第43話 火花散る
ニコはクレナイに飛び掛かる。3度斬り合い、その後飛びのいて腰に装着していたブーメランを1個、また1個と連続して投げる。
「そういう手かよ」
ブーメランはクレナイを狙っておらず、クレナイから大きく外れる。
(戻れ!)
ブーメランはクレナイの背後で弧を描き、クレナイの背中を狙う。
クレナイは横っ飛びしようとするが、
「高出力モード!!」
ニコはサーベルを伸ばし、クレナイの行く手を斬撃で阻む。そしてそのまま直進、エネルギー切れのサーベル端末は捨て、脛のサーベルで斬りかかる。
背後から2つのブーメラン。正面からはニコ。挟み撃ちの形。上へ逃げる時間も横に逃げる時間も無い。
上等。とクレナイは笑う。
「滾れインフェルノ!!」
クレナイは自身の大剣『インフェルノ』を高出力モードにする。射程の拡張は無いが、威力が大幅に上昇する。
「こっちもだ!!」
ニコは脛のサーベルを高出力モードにする。こちらもサーベルは伸びないが代わりに破壊力が大きく増す。
高出力モードのシンサーベルと大剣で激しく斬り合う。破壊力は互角だ。
(互角ならいい! 待てばブーメランが背後からクレナイをぶった斬る!!)
クレナイの背に、ブーメランが迫る。その時、
「武装解除!」
「なっ!」
クレナイは背中のウィングユニットを後方へパージ。射出する。ブーメランはウィングユニットに弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいく。同時に、インフェルノとシンサーベルは高出力モードを終え充電モードに移行。エネルギーを失う。クレナイは大剣を捨て、足に力を込める。
――勝った。
クレナイは勝ちを確信した。
ニコは全ての攻撃手段を失い、完全な手ぶら。だがこっちには足のサーベルがある。
「消えろ!」
(まだぁ!!)
クレナイは足を振り上げようとするが、その前にニコがスラスターで加速しクレナイの腰を両脚で挟んだ。
「コイツは……!」
(シキの真似! こうすりゃ足サーベルは届かない!!)
ニコは残った右拳を握り、殴り掛かるも簡単にクレナイの左手に押さえられてしまう。
「ちぃっ!!」
「素手でオレに挑もうなんざ100年早い!!!」
今度はクレナイの反撃。クレナイは右拳を握って、ニコに殴り掛かる。
――ザン!!!
「な……に……!?」
クレナイは、目の前の光景に理解が追いつかなかった。
いつの間にか、己の額をレーザーサーベルで貫かれていた。
「はん! ほのてはほめなかったでほ(この手は読めなかったでしょ)!」
ニコは、口の中からサーベルを出していた。口に、サーベル端末を咥えていた。
そのサーベルは先ほど斬り落とされた左手に握っていたもの。ニコは密かにサーベル端末を回収し、喉元に隠していたのだ。
「口サーベル……だと!?」
脚でしがみついた後、喉から口元にサーベルを移動。歯で端末を固定し、舌でスイッチを入れてレーザーサーベルを放出、見事クレナイの額を貫いた。
人の体なら端末で喉を塞いだ時点で窒息するだろう。スペースガールの体だから出来た妙技だ。
「……いかれてやがるなぁ、お前ぇ!!」
「ほうも(どうも)!」
クレナイの体はポリゴンとなって散る。ニコはサーベル端末を吐き出す。
「げほっ! げほっ! ゲームの中とはいえ、喉に異物を入れるのは気持ち悪いわね」
勝者――ニコ。
だが、
「ナイスバトル」
酒場に、新たな来客。
現れたのは6枚の盾を持ったツインテールのスペースガール。
ニコの表情に陰りが生まれる。
(ちっ。どうしようもないわね)
紅蓮の翼エース――神灰ツバサ。
万全な状態でも勝率が10%とない相手。手負いの今じゃ――
「まさかクレナイちゃんが負けるとはね~。ツバサは君のこと、過小評価していたよ」
「ばーか。現在進行形で馬鹿にしてんだろ!!」
ニコはさっき吐き出したサーベル端末を蹴り上げ、右手でキャッチし、高出力モードをONにする。
「オラァ!!!」
渾身の斬り払い。
ツバサはニコの1太刀を1枚のアイギスで防ぎ、左手に持ったアイギスの刃を振り上げてニコの右腕を切断。残りのアイギスでニコの四方を囲い込んだ。
両腕を失ったニコに、脱出の術はない。
「さようなら」
「……ったく、ムカつくけど、見事だわ」
ツバサは盾に備えついた大砲でレーザー弾を放ち、ニコをデリートする。
ましゅまろスマイル・ニコ、リタイア。紅蓮の翼・クレナイ、リタイア。
1対1の交換で両チームの最初の衝突は終わった。
【読者の皆様へ】
この小説を読んで、わずかでも
「面白い!」
「続きが気になる!」
「もっと頑張ってほしい!」
と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります!
よろしくお願いしますっ!!




