第202話 指揮官ロゼッタ
日曜日。
第二回戦(vs KnightNight)まで残り15時間(AR内時間で)。
僕はメインシップのブリーフィングルームにて、イヴさん・ラビちゃん・ロゼッタさんと待ち合わせたのだが、
「え~……と」
驚いた。イヴさん以外、衣装が変わっていた。
ラビちゃんはマスク含め怪盗衣装を全て脱ぎ去り、代わりに緑のパーカーと黒のスカートを着ている。その顔は不満気だ。
一方でロゼッタさんは白衣を脱ぎ去り、代わりに白のジャケットを羽織った上で顔の上半分を銀仮面で隠している。グリーンアイスから印象を変えるためか、靴もスカートもインナーも近未来風だ。髪のインナーカラーも黄緑から紫に変化している。
「なんで急にイメチェンを?」
「六仙の指示だよ! ラビリンスの格好じゃまずいからって、こ~んな地味な格好させられてさぁ! ラビちゃんおこだよ! おこ!」
「吾輩も同じ理由さ。顔晒しちゃってるから仮面で隠せってね」
ロゼッタさんはアバターの顔をいじれば良かったんじゃ? めんどくさかったのかな。
「どうだいこの仮面は! ロボットアニメのライバルキャラのような風格があるだろう?」
ロゼッタさんはコレ、単純に気に入ってるなぁ今の姿。
「名前もラビリンスじゃまずいからって、ラビに変えられちゃったよ……も~、さいっあく!」
変え方が足りないぐらいだよ。
「吾輩はロゼッタのままだ。グリーンアイスの名は知られていても、こっちの名を知っている者は少ないからね」
「その辺の話はもういいだろ。早く本題に入ろうぜ」
イヴさんが話のレールを切り替える。
そうだ。時間にそこまで余裕があるわけじゃない。
試合当日に1回目の作戦会議とか、普通はあり得ないもんね。
「は、はい! では、始めます……」
僕は部屋のロッカーの中に入る。
「待て。なぜロッカーに隠れる?」
「仕切り役とか緊張するのでぇ……心配はいりません。ロッカーの穴から外は見えます!」
「そういう問題じゃ……もういいや。進めろ」
僕は部屋にあるスクリーンに作戦内容を映す。
「作戦はシンプルです。相手のメインシップは無視して、僕とラビちゃんでサブシップを削ります。スピカ・セーラスは序盤、前に出て敵を引き付けてください。無理に敵艦やプレイヤーを狙う必要は無いです。前に出るだけ出て、耐えることを意識してください。メインシップが目を引いている間に、僕とラビちゃんが奇襲でサブシップを落とします」
「メインシップはずっと防御でいいのか?」
イヴさんが聞いてきた。
「相手のサブシップが2隻以下になったらメインシップも攻勢に出てもらいます。戦艦で敵メインシップを囲み、包囲射撃で撃墜します」
「オールキャンセル」
ロゼッタさんは両手を挙げ、そう言い放った。
「きゃ、キャンセル?」
「全却下ということさ。悪くは無いが芸がないねぇ。作戦指揮は任せてくれ。吾輩が面白おかしく潰してやる。ラビ君、君にも手伝ってもらうが、構わないね?」
ラビちゃんは僕のいるロッカーを見る。
(ロゼッタさんに全てを委ねるのは怖いけど……ロゼッタさんの指揮を見てみたい気持ちもある)
僕はロッカーから出て、頷く。ラビちゃんは「しょうがないにゃ~」と承諾した。
僕は椅子に座り、ロゼッタさんが前に出る。
「元々メインシップの操舵手だったイーノ君はアスター1に居るんだったか」
「はい。メインシップはイヴさん、アスター1にイーノさんの配置でお願いしてます」
「よし。ふふふ……さぁ、どうなるか」
「それでロゼッタさん、作戦というのは?」
「吾輩の作戦は君とは真逆だ。サブシップは無視し、メインシップのみを落とす。詳しく言うと――」
僕はロゼッタさんの作戦の詳細を聞き、つい顔を引きつらせてしまった。
「……本気ですか?」
「ああ」
「今の戦力なら正攻法で勝てそうですけど……」
「かもしれないね。だけどさぁ、シキ君……こっちの方が面白いだろ?」
はたして僕は、この人を制御することができるのだろうか。
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またブリーフィングルームにて会議。だけどさっきとはメンバーが違う。
ラビちゃん・イヴさんOUT 副長・各サブシップ艦長IN。
「昨日も自己紹介したけど改めて。この度総指揮を執ることになったロゼッタだ」
サブシップの艦長達は少し厳しい顔つきはしつつも、拍手を送る。
「まず今回の作戦についてだけど、基本戦術はパターン34に従う。ただし、特殊戦術を幾つか組み込む。環境によって分岐するものもあるからきっちり頭に入れてくれ」
ロゼッタさんの作戦を聞き、副長も艦長達も、さっきの僕と同じように顔を引きつらせた。
「どれもこれも……」
「せこいというか……」
「うざいというか……」
「卑怯というか……」
「なんというか……」
「君達は息ピッタリだねぇ。その調子で本番も頼むよ」
それから細かい部分を話し合い、会議は終わった。
僕とロゼッタさんはブリーフィングルームを出てメインシップの格納庫へ向かう。
「オケアノス兵の特徴だね」
並んで廊下を歩いていると、唐突にロゼッタさんはそう口にした。
「なにがですか?」
「あの真面目さだよ。吾輩の発言の1つ1つをちゃ~んとメモに取り、わからないことがあればちゃ~んと質問。曖昧なまま終わらせず、細かい所まで詰めてくる。ド真面目ちゃん」
「例外もいますけどね……」
ミフネさんとか。
「真面目とはいえ、柔軟さが無いわけじゃない。臨機応変に立ち回れる。総じてIQが高いんだよねぇ。ただかなりの忠犬気質。良くも悪くも指揮官の意思に沿った動きをする。ゆえに指揮官によって軍の総合力は大きく上下する」
ロゼッタさんは長くオケアノス軍と対抗していた。だからオケアノス軍への理解度が高いのだ。
「つまり、ロゼッタさんが指揮すれば負けないってことですね」
「お、言ってくれるねぇ。そうそう、君には特に作戦は授けないからね」
「え? なぜです?」
「君が1つの『戦術』だからさ。君が1人で暴れているだけで、それはれっきとした戦術なのだよ」
ちょっと何言ってるかわからないです。
「とにかく、君は君の判断で動いてくれ。戦況は逐一報告しよう」
「わかりました。ただ、ロゼッタさんの例の作戦には一枚噛ませてください。面白そうですから」
「いいだろう。では君には敵メインシップの主砲の破壊をお願いしようかな」
表情には出さないけど――すっっっごく嬉しい!
ロゼッタさんに任せておけば艦隊戦は任せておける。僕は自分の動きに集中できる。
次の戦いは後ろを気にせず、なんの縛りも無く自由にやれる! 楽しみになってきた……!
「ところでシキ君」
「な、なんですか?」
「代理戦争が終わったらオフ会しないかい?」
「しません」
「……」
「……」
「だめぇ?」
「ダメです。逆になんでオフ会がしたいんですか?」
ロゼッタさんは口元を緩ませ、
「君に興味があるからさ」
「え……!?」
「ぜひともリアルの君も観察したい」
ロゼッタさんは足を止め、僕の目をジッと見つめてきた。
「できることなら、隅々まで――」
ロゼッタさんはシャツの首元を引っ張り、胸元を見せてくる。
「あ、いや……そういうのは、ちょっと……!?」
「ぷっ。ははは! 君は面白いねぇ。からかい甲斐がある」
「え……!?」
ロゼッタさんは肩を竦める。
「安心したまえ。吾輩は熟女好きでね。ロリには興味が無いんだ」
「熟……!?」
「人妻なら尚良し」
「ひ、人妻ぁ!?」
「冗談だよ。はっはっは!」
ロゼッタさんは僕を置いて歩を進める。
「ど、どこからどこまでがぁ……?」
第一巻の校正をしていてね、実は物凄いミスに気づきましてね。
なんとわたくし、なぜかずっとinfinity→インフェニティって書いてたんですね。正しくはインフィニティですね。多分インフェルノとかインフェルニティに引っ張られたんでしょうね。今まで誰にも指摘されなかったのがビックリ。
間違いの箇所が多すぎて、もうWEB上で修正するのは不可能(というか労力ぱない)。というわけで、この話から先のみインフェニティはインフィニティに変わります。インフェニティスペースはインフィニティスペースに、インフェニティバーストはインフィニティバーストに変わります。すみませんね。





