第231話 化かし合い
アスター2から6000m離れた宙域にて。
大怪盗ラビリンスが搭乗するサブシップ・アスター1は敵サブシップを捕捉した。
『アスター2にシーナ君、クレナイ君、ガーネット君が仕掛けたらしい』
ラビリンスはロゼッタからの通信連絡を受け、残念そうに笑った。
「あらま。じゃ、こっちは手薄ってことじゃん。やりがいが無いね~」
現在、ラビリンスはミサイルに擬態した宇宙船に乗っていた。
擬態ミサイルは他のミサイルと同じように発射機に搭載されている。
『もしも敵サブシップに誰かが待ち受けていたとしても雑兵か、あるいはニコ君かペテル君だろう。君はニコ君ともペテル君とも相性がすこぶるいい。中に入ることができれば、サブシップを落とすことは容易だ。シキ君が暴れられない分、君には存分に暴れてもらうよ』
「にっひっひ! お任せあれ」
現在、スピカ・セーラスとアスター3&アスター4は共に行動し、コロニーBのコロニーキャノンの排除に動いている。
一方で、敵メインシップとサブシップ2隻はコロニーDへ接近していた。
ラビリンスのいるアスター1は敵本陣からはぐれた敵サブシップに接近している。はぐれサブシップの狙いはコロニーCだ。
つまり現在、
コロニーA→アスター2(シキ搭乗)と敵サブシップ1隻が奪い合い。
コロニーB→スピカ・セーラス(ロゼッタ&イヴ搭乗)と他サブシップ2隻が制圧(後にコロニーキャノンを破壊する予定)。
コロニーC→アスター1(ラビリンス搭乗)と敵はぐれサブシップ1隻が奪い合い。
コロニーD→敵本隊が間もなく占領。
という形になっている。
コロニーAの命運はシキが、コロニーCの命運はラビリンスが握っていると言っても過言ではない。
「そろそろ出発かなぁ♪」
ラビリンスは右手に特殊な手袋を装着する。
「きたきた!」
轟音が響くと同時に強い衝撃がラビリンスの座席を揺らした。
ラビリンスの乗り込んだ擬態ミサイルが発射されたのだ。擬態ミサイルを防御しようと、敵サブシップはシールドピースを差し向ける。
「ここよ!」
擬態ミサイルが敵艦シールドピースに迫ったところで、ラビリンスは脱出ボタンを押し、座席ごと擬態ミサイルから脱出。その後、擬態ミサイルとシールドピースが激突する。擬態ミサイルは炸裂すると大量の白煙をまき散らした。ラビリンスは白煙に突っ込み、白煙の中の敵艦シールドピースに右手でタッチする。
「吸着!」
ラビリンスの右手の手袋から青い火花が散る。すると、まるでくっつき合う磁石のように、ラビリンスの右手がシールドピースに吸着した。
ラビリンスが右手に嵌めた手袋には金属に吸着する磁力コーティングが施されている。戦艦用シールドピースは巨大な金属の塊。この手袋で1度吸着すればそう易々とは外れない。たとえシールドピースが高速で動いても問題は無い。
さらにラビリンスはホログラムを纏って自身の体をシールドピースと同じ濃緑色に染める。このホログラムを纏う武装『3Dコーティング』は対シキ戦において、シラホシに化けた際に使用したものだ。
ラビリンスが張り付いたシールドピースは戦艦に戻っていく。
ラビリンスはシールドピースに運ばれている最中もしっかりと敵艦を観察していた。
(格納庫みっけ! シールドピースの収納スペースから入るより、あっちの方が楽そうだ)
シールドピースが戦艦に収納される直前で手袋を脱ぎ離脱。そのまま開きっぱなしの格納庫に近づく。格納庫の出入り口では大量のスペースガールが行き来していた。ラビリンスは3Dコーティングを使い、出撃した1機に化け、そのまま格納庫の出入り口から中に侵入する。
「いっけね! EN瓶持って行くの忘れてた~」
なんて小芝居を打ちつつ中へ侵入していく。
(ブリッジのある場所は戦艦の構造を見てればなんとなくわかるんだよねぇ~。こっちこっち)
通路を走り、ブリッジへ繋がる道を的確に選んでいく。
人やカメラの死角をつき、見事な足取りで進んでいたラビリンスだったが、通路の途中で唐突に足を止めた。
「……」
怪盗の勘が『まずい』と言っていた。
十分なセキュリティ。十分な罠。
手応えはある。だが妙な手応えだった。
まるで接待プレイを受けているような感覚。こちらが気持ちよく解けるギリギリのセキュリティを用意されているような気がした。
不愉快。ラビリンスはとにかく不愉快さを感じていた。
(いいや。たとえ罠だとしてもなんとかなるっしょ)
1番苦手とされるシーナはここには居ないと確定している。
ならば、最悪力づくで突破できる。シキが動けないのならば、自分が足を止めるわけにはいかない。
ラビリンスはまた走り出す。だがすぐに、
「!?」
ガシャン! と、背後でシャッターが閉まった。
「やっぱり誘い込まれたみたいだね……」
ラビリンスは自身の3Dコーティングを解く。
正面の曲がり角の先から、とある人物が姿を現す。
ラビリンスは背後でシャッターが閉まったことよりも、現れた人物に驚いた。
「なんで……」
そこに居たのは、居ないはずの人物だった。
「私が用意した侵入経路はいかがでしたか? あなたが楽しめるよう、徹夜で考えたのですよ」
ジト目、水色髪の少女――シーナだ。
「あれれぇ? 君、アスター2の方にいるんじゃ~??」
目の前のシーナが偽物とは思えない。となると、偽物はシキの方に居た方。
しかし、観察眼のあるシキが素人の変装に騙されるはずが無い。たとえ遠目でも、服や髪型を近づけた程度の変装ではシキは騙せない。
ラビリンスは1つの答えに辿り着く。
「……3Dコーティング……!!」
「ご名答」
3Dコーティングでシーナの姿を模倣し、その上で遠距離で構える狙撃手に徹すればシキの目も騙せる。
ラビリンスはすぐさま通信をONにする。
「もしもしロゼ……ロゼ?」
「無駄です。この艦内には攪乱粒子を撒いていますから。外との通信はできませんよ」
シーナはハンドガン『紅竜』と『蒼竜』を展開する。
「ここまでは全て想定内」
(完全に油断していた。いや、油断させられたって言う方が正しいかな。上位メンバーの顔をアスター2に確認させることで、他は手薄だと思わされた! こんな罠にまんまと掛かるなんてね! しかも、この『化かし』でピンチになったのは私だけじゃない……)
ラビリンスはシキの姿を頭に浮かべ、冷や汗をかく。
「あなたは私と遊んでもらいます」
「んにゃ~! これはちょっとヤバいかもよ皆々様~!!!」
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