第31話 チート級アイドル
6枚の大盾、それぞれがスペースガールを隠せるぐらいに大きい。
盾にはそれぞれスラスターが付いていて、スペースガール同様に加速や空中飛行をする。
「誰がモ――」
ガン!! と、僕を捕まえていたスペースガールの脳天に大盾が落ちた。スペースガールは頭から真っ二つにされる。これがメカじゃなく人間だったらとんだグロ映像だ。いや、スペースガールと言えどグロいか……。
いま、盾が落下する瞬間、盾の先からレーザーの刃が生えたのが見えた。サーベル機能も搭載しているようだ。
ツバサさんが目の前に着地する。ツバサさんに追随して大盾5枚が僕達を囲うように落ちてきた。
「その、あの、えと……!」
「ぬいぐるみのお礼、今からするね♪」
緊張して言葉を詰まらせる僕に、ツバサさんはそう言って笑いかける。
「はっ! 元A級かどうか知らないけど、10対2で勝てるとでも思ってるのか!!」
金兵党による一斉射撃が始まる。だけど、ツバサさんは6枚の大盾とシールドピースで全て防ぐ。盾も、シールドピースも、耐久値が一向に減らない。
「ツバサはガードナー。元々高い装甲値にステポをガン振りして、拡張パーツの守護神で装甲値を盾に渡している。そんで、ツバサのレベルは140。あの子達は精々40程度……あのレベルの子達じゃこの守りを突破することはできない」
「でもこのままじゃ、攻撃も……」
「反撃は――できる!」
ツバサさんは大盾の1つを手に持ち、僕に見やすいように掲げる。
「ツバサはね、最強のアイドルなんだよ」
ツバサさんが右手に持っている盾の装甲表面がスライドして、銃口を覗かせた。
「照準良し」
ツバサさんは大盾の取っ手に付いたボタンを押し込み、銃口からレーザー弾を連射する。
(なんだこの盾!? スラスターが付いていて、先端に刃が付いていて、それで銃まで搭載しているのか!!)
ただレーザー弾は足が遅く、直撃を避けられてしまう。
「まだまだ!」
ツバサさんは左手に別の大盾を持ち、先端に刃を出した後で投げる。
「回れ!!」
――盾ブーメラン! 回転しながら変則的な軌道で動き、不意を衝いたスペースガールの胴体を両断する。
「こ、コイツ!! 味方への流れ弾は気にするな! 全員、全力で火力を集中しろ!!」
相手もいよいよ本気。それぞれがロケットランチャーやマシンガン等の秘密兵器を出す。
「無駄無駄。ツバサの鉄壁は崩せはしない。――いくよ……『C:Aegis』!!」
投げた盾もスラスターでツバサさんの元へ戻り、6枚の盾が揃う。
「撃てェ!」
敵の一斉射撃。その全てを、6枚の大盾はメリーゴーランドのように僕らの周りを回って防いだ。
「可愛いアイドル程強いガードマンが付くもの……つまり、最高に可愛いツバサには完全無欠のガードマンが付くってこと。ツバサの許可が無い限り、指1本触れさせない。それが『C:Aegis』……ツバサの最高のガードマン!!!」
鉄壁。一切の攻撃を通さない。
「嘘……だろ。こんなの……こんなの……! チートだろうがっ!!」
「そ。ツバサはチート級に可愛いアイドルなの」
ツバサさんは僕の方を振り向く。
「シキちゃん、もう大丈夫。怖いものは何もないよ。ツバサが全部から守ってあげる」
「ツバサさん……」
「だから援護射撃お願いしてもいいかな? ちょっと防御で忙しくてね」
気づくと、体から緊張は解けていた。
ツバサさんが注目を集めてくれているからだ。
「は、はい!」
この大盾がもたらす安心感凄い。相手の視線も切ってくれるから、落ち着いて引き金を引ける。
相手は盗賊団、容赦はいらない!
(跳弾の嵐、喰らえ!!)
僕はアサルトライフルで結晶体を撃ち、その反射で敵を撃つ。
「これだけ高速で動くツバサの盾を避けてターゲットを撃ち抜くとはね。それも跳弾で……!」
「あ、えっと……多分、スナイパーなら大体の人ができると思いますよ……?」
「あっはっは! じゃあそのスナイパーちゃんを紹介してよ! その無自覚さ、憎たらしくて可愛いねぇ♪」
跳弾で1人、また1人と敵を削る。
およそ4分。すべての敵の掃討が完了する。
「フィナーレ。アンコールはしてあーげない」
ツバサさんの脳波に応じて動く6枚の大盾。それぞれにサーベルと砲門がついていて、攻防どちらもこなせる。攻撃力もあるけど、やっぱり恐ろしいのはその堅牢な防御。たとえ6枚盾を突破してもシールドピースで防がれる盤石の構え。
シールドピースを使っていればわかるけど、これだけの数の兵装を自在に操ることは相当難しい。特に大盾はサイズがある分、使うリソースも相当なはず。
この人……凄い。
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