第22話 バランサー・イズ・スペシャリスト
シーナさんはバランサー。バランサーの初期値は、
装甲:C(60)
スラスター出力:B(80)
スラスター容量:C(60)
精密性:C(60)
レーダー:C(60)
ステルス性:C+(70)
EN容量:C+(70)
その名の通りバランス重視のステータス。
シーナさんの武装は確認できる限りだと両手のハンドガン、右肩に付いた花のような盾。シールドピースは多分1枠のみの50個。あと一定時間毎に白いマントを羽織っている。きっと僕のダストミラージュと同じようにステルス性を上げるマントだ。サーベルの端末も腰のホルダーに見える。合計6つ。残り2枠は不明。
「……」
チャチャさんにあの肩の盾について聞きたいけど、ニコさんが居るから聞きづらい。チャチャさんとの1対1の会話は慣れてきたけれど、まだ1対2の会話は無理ぃ……。
「あーあ、これはまずいわね」
シーナさんのレーダーに6……8機のスペースガールが映る。もう囲まれている形だ。
「なんでこんなに……」
「マークされてるからよ」
「シーナっちはちょい有名人でね、最優先で狙われちゃうんだよ。打ち合わせ無しでも、自然と他のチーム達はシーナっちを落とすために連携しちゃう。この形になると……」
こんなの、もう……。
『まぁ紅蓮の翼に1人で勝てるとも思っていませんから、どっちみち勝ちの目は無いと考えてましたよ』
シーナさんは冷静に言う。
「もう大人しく落ちたら? 意味なく手札見せる必要はないでしょ」
『いえ、私の能力をシキさんに見せる良い機会です』
「え、あ、僕……!?」
『はい。それではまず、私の秘密兵器――最強の武装を見せましょう』
いきなり秘密兵器!?
「アンタまさか……!」
『レールガンを起動します』
れれれ、レールガン!?
「うわわわ……!?」
シーナさんはハンドガンをしまい、とある武器をデータから実物へと具現化させる。
「あの形状、ホントに――」
――電磁砲、レールガン。
電磁砲の銃身は長く1mほどあり、その砲口は長方形だ。
レールガンと言えば、電磁気力を高速で撃ち出す大砲だ。ガンオタにとってはロマン砲と呼べる代物……!
『有効射程は200m。弾速は――』
電磁砲に電気を走らせ、シーナさんは横のマンションに砲口を向ける。その2秒後――電磁弾が放たれた。
強烈な射撃音と発光。放たれた電磁の弾丸はマンションを貫き、マンションの先にいた敵アイコンの1つを消した。
『見切れる速度じゃありません。威力も上々』
強い。速すぎる。あんなの反射で見切るのは不可能だ。
「ただ欠点もございまして、1度撃つとチャージ時間が1分20秒必要。さらに発砲音と発光が酷いため、このように」
シーナさんの包囲網があっという間に完成する。四方八方、完全に塞がれた。
「一気に敵が寄ってきます」
シーナさんに襲い掛かるスペースガール達。シーナさんは彼女たちの攻撃を捌きながら解説を続ける。
『私の基本スタイルはハンドガン2つ持ちです。このハンドガンは右手側のレッドカラーが1撃重視のセミオート、左手側のブルーカラーが手数重視のフルオートマチック。次にこの肩の花のような武装ですが』
「よく喋りながらこの猛攻を捌けるわね……」
「……ええ、本当に……」
シーナさんの動きは総じてレベルが高い。クレナイさんやニコさんより、間違いなく格上だ。
『この肩の武装はシールドピースの派生に当たる『アタックピース』です。武装名は『六花』』
シーナさんの肩の花が6枚の花弁となり散る。その花弁はシールドピースのように空中を闊歩し、敵機に襲い掛かる。花弁の先は鋭利に尖っており、スペースガールの装甲を突き破るだけの威力を持っている。
(遠隔操作できる6つのサーベルって感じかな。リーチは無いし、速度もそこまでだけど、シーナさんの射撃を捌きながら相手するのは難しいだろうなぁ)
僕なら多少のダメージは覚悟してまず六花を撃ち落とすかな。これだけ人数差があるんだから、誰か1人ぐらい六花の排除に集中すればいいのに。やっぱり急造のグループだから連携がぎこちないね。
『これは言うなれば攻撃型シールドピースです。ガードにも使えますが、防御力はそこまでありません。この六花と二丁のハンドガン、状況においてサーベルとシールドとスナイパーライフルも使います』
つまり、ハンドガン・ハンドガン・スナイパーライフル・サーベル・シールド・マント・六花・シールドピース……レールガン?
(武装が9つ……?)
『うーん、さすがにそろそろ限界ですね』
「この包囲網で5キルできたなら上等だよ」
「やり過ぎでしょ! ほんっとプライド高いわね!」
シーナさんはすでに右腕と左足を失っている。もう勝負は決した。
シーナさんが徐々に追い詰められる姿は……心に来る。この状況を作ってしまったのは他でもない、僕なのだから。僕のせいで、シーナさんはいじめられているんだ。
ニコさんは3機、シーナさんは5機倒した。でも僕は……撃破数0。
(あああ、足手まといだ……僕のせいで負けた……僕のせいで)
シーナさんは成す術なくデリートされた。
レールガンと六花はG-AGEと同じくスペシャルウェポンです。
シキは六花を『大したことない速度』と評してますが、普通に速いです。それでいて小さく動きが(シーナの技量によって)複雑なので、一般スペースガールでは撃ち落とすのは無理です。どこかで書こうかなと思ってますが、ピース系武装は2枠までという制限があります。シールドピース3枠とか、シールドピース2枠+アタックピース1枠とかは無理です。なぜ枠制限があるかと言うとピース系武装はハッキリ言って強力だからです。六花の最大の弱点はシールドピースの枠が1つ減ることですね。




