第234話 ラビリンスvsシーナ
フリーパーチサブシップ『風林火山』・連絡通路にて。
ラビリンスとシーナは鬼ごっこを繰り広げていた。当然、逃げるのはラビリンス、追うのはシーナだ。
シーナはいつも通りバランス重視の武装構成。一方でラビリンスの武装は、
・セレナーデ(ダガー)
・ノクターン(特殊外套)
・Red-Lie (ハンドガン)
・怪盗の小手 (トリックアーム)
・怪盗の小手 (トリックアーム)
・3Dコーティング(投影機)
・イリュージョンルビー(シールドピース)
・イリュージョンルビー(シールドピース)
そのほとんどが相手を騙すためのもの。シーナとは真逆に、非常に癖のある武装構成である。
あらゆる手を使って相手の目を誤魔化し、接近し、セレナーデorRed-Lieで詰めるのがラビリンスの戦闘スタイル。
だが、現在ラビリンスは得意のトリックセンスを活かせずにいた。
「逃がしませんよ」
「あーもう、厄介だねそのゴーグル!」
シーナの武装の1つ、サーマルビジョン。温度の強弱を見切ることができる武装だ。
トリックアームの煙幕も、イリュージョンレッドによる死角形成も、サーマルビジョンの前では意味をなさない。姿を誤魔化しても熱源を追跡される。3Dコーティングも意味を成さない。
ラビリンスは逃げる足を止め、シーナに接近する。シーナはバックステップを踏みつつ、ハンドガンで弾丸をばら撒いた。ラビリンスは身を翻し、弾を躱す。
(さっきからなにさ。攻める気が無さ過ぎる)
シーナはペテルと同様に、一定の距離を保ち続けていた。つまり、シーナがやっていることは、
(時間稼ぎかな。レールガンも出してこないし)
攻め気を感じない。
「流石はラビリンスですね。この距離の私の連射を容易く躱す」
「ありゃま。バレてたんだ、私の正体」
「はい。私は前々からラビリンスの回避行動を参考にしていたので、ランクマッチであなたの動きを見た時にピンときました。それに、名前がラビではズラしが足りませんよ」
その通りである。
(こういう無駄話も時間稼ぎの1つだろうね。別にいいけど。おかげで準備は整った)
ラビリンスの体が、透明になる。
「それは……」
「これやると脳みそが疲れるんだけどね。仕方ない」
3Dコーティング――ステルスモード。
3D映像を用いて自身を景色に溶け込ませるラビリンスの秘技だ。
「それで?」
シーナは構わず射撃する。射撃は正確で、ラビリンスはシールドピースで弾くしかなかった。
「透明になったところで熱源は追えます。無駄ですよ」
「真面目で生意気ちゃんだねぇ♪ 君みたいな子に限って、心の内はスケベちゃんなんだよねぇ♪」
「……」
ステルスモードは完璧ではない。Red-Lieのカメラハックと違い、透明化しても『歪み』を残す。サーマルビジョンを使わずとも、集中すれば『歪み』が見える。カメレオンの同化より多少マシ程度の誤魔化しでしかない。
ならばなぜステルスモードを使ったのか。
ラビリンスの目的は自分から視線を逸らす事ではなく、自分に視線を集めることにあった。とっておきを見せつけるために。
(たとえサーマルビジョンを持っていても、Red-Lieでカメラそのものをハッキングすれば消えられる。問題は、どうやって確実に初弾を当てるか)
ラビリンスは足に力を込める。
「そのお堅いガードを、崩しましょうかぁ!」
ラビリンスは正面にダッシュする。
「やることは変わりません」
シーナは背後へ飛び退き、双銃を構える。
(回避の鬼の力……とくと見よ!)
シーナは双銃を連射。
ラビリンスは前進しながら距離15mの射撃を躱す。
「……素晴らしい!」
(Red-Lie……シキちゃんには20mの距離で完璧に反応された。この子には15mあれば十分かな。問題は)
飛ぶ刃、アタックピースが飛来する。
ラビリンスはシールドピースでアタックピースを受ける。
(これ。これが飛び回っているせいでRed-Lieの射線が中々通らない。1度、このピースの動きを乱すことができたなら)
ラビリンスはシールドピースを犠牲にしながらも、無理やり前進する。
距離10m。
「ここだ」
ラビリンスは右手をシーナに向ける。ラビリンスの手の平の中心に穴が空く。
「ぴゅん!」
ラビリンスは穴から――水のシャワーを射出した。
「水!?」
ただの水鉄砲。
しかしばら撒かれた水を全て防ぐのは難しい。シーナはシールドピースで水を捌き切れず、顔面に水飛沫を受けてしまう。
トリックアームの水の容量は僅か。1秒の射出で水は止まってしまう。けれど、役目は果たした。
水の威力は当然0。問題はゴーグルについた水滴だ。ゴーグルについた水滴が視界を混濁させてしまった。服で拭ったところで明瞭にはならない。ならばシーナが取れる手段は1つしかない。
「くっ!」
シーナは水に濡れたゴーグルを外す。
正面10mには風景に溶けたラビリンス。目を凝らして『歪み』を視認し、アタックピースを仕掛けようとしたその時、
ラビリンスは透明化を解き、別の映像を被った。シーナの瞳に、脳に、その映像が直撃する。
シーナは、目を疑った。
「…………………………………………………………………………………。」
ラビリンスが化けたのは――シキだ。
それも、バニーガール・シキだ。いつかの日、ラビリンスの宝物庫へ入るため、シキが用意したバニーガール写真。その写真をもとに作成した、3Dバニーガール・シキ(露出度超超UPバージョン)。
シーナの中で、シキは超のつく恥ずかしがり屋だ。その恥ずかしがり屋の少女のバニーガールコス。動揺ポイント+1
恥ずかしがっていて、どこか背徳感をくすぐるシキの表情。動揺ポイント+1
バニーガールにしても、あり得ない肌面積。動揺ポイント+1
この緊迫した状況で、こんな行動をとる意味不明さ。動揺ポイント+1
なにより驚いたのは、シキのバニーガールコスを見て、自分が顏を赤くしていること。動揺ポイント+100
シーナも、六花も、完全にフリーズする。
(にやり)
すかさずラビリンスはストッキングからRed-Lieをクイックドロー。早撃ちでシーナの肩にRed-Lieの弾丸を当てる。
「っ!?」
「ようやく隙を見せたね。スケベちゃん」
弾を受け、シーナは緊張感を取り戻す。
ラビリンスは3D映像を解き、不敵に笑う。
「やられた……!」
「ようこそ。嘘塗れの世界へ」
ラビリンスが姿を消そうとした、その時、
「今です」
『どっかーん!!!』
連絡通路の一部が――爆発した。
「!?」
ラビリンスの周辺一帯が、外からの爆撃によって破壊された。
ラビリンスは爆風で壁に打ち付けられる。通路に大穴が空き、大穴から宇宙が見える。ラビリンスは外に目を向け、今しがた爆撃をした少女――ガーネットを発見する。
「……外から爆撃~~~~!? しかも、自分達の戦艦ごと……!」
「あなたはそれだけ価値のある駒ですから」
爆撃を受けたことでラビリンスの右耳と右腕は破損、右脚の耐久値も残りわずかだ。
「……ずっと、あの子が来るのを待っていたんだね……!」
「はい。あなたをこの位置に誘い込み、ガーネットさんの外からの爆撃で一帯を爆破。全て計算通りです」
完全な不意打ち。生き残っていたことが奇跡。ラビリンスが生存できたのはガーネットが近くにいるシーナに配慮し、火力を抑えたからだろう。
さすがのラビリンスも動揺を隠せない。
「今の拳銃がなんだったのか、よくわかりませんでしたが……種明かしは試合後にでも聞きましょうか」
「いやだねぇ~! べーっだ!」
舌を出し、強がるラビリンス。そんなラビリンスに向け、無情な爆撃が炸裂する。
ラビリンスがいた場所、周辺は全て、宇宙の塵と化した。
「姿なし。レーダー反応消滅。熱源なし。終わりましたね」
シーナは穴から外へ出て、ガーネットと宇宙で合流する。
「これで厄介な駒が1つ減りました。我々はこのまま本陣を狙いにいきますよ」
「やっとおっきぃのをどっかーんとできるね! ワクワク♪」
2人はサブシップを離れ、オケアノス本陣へ向かう。
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