第206話 ツギハギチーム
敵メインシップ先端から砲身が顔を出す。
タイミングが大事だ。
ベストなタイミングは主砲を撃つ寸前、相手が砲撃を通すためにフレアフィールドを消した瞬間だ。それより早く撃つとフレアフィールドに弾かれてしまう。それより後だと主砲の1撃を許してしまう。
ただ、その瞬間を狙うのはリスキー過ぎる。視界の悪さ、敵スペースガール等の障害物の存在。これらの要素をクリアしつつ、ベストタイミングまで求めると流石に確率が落ちる。
撃っている途中でいい。あっちがメガレーザーを撃っている間に、1撃で仕留める。申し訳ないけど、特攻しているサブシップは見捨てる。
「くる……!」
相手が主砲を放った。
その0.1秒後に、僕も撃つ。僕の居るサブシップの高度は敵メインシップに合わせている。角度は問題なし。弾は直進し、数体のスペースガールを貫いた後、敵メインシップ主砲に着弾。敵メインシップの主砲を根元から溶解する。
「寸分狂いなし」
主砲の破壊に成功。しかしアスター3もメガレーザーに撃墜され、爆散した。
アスター3の爆発の余波は凄まじく、1番近くにいた敵メインシップを怯ませることに成功する。
「よし、後は……」
『突撃~~~~~っっっ!!!』
今度はスピカ・セーラスが突撃を始める。
サブシップに続いてメインシップの突撃。息つく間を与えず、ロゼッタさんは奇策を連打する。
スピカ・セーラスの戦艦としてのステータスはかなり高く、今の荒れた戦場なら突っ切れるタフネスを持っている。怖いのは敵メインシップの主砲だったけど、それは僕が潰したから問題なし。
「囮艦で主砲を引っ張り出して、僕が主砲を狙撃して破壊。相手の攻撃力が下がったところでメインシップの突撃。シビアな作戦だと思っていたけど、ロゼッタさんの思い通りに事は進んでいる。あの人、やっぱり凄い……」
スピカ・セーラスは全速力で進む。だけど目的は敵戦艦を撃墜することではなく、敵戦艦とすれ違うことだ。接近すること、と言い換えてもいい。
全ての武装を使って敵陣をこじ開け、進んでいく。敵の反撃をほとんど回避しているのが恐ろしい。
(イヴさんの仕業だなぁ。ほんっと、あの人の操舵は何度見ても意味がわからない……)
アスター1とアスター4も地を這って前進し、敵艦隊を下から砲撃して援護する。
敵艦隊は地上からの攻撃に一切反応できていない。
「そっか。空が騒がしい分、地上への警戒が緩んでいたんだ。その隙を狙って……」
僕の居るアスター2だけはその場に残る。僕は引き続きレイ・オブ・サンクション改で敵メインシップを狙い撃ちにする。もちろん、フレアフィールドやシールドピースに防がれるが、確実にその両方の残量を奪っている。銃身が焼き切れたら換装し、新たなレイ・オブ・サンクション改で撃つ。
これが本当の『戦術』か。艦隊の戦力は大差無いはずなのに、こっちが一方的に攻めている。
『主砲! 撃てェ!』
スピカ・セーラスが主砲を撃ち、敵メインシップがシールドピースとフレアフィールドでそれを防ぐ。
度重なる攻撃を受け、ついに敵メインシップはフレアフィールドを解いた。スピカ・セーラスの攻撃を弾くため、僕の狙撃やサブシップの総攻撃を弾くため、高出力で展開し続けた結果オーバーヒートしたかEN不足になったんだ。
スピカ・セーラスは全身からミサイルを発射する。敵メインシップはミサイルの攻撃を捌き切れずくらってしまう。致命傷には程遠いが、敵メインシップの装甲に幾つかの穴ができる。
「……全ての条件クリア」
スピカ・セーラスはソルニャー風船を撒きながら敵メインシップとすれ違う。下を走っていたサブシップ2隻もソルニャー風船を撒き散らしつつ、敵メインシップの下を通過する。いま、敵艦隊は大量のソルニャー風船に囲まれている。
わざわざ接近して、やったことはそれだけ。
そのままスピカ・セーラスとアスター1&アスター4は戦線を離脱。逃げていく。1隻残された僕の居るアスター2と、戦場に残ったスペースガール達は敵主力の激しい攻撃に遭う。
こっちはサブシップ1隻+60人規模のスペースガール部隊。
相手はメインシップ1隻+サブシップ4隻+主戦力たるスペースガール達……全戦力を投入している。
勝てるはずも無いので撤退を始める。けどもちろん逃がしてはもらえないだろう。いずれやられる。
「さてと……」
僕は格納庫に戻り、ワイバーンに乗って出撃。スタークとアステリズムの狙撃で味方陣営を援護する。
(敵前線を挫いて、サブシップも1隻ぐらいは持っていきたいね)
いま僕がやっていることは次善の策というか、保険というか。
恐らく……99%、必要のない無駄なこと。
勝負はもうついている。
---
――VIPルームA。
「見てにゃ見てにゃ♪ あれ、あれソルニャーにゃ! ソルニャーにゃ!!」
大量のソルニャー風船をモニター越しに確認し、小躍りするソルニャー。
「やかましい。一体誰だ? この毛むくじゃらをVIPルームに入れたとは……」
部屋には六仙とPPPとマザーとソルニャーがいる。
ソルニャーは不機嫌そうに腕を組むPPPの頬を両手で包み込む。意外にもPPPは抵抗せず、ソルニャーに揉みくちゃにされている。
「キュート! ソー、キュート!!!」
マザーはソルニャーに抱き着き、目をハートにさせる。
「がわいいっ! がわい過ぎるぅ!!!」
濁声でマザーは言う。ソルニャーは首を傾げ、なぜかタップダンスを踊り始めた。
騒がしい2人を他所に、PPPは六仙に語り掛ける。
「一見、知の無い特攻に見えるが……なにかあるな」
「さぁ、どうだろうね」
PPPは一滴の焦りを瞳に宿し、六仙に問う。
「それよりなんだ……今の変態飛行は。誰がメインシップを動かしている?」
艦隊戦の経験が豊富なPPPはスピカ・セーラスの操舵に驚いていた。
操舵手は多く見てきた。舌を巻く者も多く居た。だがアレは……格が違う。
「それは秘密さ」
「主殿にゃ!」
「ソルニャー。君は黙って踊ってなさい」
PPPは席を立つ。
「展開は読めた。もうここに用はない」
「流石の君も、相手がフリーパーチとなると自軍が心配のようだね」
「心配? 馬鹿を言うな。アカボシもツバサもシーナも出てこない以上、負けは無い。苦戦は強いられるだろうがな。私はただクイーンとして、勝利した配下を労う準備をしたいだけだ」
PPPが扉の前に立つと、扉はひとりでに開いた。
「自軍が心配なのはお前の方だろうが。ツギハギの軍隊……お前の理想とするものとはかけ離れているはずだ」
「……」
「ミフネの造反は痛手だろう? あくまで頭は軍隊で固め、手足に特殊戦力を固める。それが当初の予定だったはずだ。それが最も効果的に戦力を発揮できる形だった。だが軍人であるミフネが失脚し、部外者であるシキが活躍したことで軍内部の統率は乱れた。今はこけおどしでなんとか出来ていても、強い個が集まり、尚且つ高い統率力を持つ我が軍は倒せない」
六仙はPPPの発言の一部に疑問を抱くが、敢えて指摘せずに流す。
PPPは不敵に笑い、場を去る。
六仙は視線をモニターに戻し、微笑んだ。
「……シキ君、ラビ君、ロゼッタ君、イヴ君。たとえ軍全体の統率力は並でも、この4人が完璧に連携できれば問題ないさ」
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