第264話 怪物襲来
ロゼッタ率いるオケアノス機兵隊、数32。
シノハ率いる火緋色金機兵隊、数21。
爆撃音鳴りやまぬ夜空にて、両隊は衝突する。
ロゼッタは間合いを取りつつ、ヘッドマシンガン、仕込み銃で攻撃。シノハは弾を躱しながらオケアノス兵を右拳で撃墜し、チャージ式ブースターで加速する。ロゼッタとの距離を詰め、ジャブの体勢に入る。だが、ジャブを放つ前にオケアノス兵が1人割り込んできた。
シノハのジャブはオケアノス兵に当たる。
「リーダー! 今です!」
ロゼッタは味方のオケアノス兵をチェーンソーで貫き、シノハを狙う。シノハは舌打ちし、後ろへ飛ぶもチェーンソーを腹部に掠らせた。チェーンソーに貫かれたオケアノス兵はデリートされる。
「味方ごととは容赦が無いね」
「へ? 味方? 駒の間違いでしょ」
「外道が。死ね」
ロゼッタはチェーンソーから伸びるスターターロープを手にし、チェーンソーを投げる。シノハは左にスライドしてチェーンソーを回避する。ロゼッタはロープを引っ張りチェーンソーの軌道を変え、シノハを追撃。シノハは上に飛んで追撃も避ける。
ロゼッタは空振ったチェーンソーで火緋色金の兵士をついでと言わんばかりに断ち切る。
「そういえば君さぁ、シキ君を倒したいんじゃないの?」
チェーンソーを手繰り寄せながらロゼッタは聞く。
「ここはいいからさ、シキ君のとこに行ったら?」
「じゃあ、どこにいるか教えてくんない? 全然、見つからないんだ」
「まーたまた、そんなこと言って。ホントはシキ君にビビっちゃってんじゃないの♪」
「安いね。ルーキーの煽りみたい。その程度じゃ私のスタイルは崩せないよ」
ロゼッタは小さくため息をつく。
(挑発失敗。困ったな。この盤面じゃまだあの手は使いたく無いけど、これ以上ここに時間をかけるわけにもいかないしねぇ)
ロゼッタとシノハは激しい空中戦を行う。
2人は消耗しないが、2人の戦いに巻き込まれ互いの隊の兵は減っていった。
シノハのチェージ式ブースターにENが満ちる。
「もう壁はないよ」
ロゼッタ、シノハの周囲に他の兵は居ない。
「!?」
シノハはブースターを解放し、超加速する。ロゼッタは左腕を前に出す。シノハは左拳のジャブを、ロゼッタの左腕に当てる。
「……消えろ」
ロゼッタの全身が痺れ――ない。
「残念」
ロゼッタは左腕を出すと同時に左肩から先をパージしていた。シノハの左拳はロゼッタの左腕を捉えたが、電流はロゼッタ本体には届かない。ロゼッタは右手に持ったチェーンソーを横に振る。
「うざっ……!」
シノハは体勢を崩しつつも後ろに飛び退く。
「今だ」
街の各地に配置したスナイパー兵達にロゼッタは指示を出す。廃都市から3本の光が夜空に向かって打ち上がる。
シノハは一瞬だけワイバーンをパージ。身軽になった後で手の甲から2つの電磁シールドを展開。電磁シールドでレーザー弾全てを弾く。
「なぜ私が狙撃手殺しと呼ばれているかわかる? 狙撃なんて、目に映ってさえいれば絶対喰らわないからだよ」
(ボクシングで培った超人的反射神経……か)
シノハの周囲に3人の火緋色金兵士が集う。
「スナイパーを潰して」
シノハの指示で兵士たちは動き出す。
「ブラボー! 素晴らしいセンスだ」
ロゼッタは呑気に拍手する。
「どうやら君相手にはこちらも鬼札を切らないといけないらしい」
「鬼札ね。一手、遅かったと思うよ」
「ん?」
「私はただ、メインシップを足止めできれば良かった。もう、終わりだよ」
ロゼッタの背中に、プレッシャーが刺さる。
「知ってる? このステージにはね、トラック50台は詰め込める大型エレベーターが大量にある。それだけのスペースがあれば、メインシップを落とすのに十分な戦力を詰め込める」
ロゼッタは目を見開き、近くにある大型エレベーターを見る。
ロゼッタ達から220m離れた場所、スピカ・セーラスから130m離れた地点に、大型エレベーターはある。あの大型エレベーターから出れば、メインシップはすぐ目の前だ。
「まさか……!」
「こっちのメインシップが着陸しているのは主砲を安定させるためじゃない。真後ろにある大型エレベーターに迅速に戦力を移動させるため。いま、私の通信機に信号が届いた。急襲部隊の到着を知らせる信号だ」
シノハは厭らしい笑みを浮かべる。
「本丸の戦力が地上に届いたってことだよ。火緋色金の精鋭部隊に加え、メインシップを喰らい尽くせるだけのTW。アレを通すため、私達はまず地下を拓いたんだ」
ロゼッタは諦めの笑みを浮かべる。
「……しまったな。もっと地下に戦力を注ぐべきだったか」
エース2人に頼り過ぎた。
信じ過ぎた。
「アンタ達の戦艦に急襲部隊を抑えられるだけの戦力は無い。アンタが不在のあの戦艦じゃ、絶対に防ぎ切れない。私達の勝ちだ。ほら、死神の足音が聞こえるでしょ?」
昇降カゴが地上に届く。
「ここまでか」
大型エレベーターが開く。
火緋色金渾身の急襲部隊が姿を現す――はずだった。
「「ん?」」
思わず、ロゼッタとシノハは声を重ねてしまった。
エレベーターから現れたのは、息も絶え絶えな3人の兵士だった。
シノハは3人を見て、眉を寄せた。シノハはすぐさま3人の内の1人に通信を飛ばす。
「……何があった?」
『ほ、報告! 急襲部隊……か、壊滅!」
「!?」
シノハの頬に汗が伝う。
シノハは電磁スクリーンを起動させ、味方の反応を探る。地下に潜らせた味方の反応が――3人を残して全て消えていた。
「まさか、敵軍とかち合ったのか?」
シノハはロゼッタを見る。
ロゼッタは肩を竦めて笑うだけ。
『違います! 軍ではありません……個です!』
精鋭の声に覇気は無い。もはや、戦意を失っている。
『たった1人に――あ、アイツは……怪物です!』
3人の顔は恐怖に歪んでいる。
シノハもまた動揺を隠せずにいた。
「あり得ない……! メインシップを落とせるだけの戦力だぞ。スペースガールも、TWも大量に投入した! それを個人で殲滅するなんて!!!」
「考えられる可能性は1つだけだね」
とあるスペースガール用エレベーターが開く。
「遅刻の理由はそれかい? シキ君」
エレベーターから出現するは無傷のスナイパー。スナイパーはすぐさまエレベーターから飛び出し、急襲部隊の残った3人の側頭部を狙撃した。
「アイツは……!」
シノハは先ほど展開した狙撃手潰しの兵達に通信を飛ばす。
「奴を潰せ!」
火緋色金の兵士達は新たに出現したスナイパーを狩りに行く。だが全員、彼女に300mと近づくこと叶わず、狙撃で狩られた。
白黒髪のスナイパー・シキは地上から空中に居るロゼッタに向けて口を開く。
『す、すみませんロゼッタさん! 遅れました!』
ロゼッタは乾いた笑い声を発する。
「ははっ。まったく、君というやつは……」
『あのっ! たまたま火緋色金の集団を地下で見つけまして! 僕、人多いの苦手だから、もしエレベーターで一緒になったら嫌だなぁって思って! そ、それで、狙撃していたら時間がかかってしまってですね……!』
ロゼッタの脳裏に、試合開始前のシキの言葉が蘇る。
――『ロゼッタさん……僕はまだまだ強くなれます』
火緋色金の精鋭部隊を無傷で倒すなど、代理戦争以前のシキでは不可能だった。
間違いなく、強くなっている。
「……嘘では無かったか」
『ホントにサボっていたわけでは無く! あ、あと、配電盤も全ては破壊できてなくて……い、色々すみません!』
敵軍の決め手が潰え、自軍の切り札が戻ってきた。
どん詰まりだった状況が、一気に拓かれる。ついロゼッタは片口角を上げてしまう。
「シキ君。ここは任せた。3隻のサブシップと連携し、この場に居る敵全員を撃ち抜いてくれ。吾輩はメインシップを連れてキングを取ってくる」
ロゼッタは微笑み、
「やれるね?」
ただの無茶振りだ。この盤面を丸投げしているだけである。
だが、スナイパー・シキは簡単に首を縦に振る。
『は、はい! やってみます!』





