第35話 復活のレイドボス
『金兵党』……総勢108名で構成されたプレイヤーキルを生業とするアーミー。金の惑星でチップを蓄えた初心者を狩り、効率的に金を集めることを主な活動にしている。
この広大な惑星を幅広く支配していた彼女たちだったが、いま、彼女たちは悪夢を見ていた。
――プレイヤー狩りをしていたはずの自分たちが、プレイヤー狩りされるという悪夢を。
「な、なんだ!? 一体なにが起きている!?」
1人の金布の兵士は逃げまどっていた。
いつも通り『狩り場』へ仲間2人と来たが、『狩り場』へ来た瞬間に仲間の1人がヘッドショットを喰らった。さらにもう1人は1発目の狙撃の方向とは真反対の方向からの狙撃を後頭部に受けデリートされた。
残った彼女は慌てて場を離れたが時すでに遅し。金結晶の森をバウンドして狙撃弾が迫ってくる。なんとか回避するも、背後の金結晶にバウンドし、後頭部を貫かれた。
「……なんで……こんな……!?」
――デリート。
ここ数日、金兵党のメンバーが何者かに撃ち抜かれる事態が多発していた。
まだ狙撃は良い。狙撃でバウンドを利用し、敵を撃つことはまだ理解できる所業だ。
恐ろしいのはその『謎の射手』に距離200mまで近づいた時だ。無数の弾が縦横無尽にバウンドし、全方向から迫ってくる。
レーザー弾の色・威力からアサルトライフルの弾丸であることは確定だ。しかし、もし相手が1人と仮定するならば、手数的に1丁ではなく2丁同時に扱っている。両手持ち前提のアサルトライフルを同時に2丁操っている。それでいて跳弾の計算を完璧にしている。凄まじい反動があり、更に命中補正が低下した中で跳弾を利用するなど常軌を逸した所業だ。この金結晶地帯を狩り場としている金兵党だからこそよりわかる……この異常さが。
金兵党の半数を沈めた後、『謎の射手』は金兵党にレイドボスとして認識された。
金兵党は数を集め、大人数での『謎の射手』攻略に移る。だが数を揃えた所で無駄。もう彼女は完全に覚醒していた。
無数のレーザー弾はまるで蜘蛛の糸のように金兵党の行方を遮り、足を止めさせ、そして死角からの弾丸で金兵党を壊す。
「なにこの弾の嵐!? ――うぎゃっ!?」
「逃げろ! ここから離れろ!!」
「逃げるたってどこに――うわぁ!?」
「誰かこの射手を抑えに行けよ!!」
「無理無理っ!!」
「なんで……なんで……! なんで狩人の私達が狩られているんだ!!?」
「ふざけないでよ! お金が稼げるって言うから入ったのに!!」
「やめやめ! こんなアーミー抜けてやる!」
『謎の射手』をレーダーに映した金兵党はいても、視界に収めた金兵党はいない。
レーザー弾を反射するこの場所は彼女の独壇場だったのだ。地理さえ把握してしまえば敵はいない。
金兵党の悪夢は7月31日~8月4日、5日間に及び続いた。
その結果、金兵党は脱退者続出。その数を半分以下まで減らす。
――『跳弾式洗濯機』。
金布のPKプレイヤーに足を洗わせまくったことから彼女はそう名付けられた。
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8月4日、夜。
僕はステーションのショップに来ていた。
「お金はいっぱい溜まったし、レベルも十分。後はランクマッチ用に装備を整えるだけだ」
プレイヤー狩りはレベルには影響しないけど、プレイヤー狩りの合間に機世獣を狩っていたからレベルも規定ラインまで上げることができた。
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PN:シキ
LV:20→32
ROLE:スナイパー
TIP:864600
装甲:20×1.5(30)
スラスター出力:40
スラスター容量:80×2(160)
精密性:80×2(160)
レーダー:100×2.5(130→250)
ステルス性:60
EN容量:60×1.65(63→96)
武装
スロット1:RS-11(スナイパーライフル)
スロット2:M1911 G-AGE (ハンドガン)
スロット3:ダストミラージュ(特殊外套)
スロット4:SCH-100+FullCustom (サーベル)
スロット5:PT-8(シールドピース)
スロット6:PT-8(シールドピース)
スロット7:ARR-2(アサルトライフル)
スロット8:ARR-2(アサルトライフル)
拡張パーツ
スロット1&2:レーダー強化コアMark2
スロット3:精密性強化コア
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これは金兵党狩り専用の装備。金兵党はジャミング装甲を全員装備していたので強化レーダーではなくレーダー強化コアを採用していた。けれど、装備が多様化するランクマッチでは強化レーダーの方が無論良いため、強化レーダーとレーダー強化コアを入れ替える。
後はシールドピースを1枠バレットピースに、アサルトライフルを1枠別の武器に変える(こっちは後で)。精密性強化コアはとりあえず1枠余ったから付けていたけど、ランクマッチでは違う拡張パーツを使う予定だ。
スロット1:RS-11(スナイパーライフル)
スロット2:M1911 G-AGE (ハンドガン)
スロット3:ダストミラージュ(特殊外套)
スロット4:SCH-100+FullCustom (サーベル)
スロット5:PT-8(シールドピース)
スロット6:PBE-1(バレットピース)
スロット7:ARR-2(アサルトライフル)
スロット8:null
拡張パーツ
スロット1&2:強化レーダー
スロット3:null
最後にトレーニングルームでバレットピースを慣らそう。もう現実時間で21時、さすがに惑星探索に行くのは無理。
しかし金兵党の人、ついに最後まで僕と顔を合わせられた人はいなかったな。あんな序盤のステージにこもっている人なんて所詮そんなものか。ちょっと消化不良。
「ん?」
メッセージボックスに新着が入っている。インフェニティスペースのメッセージボックスじゃない。このフルダイブマシンのメッセージボックス、僕のアカウントのメッセージボックスにメッセージが来ている。見てみると、
『お姉ちゃんの友達が来てるよ。今リビングでくつろいでもらってる』
梓羽ちゃんからだ。
「友達……?」
そんなの地球上のどこにもいないはずだ。
『名前は』
「え!?」
来客者の名前は――月上星架。
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