第205話 華麗なる戦い
始まってすぐ僕は格納庫から出撃し、サブシップの上に飛んだ。
サブシップの艦上、中央よりやや前の位置に着地する。
「うわぁ、砂漠かぁ……」
砂漠。日照りが凄い。環境的にはオケアノスに似ている。
砂漠だけでなく街らしきものも遠くに見える。
『砂漠1は広大な砂漠と3つの大都市で構成されているステージだ』
ロゼッタさんの声が頭に響く。
僕だけじゃない。チーム全体に同時に通信している。
『砂漠内の遮蔽物は遺跡と岩山以外ほとんどなく、戦艦を隠すには砂を被るしかない』
遺跡って……アレか。300m程先にある。
巨大な城を中心とした小さな町。ボロボロで、廃れた町だ。
城は戦艦より大きいけど、城の周りに建造物があるから城の影に戦艦を隠すのは無理だね。戦艦が建造物にぶつかって傷ついてしまう。
『しかし砂を被ると戦術の幅が狭くなるからねぇ。ここは――逃げ隠れ無し。真っ向勝負でいく。戦術をパターン22に変更。総員、行動開始』
最低限のことを伝え、ロゼッタさんは通信を切った。
パターン22。メインシップを中心に据え、右前方、右後方、左前方、左後方にサブシップを置くオーソドックスな陣形。ただ、このパターンは敵艦を発見した後にその特殊性を発揮する。
『こちらメインオペレーター! 敵艦隊捕捉! 座標、通知します!』
オペレーターさんの声だ。
詳しい座標が全体に伝えられる。敵艦隊までの距離はおよそ4.8km。
敵艦隊を発見したことで、オケアノスチームの陣形が動き出す。
メインシップを最後尾に置き、右前方左前方に2隻ずつサブシップを展開する。言わば鶴翼の陣。上から見るとV字になる陣形だ。
相手の艦隊が見える。
敵艦隊の陣形はシンプル。前方にサブシップ4隻を置き、メインシップは4隻の影に隠れる形。
両陣営共にスペースガールを展開する。相手のスペースガールはみんなスーツ姿……ホストのようだ。
戦艦を後列に置き、スペースガール達が前に出る。
「……」
「……」
両陣営沈黙。ジリジリと間合いを測る。
長距離攻撃でチクチクと攻撃を交わすが、互いに大したダメージは与えられない。
まさに嵐の前の静けさ。1度開戦したら待ったなし。
この前と違い、真正面からの全戦力のぶつかり合いが予想される。緊張が戦場に走る。
そんな中、
『あー、あー、あー。聞こえるかね? KnightNightの諸君』
ロゼッタさんの間の抜けた声が戦場に響いた。
メインシップに搭載された拡声器を使い、戦場全てに声を響かせているのだ。
『吾輩はオケアノス軍総大将のロゼッタである。我が軍は力と力のぶつかり合いを望む。策を弄するつもりは無い。真正面からの戦いを所望する。逃げたくば好きにすればいい。ただし、力勝負から逃げた場合、君達のファンは幻滅するだろうけどねぇ』
ロゼッタさんの挑発。これに対し、
『素敵な招待状をありがとう、ロゼッタ君。私の名は壱竺白夜。KnightNightチームの総大将だ』
KnightNightの方も乗ってきた。
めちゃくちゃ爽やかボイスだ。
『君のお誘いには花束を持って応えよう。私達にとって、これは戦争ではなくエンターテインメント。派手であれば派手であるほどいい。宇宙中のレディー達に、華やかな戦いを見せてあげようじゃないか』
ロゼッタさんは試合前に言っていた。『KnightNightの人間は勝ち負けよりもカッコよさにこだわる』と。なるほど。確かにその通りだ。
『もちろんだとも。泥臭い戦いなど時代遅れだからねぇ』
両者の音声が切れる。
オケアノスの兵も、KnightNightの兵も、士気が目に見えて上がっている。今の両指揮官の会話で心に熱が灯ったのだろう。
「……よし、準備完了」
僕はサブシップ艦上に展開された超長距離スナイパーライフル、『レイ・オブ・サンクション改』を装備する。銃身の長さは12mを超え、重さは1200kgを超える。射程は19.5km。
威力、射程、精度。全てにおいて高水準だけど3発で部品のほとんどが破損してしまうピーキーなライフルだ。
「……」
狙うのはメインシップではあるが、撃墜なんて狙っていない。シールドピースもあるし、メインシップにはフレアフィールドもあるし、装甲も分厚い。単騎で撃墜を狙うのは無理がある。
――そう、このシップバトルにおけるメインシップ攻略はかなり難易度が高いのだ。
当然と言えば当然。メインシップは王でありエース。簡単に落とされてはゲームにならない。
外部から破壊するには相当な火力が必要。
「……動いたか」
自軍が下がり、敵軍が前に出る。
それを見て、アスター1とアスター4が着陸。アスター3が前へ突出。メインシップはアスター3の後ろにつく。僕がいるアスター2は僅かに高度を上げる。
鶴翼の陣は囮。堅実な攻めをしてくると相手に錯覚させるための囮だ。
このバラバラで歪な陣形こそ本命。
『シキ君。ブリッジと通信を繋ぎっぱなしにするが、構わないね?』
「は、はい。タイミングを合わせるためにも、必要です」
敵陣形が動こうとした、その瞬間、
『放てェ!』
とロゼッタさんの声が響いた。
砂漠に着陸したアスター1とアスター4が大量の砂を放射した。
「「「「なっ!!?」」」」
敵陣営に動揺が走る。
陸に居る2隻の艦上にある無数のホースから、敵スペースガール達に向け、大量の砂が降り注がれる。
『フハハハハハハ! スペースガールはねぇ、下手に人間を模しているから目に入った砂の処理には手間取るんだよ!! 泥臭い戦いはしないけど、砂臭い戦いはしようか!』
愉快気なロゼッタさんの声が聞こえる。
『砂は無限。いくらでも使えるぞ』
それにしても凄い勢いだ。砂塵が敵陣を飲み込んでいる。こっちも砂煙で相手の陣形が見えなくなるけど、あっちはもう何も見えていないだろう。
あれだと口にも入るだろうし……痛みは無いだろうけど不快感は凄いだろうなぁ。ステージが砂漠である可能性も考慮し、砂を利用する武装も配備していたのは見事。
『アスター3! 出ろ!』
砂塵で乱れた敵陣目掛けて、アスター3が最高速で突進する。
こっちの軍勢が空けたスペースを通り、砂塵を突き破る。敵スペースガール群を撥ね飛ばし、敵本陣へ突っ込んでいく。
まさしく特攻。
砂の弾幕で相手の視界を潰してからの特攻だ。反応は難しい。さらにアスター3は全身の噴出口から無数の『風船』を出した。
――ソルニャーの顔を模したまん丸の風船だ。
「デコイバルーンの形、ソルニャーにしたんだ」
あのソルニャー風船は熱源を持ち、追尾系武装を引き寄せる。さらに、スペースガールと同じレーダー反応を起こす。たとえばあの風船群の中にスペースガールが紛れ込んでも、レーダーだけじゃ判別不可能。
大量の囮風船をまき散らしながら進むアスター3。相手のスペースガールは視界を潰され、戦艦に突撃され、更にレーダーに大量の敵機反応が出て慌てふためいている。
あのサブシップにはほとんど乗員が居ない。代わりに、大量の爆薬が詰んである。完全に使い捨て。もう10秒後には撃墜されるだろう。
第一回戦で誰もがサブシップの重要性を理解した――上での使い捨て。完全に相手の虚をついた。アスター3は敵サブシップの弾幕を受けきり、風船を吐きながら敵メインシップに迫る。
すでにボロボロ。全身が煙を上げている。それでも突き進み続ける。当然、敵メインシップは本気で排除にかかる。
敵のメインシップが主砲を構えた。
(きた)
ターゲットが顔を出した。
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