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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
C級ランクマッチ編

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第23話 屈辱のボッチ

「ふぅ。さすがに1対8は無理ですか」


 シーナさんはカプセルベッドから起き上がる。その表情はとても負けた後には見えないほど余裕だ。


「やっぱCランクは甘くないわね。動きもだけど全員戦術がしっかりしてるわ」

「個人技だけじゃ勝てなくなってきたね~。こっちも戦術しっかり練ろうよ」

「はい。そうですね」


 みんなは前を向いている。だけど僕は……、


「ひぐっ」


 僕は――泣いてしまった。


「シキさん?」

「ちょ、アンタなに泣いてるの!?」

「およよよ!? どしたん! チャチャさん、なんか歌うたおうか?」


 悔しい……悔しい……!


「す、すみません……情け、なくて……!」


 恥ずかしくて死にそうだ。こんな、新参者が負けて泣くとか、何様だという話だ。


(僕は最低だ。面倒だからって真っ先に死のうとして……みんな真剣にやっているのに、僕は僕の都合で負けようとして……! そのせいでニコさんもシーナさんも……! 僕が居なければ、僕と合流しようとしなければ、2人はきっと合流出来て違う結果になったはずだ……!)


 腕で顔を隠す。ロボット設定なのに涙が出るなんて変な話だ。こんな余計な機能入れないでよ……!


「ご、ごめんね! 無理やり誘っちゃってさ! ウチらも結構その、3人目が見つからなくて切羽詰まっててさ! その、ほら、あれよ! お礼に好きな武器買ってあげるから!」

「今回は負けて当然の試合だったよ! チャチャさん達も練習試合的な気持ちだったし!」

「……負けて当然、では……ないです!」


「――っ!!」


 こんな僕でも慰めてくれる。その優しさが、逆に辛い……。


(1人は楽だ。1人なら負けたって耐えられる。敗北の悔しさに耐えられる。だけど……! こういうチーム戦だと、負けた時に申し訳なさとか、やるせなさとか、いっぱい乗っかってきちゃう……!! 早々に自滅しようとした過去の自分を撃ち抜きたい。忘れていた……この感覚、この感覚が嫌いなんだ。1人で負けたら1人分の悔しさだけ。だけど4人で負けたら4人分の悔しさが乗っかるんだ)


 悔しい……悔しい……悔しい……!


(やり直したい。勝ちたい。僕には(これ)しかないんだ。これで存在証明できないなら僕はなんにもできやしないっ!!)


 どうしよう。このままログアウトしようかな……。


「ふふ」


 シーナさんの口から――笑みが零れた。


「ちょ、ちょっとアンタねぇ……! 空気読みなさいよ!」

「すみません。今のは自嘲(じちょう)の笑いです。私達はシキさんを見習うべきですね」

「え?」

「――我々は負けたのです。なのに敗北の悔しさを流してしまっていた。こんな呑気に改善点を述べて、切り替えようとしてしまった。これは良くないことです。負けたのなら、しっかりと悔しがるべきなのです。シキさんは涙を流すことで、我々にそのことを伝えてくれたのです」


 あれ? なんか良い感じに解釈してもらっている。


「それは……そうだけど。でも」

「急造チームだから仕方ないと? それは単なる言い訳です」

「うぐっ」

「んにゃ、シーナっちの言う通りかも。チャチャさんも正直『仕方ねー』って流しちゃってたわ」

「ええ。私もです。我々が受け流してしまった『悔しさ』を、シキさんが受け止めてくれたのです。ありがとうございますシキさん、あなたの涙のおかげで、我々は過ちに気づけました」


「はい……?」


 なんか変に評価されてしまった!?

 シーナさんの僕に対する視線が信頼感で溢れている。この子、ひょっとして天然なタイプ……?


「それで、これからシキさんはどうしますか?」

「えっ、と……」

「契約はこのランクマッチまでです。もうランクマッチは終わり、シキさんは自由になりました。今後は我々と関わる義務はありません」


 それは……そうだ。

 ここでさよならして、またソロで黙々とゲームを進める。それがきっと1番(たの)しいし、(らく)だ。

 でも……その選択がきっと、1番『悔しい』。


(僕はボッチで、コミュニケーション苦手で、チーム戦とか大嫌いで……でも、それ以上に――)


 僕は拳を握り、顔を上げる。


(それ以上に、負けず嫌いなんだ!)


 怖いけれど、負けっぱなしで終わりは我慢ならない。

 負けず嫌いだから、誰かに負ける前に自滅しようとした。敗北から逃げようとした。でももう負けてしまったのだから、逃げることはできない。やり返さないと気が済まない!!


「あと1回だけ、一緒に戦ってくれませんか!?」


 シーナさんは微笑み、ニコさんは呆れたように笑い、チャチャさんはニッコリと笑った。


「はい。こちらからもお願いします」

「そんじゃ次の大会予約しなくちゃね~。なんか要望ある?」

「あ、あの……僕と戦ったチームが出る大会に出たいです」

「紅蓮の翼のこと? ははーん、つまり仕返しってわけだ」

「そういうわけでは……」


 あるんですけど……。


「いいじゃん! 私、そういうのだーい好き! 私も奴らのスナイパーにやられたからね。シキに賛成よ」

「そうなると」


 チャチャさんは腕時計型の電子端末を弄り……、


「1週間後! Cランク帯の大会があるよ。多分この大会で紅蓮の翼ランクアップしちゃうから、ここで戦えないと次の機会は大分遠くなっちゃうね~」


 1週間か。十分な時間だ。


「ではそれまでにシキさんのレベルを30まで上げないとですね」

「まぁウチらが高難易度のプラネットに連れてけば一瞬でしょ」

「そ、そのことなんですけど……レベル上げとかは1人でやらせてほしくて……お借りした武装も返却したくてですね……」

「え? 別にいいわよ返さなくて」

「うんうん、いやいや、わかるよシキっちょ。あたしも姫プ嫌いだからね」


 何度も頷くチャチャさん。わかってくれますか……。


「なるほど。助けの無い状況で自身を追い込み、更なる個人技の強化をしたいと。そういうわけですね」


 シーナさんは勝手にカッコいい解釈をしてくれるなぁ。


「いいですよ。ただし、こちらからいくつか宿題を出します」

「宿題って……?」

「最低限欲しいステータスとか、チーム戦術として欲しい武装とか少しばかり指定させていただきます。安心してください。どれも大したものではありません」

「で、では、よろしくお願いしますぅ……」

「はい。我々はいつでも協力しますので、手詰まったらぜひ私達を頼ってください」

「わ、わかりました……」


 今日のインフェニティ・スペースはこれで終わりにしよう。

 結果的にランクマッチに参加できたのは良かったな。色々なテクニックや戦術、武装を知ることができた。思っていた以上に奥深いゲームだ……やりがいがある。


 この屈辱は忘れない。

 次は最初からフルスロットルで戦う。

 紅蓮の翼全員、撃ち抜いてやる。

【読者の皆様へ】

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― 新着の感想 ―
ここのkoghalさんの最初の感想がおま俺だった件。 シキを動かすために作者さんが用意した舞台装置という観点であれば、シーナの在り方は成る程と思えます。 一方、人として見ると、こういう奴とは関わりた…
悔しいとか見返そうとかの感情がだんだん『仕方ない』になるんだよなあ 意欲を無くすと成長しない
↓申し訳ありません、ちょっと感情的になり過ぎました、今後自重します ストーリは毎回とても面白いです、今後も楽しみにしております
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