、脇弱いんだ。意外に弱点多いよね……。
今度は腰に手を回し、体を密着させる。
「どうぞ!」
「シキさん……あの……」
「ど、どうしました?」
「そこまで密着する必要は……あぁいえ、なんでもありません。行きましょう」
バイクで街道を走り、街の外に出る。綺麗に整えられた土の道をバイクは走る。
「これからセーフティエリアの中央に向かいます。エリアの縮小は中央を軸に行われる。真ん中に行ければそれからは特に移動することなく事を進められます」
「了解です!」
「ですが、1つ難所があります」
「大橋『ヘブンズロード』ですね」
「その通りです」
シーナさんが来るまでにマップは読み込んだ。
このマップは2つの島で構築されている。
さっきまで僕がいた島が『オリジンランド』、今から行こうとしている島が『オアシスランド』。オリジンランドは自然が半分を占めているが、オアシスランドは街が多い。自然は面積の5分の1程。1つ小さな樹海があるぐらいだ。
エリアの中央に行くにはニコさんが落ちたガンマンシティを経由する。ガンマンシティと僕達のいる平野の間には海から繋がる大きな川があり、川を渡るには橋を使うしかない。その橋こそ『ヘブンズロード』。
だけど、シーナさん曰く橋には待ち伏せが居る可能性が高い。
「橋にスペースガールが張っている可能性は60%ほどです。橋の長さは300m。幅もありますが、足場のコンディションが相当に悪い。加えて橋の向こうには狙撃ポイントが幾つもあって、待ち伏せするには絶好の場所になっています」
見晴らしがよく、走りづらく、長い道。狙撃手にとってこれほど狙いやすい場所はない。
「もしも待ち伏せを受けたら援護射撃をお願いします」
「合点です!」
僕は体を起こし、シーナさんから両手を放してスナイパーライフルを装備する。
橋が近くなる。スコープを覗き、橋の向こうを見るけど敵影はない。
(大丈夫……かな)
「橋に入ります!」
バイクが橋に乗った瞬間、レーダーに敵影が映る。
「距離500! 敵機3機、固まっています!!」
「突っ切ります!!」
橋の中腹に差し掛かった時だった。
――大量のロケットが、遠方で打ち上げられた。
ロケットは山なりに飛び、僕らに迫る。数――54!!
『この数は……!』
『ファンボンだよ! 全員ボマーチームの!!』
「シキさん! できるだけ――」
「撃ち落とします!!」
スナイパーライフルを1度データ化し収納、アサルトライフルを装備する。
(バレットピース!)
バレットピースとアサルトライフルの連射でロケットを撃ち落としていく。
『なんて正確な射撃……1発たりとも外してない』
『でも落としきれないっ!』
6つ……どうしても落としきれないロケットがある!!
シーナさんはバイクから手を離せない。橋の状態は悪く、段差やひび割れがある。片手でも離すと車体のバランスを崩しかねない。かと言ってバイクを止め迎撃するのも愚策。この見晴らしの良い場所に長く滞在すれば他のパーティから挟撃に遭う可能性もあるし、ファンボンの第2射を防げない。
『シーナっち!』
(シールドピースは射出距離が4m! シールドピースで受けてちゃ爆風を喰らう! バレットピースはまだ充電中で射出できないっ!)
どうすれば――
「六花!!」
シーナさんは六花を射出。撃ち漏らした6つのロケットを六花で対処する。
「なんとか防ぎ切った……けれど、六花は……!」
ランクマッチ内において、武装を破損した場合修繕することはできない。耐久値が減っただけなら修理キットで治せるけど、失ったものは直らない。
つまり、六花はもうこのランクマッチでは使えない。
「仕方ありません。ここで損傷するわけにはいきませんから」
『でもどうすんのよ! 次、すぐ来るわよ!』
僕はスナイパーライフルに持ち替える。
「問題ありません。すでに我々のスナイパーの射程です」
橋の向こう、展望台の上。そこに、ボマー機が見える。距離220m。
「……この距離、外す方が難しい」
ボマー3機はロケットランチャーを換装し、またロケットを放つ。その瞬間、僕はスナイパーライフルの引き金を引いた。
狙いはボマー機ではなく、射出されたばかりのロケット。ロケットの1つにライフルの1撃が着弾。爆発を巻き起こす。爆発は他のロケットにも伝播し、展望台を吹き飛ばす程の大爆発に発展する。
僕の記録に更に3キルが付与される。
「……寸分狂いなし」
「見事です。一仕事終わったばかりですみませんがシキさん、後ろからエンジン音が」
背後110m、4人乗りの車が1台追ってきている。
車の助手席から身を乗りだしてアサルトライフルを構えるスペースガールが見える。
「囮に使われたようですね」
「それで、用済みになったら攻撃ですか……」
僕はライフルで車の左右の前輪を狙撃する。
追ってきていた車はバランスを崩し、橋のど真ん中で停車する。
「とどめはささないのですか?」
「はい。700m先に、この橋に向かってくる車が見えます。食い合わせましょう」
「ふふっ。無駄が無いのはいいことです」
僕達は橋を経過する。
後ろで激しい銃撃音が鳴り響くが、僕の知ったことではない。
【読者の皆様へ】
この小説を読んで、わずかでも
「面白い!」
「続きが気になる!」
「もっと頑張ってほしい!」
と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります!
よろしくお願いしますっ!!




