第232話 蛇の道
シーナさんの背中を追って僕はコロニーAに侵入する。
重力が体に圧しかかり、風の感触が体を包む。
上空。ビル街の上に出た。シーナさんの姿は見えない。
レーダー、反応なし。特殊外套を装備しているんだろうね。
探している時間は無い。
「仕方ないですね……スナイパーらしくはありませんが!!!」
僕はテンパチのゴーグルを装着し、ビル群をロックオンする。
「一斉射撃!!!」
コロニーへの影響を考慮し、最大数の108発ではなく82発のミサイルを発射。ビルを爆撃し、倒していく。ビルの影が消えていく。
「見つけた!」
倒れるビル群の隙間を、飛び回る人影が1つ。
テンパチを解除し、ウィングへ移行。テンパチは地面に落下する。
最高速で飛びながらスタークで人影――シーナさんを狙い撃つ。
シーナさんは大盾を実体化させ左手に持ち、僕の放った黒いレーザーを弾く。シーナさんは体の向きを反転させ、盾を前にして突っ込んでくる。
(シーナさんは全ての距離で戦える。やはり、僕には接近戦を挑んできますか!)
僕はスラスターをチャージするため、1度倒れたビルの上に着地し、アステリズムとスタークの連射でシーナさんを狙う。
シーナさんは手に持った大盾と大量のシールドピースで僕の攻撃を全て弾き飛ばす。
「あのシールドピースの量……武装枠2つ分使ってる!?」
六花を外したの!? いや、あり得ない。あれだけ強力な武装を外す理由がどこにある。
それにシールドピースも盾も硬すぎる。なんだろう、この違和感……!
まずい。想定外の防御力のせいで牽制の量を誤った。距離がもう50mまで――
「!?」
シーナさんの持つ盾の装甲がスライドし、盾の中から砲身が顔を出した。
砲口から、黒い砲弾が発射される。僕はスタークですぐさま撃墜するも、距離7m地点で砲弾は炸裂した。砲弾の内から、ピンクの煙が散布される。
「煙幕……にしては色素が薄い」
即座に後ろへ飛んだけど、煙を少し浴びてしまった。
ザザ。と、異常を知らせる音が頭に響く。視界の端にウィンドウが映る。僕はウィンドウを拡大させる。
『バグ発生 種別:軸受麻痺』
状態異常!? 今の煙を吸ったせいかな。体の節々から薄く煙が出る。
『効果:一定時間スラスター性能20%減 解除条件:スラスターを一定時間不使用』
スラスターの出力と容量を制限されたのか。20%とはいえ、機動力が低下するのはつらい。
「……時間を掛けていられないのに……!」
またもや盾を前に接近してくるシーナさん。
距離20m。G-AGEの射程。
僕はホルスターからG-AGEを抜く。だが銃弾を放つ前に、盾の影からにゅるっとした物が飛び出してきた。
それは、光る蛇だった。
「レーザーの鞭……!?」
僕は射撃を辞め、鞭を屈んで回避。
思いっきり背後へ飛ぶも、バグのせいで出力が低い。一方で、なぜかシーナさんの方は急加速した。
(この急加速……! ウィング? でも翼は見えない。前にクレナイさんがちらっと言っていたブースター型かな!)
一瞬で間合いを詰められる。再び鞭を振るうシーナさん。
アステリズム、スタークで鞭を狙うも、鞭はしなり、弾丸を躱し、迫りくる。
後ろへ飛んで距離を稼いでも、間合いから逃げられない……!
(射程が長すぎる! ワンオフ式の高出力時と同等だ! しかも動きが変則的で……!)
僕は身を翻すも、足に鞭を掠らせてしまう。シーナさん……いや、謎の人物は鞭をサーベルサイズまで縮める。
鞭は確かに喰らった。でも耐久値は減っておらず、体の硬直も無い。
ザザ。とまた異常を知らせる音が鳴った。
『バグ発生 種別:接続不良』
関節がギシギシと軋む。
『効果:精密性30%減 解除条件:時間経過』』
そういう戦闘スタイルですか……。
「あなたはシーナさんでは無いですね」
僕が問うと、彼女はホログラムの変装を解いた。
ホログラムの殻を破り、金属製のマスクをした黒髪の女性が姿を現す。彼女は――
「ペテルさん……!」
「1分経過です。シキさん、あと14分――お付き合い願います」
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