第244話 カラオケの約束
僕とロゼッタさんは『フルスコアコンビネーション』でなんとかガーネットさんに対抗するも、徐々に追い詰められ、そして――
「どっかーん!」
「ちっ」
ロゼッタさんがチェーンソーでラピットミサイルを断ち切るとミサイルが爆発。その爆発によって、ロゼッタさんは遂に左腕すら失った。
両手両足、全て欠損してしまった。
「ははっ! まさかこんな状態になるとはね」
「もうチェーンソーは使えないね!」
ガーネットさんの瞳の中で、黒い雷が散る。
「いま楽にしてあげるよ!!」
「ロゼッタさん!」
僕はロゼッタさんの近くに寄る。
「主戦場はすぐそこだ。問題ない。吾輩の体に掴まりたまえ」
「はい!」
僕はロゼッタさんの右肩に掴まる。
ガーネットさんはまた、両肩と両脚にミサイルポッドを装備した。
「いいよ! まとめてどっかーんしてあげるね!」
またさっきの一斉砲撃が来るかな。
「狂い咲き! スターマイン!!」
シーナさんも、ガーネットさんも、もうロゼッタさんには何もできないと考えている。
だけどそれは誤りだ。ロゼッタさんには1つ、特別な武装がある。
「Butterfly-Mode」
ロゼッタさんのスラスターから金銀のエネルギーが溢れる。
溢れた金銀のエネルギーがロゼッタさんの失った部位を補完する。ロゼッタさんの両腕・両脚が一時的に復活し、更にスラスター性能が大幅に上昇する。
「うへっ!?」
「欠損部位を補完する武装……!」
驚くシーナさんとガーネットさんを他所に、ロゼッタさんは2人に背を向け飛び出した。
「ここまで温存した甲斐があったねぇ!」
「このまま行ければ……!」
回避と加速を繰り返し、なんとか主戦場に到着した。正面100mには敵のサブシップがある。だがここで、
「あれ!?」
「おや?」
唐突にスン……と、ロゼッタさんのButterfly-Modeが切れた。
「しまった。欠損箇所が多すぎて、効果時間がかなり減っていたようだ」
シーナさんの狙撃が飛んでくる。僕はΔシールドで狙撃を弾く。
足を止めた僕達に、フル装備のガーネットさんが迫りくる。
「はははははは! 凄いよ君達! そんな奥の手を持っていたなんてね! ご褒美に……とびっきりのどっかーんをあげるね!!!」
ガーネットさんが一斉砲撃の体勢に入る。
アレを撃たれたら、まずロゼッタさんは確実に落ちる。僕も無傷では済まない。
(間に合って……!)
ガーネットさんがミサイルを発射する、その直前、
――敵サブシップがガーネットさんを撥ね飛ばした。
「え」
僕らの、オケアノスのサブシップでは無い。フリーパーチのサブシップだ。ガーネットさんの味方であるはずのフリーパーチのサブシップがガーネットさんに突撃した。
遠くに見えるシーナさんは驚きのあまり目を見開いてる。
『にゃはははは! ざまぁみなさい!!』
サブシップを奪取した怪盗によるフリーチャンネル無差別通信だ。恐らく、シーナさんの耳にもこの声は届いている。
『このラビちゃんを倒したと思ったかジト目ガール! 残念ながらラビちゃんは倒されてませんでしたぁ!! べろべろばぁ~! 君の確認ミース! ミサイルなんてぜーんぶ避けちゃったもんね! そんでそんでぇ! 君達が去った後もずっとサブシップに潜伏して、君達がここに来るのを待っていたのよぉ! こうして君達に戦艦アタックするためにねぇ!!! まんまとシキちゃんとロゼに誘われちゃったねぇ~! どんまいドンマイ!! シキちゃんのバニー姿に鼻の下伸ばしてるから私を取り逃がしちゃうんだよ~! ス・ケ・べ・ちゃ・ん~!!!』
ラビちゃんの渾身全開MAX挑発。
凄い。あのシーナさんが顔を赤くして眉をピクピクさせてる。
「ていうか僕のバニー姿ってなに!?」
さっきスモールコロニーを出る際にオペレーターの人から長文メッセージが届いた。そのメッセージにはオケアノスの現況と共に、ラビちゃんが敵サブシップに潜伏していることが書かれていた。潜伏までの経緯もきっちり自慢げに書かれていた。多分、あの部分はラビちゃんの報告を引用したのだと思う。
ラビちゃんはシーナさんにRed-Lieの弾を当て、その後でガーネットさんに爆撃された。ラビちゃんのアイコンと姿が完全に消滅したことで、シーナさんは撃墜したと判断した。でも実際はRed-Lieで誤魔化しただけで、ラビちゃんは最初の爆撃で床に空いた穴から下の階へ降り、ミサイルを回避していたのだ。
ここまで来たのはこのサブシップによる奇襲でシーナさんとガーネットさんを崩すため。
ラビちゃんのおかげで、ガーネットさんは決定的に崩れた。
『もういっちょ!!!』
サブシップはシーナさんにも突撃をかける。
「シキ君、援護を頼む」
「はい!」
ロゼッタさんはサーベル端末を展開し、口に咥え、スラスター加速する。
「やばばばばばっ!?」
ガーネットさんはサブシップに撥ねられた衝撃でミサイルを暴発させ、左腕と左脚を失い、姿勢を制御できず体を縦回転させている。そんなガーネットさんのもとへ、両腕両脚の無いロゼッタさんが飛んでいく。シーナさんが狙撃でロゼッタさんを狙ってきたので、僕がΔシールドでレーザーを弾く。
「させませんよ、シーナさん……!」
シーナさんはサブシップの突撃に備え、援護の手を止めた。これで、ガーネットさんを守るものは無い。
ロゼッタさんはヘッドマシンガンでガーネットさんを攻撃。右脚のミサイルポッドを破壊し、暴発させる。しかし、その爆発の衝撃でガーネットさんは偶然にも姿勢を立て直してしまった。ガーネットさんは右手のバズーカを構えるけど、バズーカは僕が狙撃で破壊する。
「うわぁ!?」
「――終わりだ」
ロゼッタさんは歯で端末のボタンを押し込み、サーベルを展開。ガーネットさんの体を斜めにぶった切る。
「やった……!」
と、気が緩んだ時だった。
『ダメだ! 突進躱された! 2人とも! シーナちゃん注意!!』
ラビちゃんの言葉を受け、シーナさんの方を見る。シーナさんはレールガンを構えていた。砲口はロゼッタさんの方を向いている。
「ロゼッタさん!!!」
レールガンが発射される。すでに満身創痍のロゼッタさんは躱せず、レールガンに胸部を破壊された。
「あの子は落とし切れよ。逃したら負けるぞ」
ロゼッタさんとガーネットさんはポリゴンになって宇宙に散った。
「……わかってます!」
僕はスタークでシーナさんを狙う。
シーナさんはスタークの攻撃をシールドピースで弾きながら電磁キーボードを展開し、何かを入力した。
「一体何を――」
『あんのがきゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!!!!』
ラビちゃんの怒りの絶叫と共に、遠方でラビちゃんの乗っていたサブシップが爆散した。
「え、遠隔でサブシップを自爆させたのか……むごい」
ラビちゃんの反応が正真正銘消滅する。
むごい、けど合理的な判断だ。敵の手に落ちたサブシップをいつまでも残しておく理由は無い。
ラビちゃん、ロゼッタさんが落とされた。
けれどこっちだって、ニコさん、クレナイさん、ペテルさん、ガーネットさんを撃墜した。
残るは、
「シーナさん!!」
「勝負です、シキさん!」
僕とシーナさんは互いにスナイパーライフルを発射。レーザーは衝突し、相殺される。
シーナさんは双銃を構える。僕はライフルを速射モードに変える。
「まさかあなたと……こんなヒリヒリした場面で戦えるとは思いませんでした。今日は楽しいですね。シキさん……!」
僕がこのゲームで初めて会ったのは、あなたです。シーナさん。
特別な人……僕に色々な選択肢を与えてくれた人。恩人だ。だからこそ、僕はあなたのことを……心の底から撃ち抜きたい!
「私が勝ったらいい加減、カラオケに付き合ってもらいますよ」
「望むところです……!」





