第201話 シキvsミフネ
僕とミフネさんはスラスターを吹かし、船から離れる。
僕はライトウィングを展開。距離を取り、スタークの速射モードで弾を連射する。直撃は無くとも足は止まるはず、と思ったのだが、ミフネさんは速度を緩めず弾幕に突っ込んでくる。
(嘘でしょ、この人――)
盾も持ってないし、シールドピースも装備していない。
(防御しないつもりか!?)
否、ミフネさんは両手のサーベルと脛のサーベルで弾を弾いた。
「サーベルで弾を……!?」
「侮るなと言った!!!」
距離を詰められる。
ミフネさんは足裏からもサーベルを展開し、接近戦を仕掛けてきた。
(両手、両脛、両足で……6本!?)
「うおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」
6本のサーベルによる連撃。
回避を試みるも躱し切れず、左腕の肘から先を右足のサーベルに斬り落とされた。
「くっ!?」
咄嗟にミフネさんの腹を蹴り、間合いから遠ざかる。
「6で終わりではないぞ?」
ミフネさんは体を横回転させる。
閃光が目に映った。僕は反射的に後ろへ飛ぶも、次の瞬間、手に持っていたスタークを両断された。
(メインウエポンが……!)
間合いの外に居たはずなのに斬られた。
「ははっ! スラスターサーベルは初めてかなぁ?」
ミフネさんの背中、スラスターからサーベルが左右に伸びている。
(あんな武装があるとは……!)
あのサーベルの翼は通常のサーベルより2.5倍は長い。アレで斬られたみたいだ。
「そらそらそらぁ!!!」
ミフネさんは距離を詰めてくる。
8本のサーベルによる猛襲。動きを見切り、先を読んでも、それでも体中を刻まれる。
(抑えきれない……!!)
左耳を貫かれ、右頬を裂かれ、脇腹を抉られ、左足のつま先を両断される。
(いけないっ……! やられる!?)
僕は近距離でもやむなくアステリズムを展開する。おかげで3基は斬られたが、残りの9基のレーザー攻撃で相手の足を止めることに成功。その隙に背後へ思いっきり加速する。
スラスターを使い尽くした僕は廃材置き場の廃材の山に落下。ミフネさんは廃材置き場の先にある桟橋に綺麗に着地した。
「どうだ? 私の八刀流の力は……」
み、認めたくは無いけど……この人、強い。
(六仙さんが重用するわけだ。この攻撃力は凶悪。接近されると止められない)
ただファッションで八刀持っているわけじゃない。ちゃんと全てのサーベルを扱えている。
ピース系を含め、サーベル以外の武装を排除した思い切ったスタイル。それを成立させるだけの技量。試合後の疲労があるにしても、ここまで接近戦で手が出せないとは。
「それだけの実力を持っていて、なぜ……」
いや、今は余計なことは考えない。勝負に集中だ。
正面からの射撃はサーベルで払われる。G-AGEなんてもってのほかだ。100%サーベルで払われる。ならばどうするか。
「さぁ逃げろ逃げろ逃げ惑え! これまで私が叩き潰してきたカス共と同じように、お前も逃げ撃ちすりゃあいいさ!」
確かに距離を取りつつ射撃するのがベターだ。だけど、どうせその戦法には慣れっこだろう。言う通りにするのは危険……それに気に食わない。
――上等ですよ、ミフネさん。
「ミフネさん。予告しますよ」
「なに?」
僕はミフネさんを指さす。
「……あなたは、零距離で堕とす」
ミフネさんの額に、血管が浮かび上がる。
「緋威」
僕は廃材の山から下り、赤いマントを羽織る。さらに、
「アステリズム!」
9基のアステリズムを展開する。
「バレットピースの弱点は……!」
ミフネさんは構わず突っ込んでくる。
桟橋から廃材置き場へ踏み入る。
「――敵の懐だ! この位置では射撃はできまい!」
ピースのレーザーが僕に当たるから……かな。残念、そうはならないよ。
「炎纏!!」
僕は緋威を発光させ、アステリズムに射撃をさせる。
「なに!?」
ミフネさんの背後に迫るアステリズムの弾丸。ミフネさんは後ろからのレーザー攻撃を回避する。
空振ったレーザーは僕に向かって伸びてくる。
「馬鹿が! 自滅だな!」
「いえ。計算通りです」
アステリズムの弾丸は緋威に当たり反射。跳弾がミフネさんの顔面と脇腹にヒットする。
「くっ!! リバウンド……!?」
部位破壊はできなかったけど、怯ませることはできた。
距離6m。
(ワンオフ式!)
ワンオフ式サーベルを展開し、横に薙ぐ。
「「高出力モード!!!」」
ミフネさんは僕の高出力サーベルを両手の高出力サーベルで受け止めた。僕はすぐさまサーベルを捨て、前進する。
「失せろぉ!!!」
1撃で充電切れになるワンオフ式と違い、ミフネさんの両手のサーベルはまだ高出力を維持している。
ミフネさんは倍程に伸びたサーベルで乱れ斬りを披露する。
距離はある。僕の居る位置に届くのは両手のサーベルと、あとはスラスターサーベルだけ。だけどミフネさんはズッシリと構えているから、体の回転が必要なスラスターサーベルは選択肢から除外していい。
(両手のサーベルだけなら対応できる)
僕は足を止め、乱れ斬りを躱す。
「失せろ失せろ失せろ失せろ失せろぉ!!!」
(躱す躱す躱す躱す躱す……!)
避けきれない攻撃は緋威を盾にして受け流す。
息が詰まる。凄まじい緊張感。高まる鼓動。だがそれは躱され続けるミフネさんも同じ。先にストレスに耐え兼ねた方の負け。
「…………っ!」
ミフネさんが一瞬、呼吸を乱した。
(ここ!)
左眼を縦に斬られ、緋威は全損した。しかしおかげでこのチャンスを手に入れることができた。
「アステリズム!!!」
アステリズム9基をミフネさんを囲うように展開。しかも僕はわざわざミフネさんの間合いにアステリズムを設置した。
ミフネさんは当然、両手のサーベルでアステリズムを斬ろうとする。僕は脳波でアステリズムを動かし、斬撃を躱す。
「器用なっ!」
そこで高出力モードが終わり、ミフネさんの両手のサーベルが使用不可となる。
このベストタイミングでアステリズムより発砲。弾幕の4割は躱されるか、あるいは六刀に払われたが、残りの6割は命中する。
「くぅ……!」
スラスターを全開。
射撃を受け、怯んだミフネさんに突撃する。
「なに!?」
自らの懐に突っ込んでくる僕に対し、ミフネさんは動揺し、反応が遅れる。
ミフネさんの両手のサーベルは高出力モードの反動でEN切れ。密着すれば怖いものはない。距離は詰まった。足を上げる暇も体を回旋させる暇も与えない。左肩をミフネさんの胸に押し当て、突進する。
「ごはっ!?」
「はあぁ!!!」
密着状態のまま加速し、ミフネさんを押し出していく。
状態を維持しつつミフネさんの顔面を右拳で3連打し、桟橋まで押し込む。
「ふざけるな!」
ミフネさんは僕を突き飛ばし、右脛を振り上げ攻撃してくる。僕は屈んで脛を躱し、フル加速で腹にタックルする。
「くそがっ!!」
「これで……チェックだ!」
一緒に海上へ飛び、ミフネさんを下にして共に海原へ落下。僕はすぐさまスラスターで浮上し海上上空へ。その後、アステリズムでΔシールドを発動し、海上に展開する。
Δシールドは帯電エネルギーの塊。ぶつかれば全身に電流が流れ、数秒は動きが停止する。
(Δシールドは薄緑色の光。エネルギー反応も微弱で、海の中からじゃ見えない)
これは網だ。トビウオを捕まえるための網。
「そう……そこですミフネさん。そこから飛び出せば、大好きな間合いに入れる」
ミフネさんは僕を追い、海上に飛び出す。
「――寸分狂いなし」
ミフネさんはΔシールドを通り抜け、全身を痺れさせた。
「かっ……!?」
空中で停止したミフネさんに接近し、G-AGEの銃口を口腔に突っ込ませる。
「――この距離なら、切り払いはできない」
「き、はまあああああああああああああっっっ!!!!!」
引き金を引き、喉を貫く。落ちていくミフネさんに、追撃2発。頭と胸の中心に銃弾を撃ち込む。
ミフネさんはポリゴンとなって海に散った。
「さようなら」
~ミフネ 武装~
スロット1:餓鬼刀 (サーベル)
スロット2:餓鬼刀 (サーベル)
スロット3:焔龍刀・尾 (フットサーベル)
スロット4:焔龍刀・尾 (フットサーベル)
スロット5:焔龍刀・爪 (シンサーベル)
スロット6:焔龍刀・爪 (シンサーベル)
スロット7:焔龍刀・翼 (スラスターサーベル)
スロット8:焔龍刀・翼 (スラスターサーベル)
拡張パーツ
スロット1:切り払い(装備するとサーベルにバリアコーティングを施せるようになる。ただし展開時間は一瞬。サーベルでジャストガード・パリィみたいなことができるようになると考えてくれればいい。バリアコーティングの強度はサーベルの威力に依存する)
スロット2:サーベルプラス(サーベルの装備数によってサーベルの性能が上昇する。アタッカー専用)
スロット3:無頼(ピース系&ウィング系を装備していない場合にのみ効果が発動。スラスター性能&精密性を大幅に上昇させる。アタッカー専用)
スロット4:武神(切り払いで相手の攻撃を弾く度に全ステータスが上昇する。アタッカー専用)
【読者の皆様へ】
ストック切れにつき、2週間~3週間程のお休みを頂きます。年内にもう数話だけ更新出来たらな~、って感じです。年末年始は更新するにしても休み休みになると思います(リアルの関係で)。
1月上旬の内にはちゃんと連載再開したいと思います。続報は活動報告にて!
面白かったらブクマと評価をお願いします! またランキング入れたら嬉しい。
書籍の作業も頑張っているので、書籍の方もぜひ読んでくださいませ!(来年2月発売予定) WEB版に無い話もありますし、何より最高に可愛い&カッコいいイラストがあるのでね!
それでは今後ともよろしくお願いいたします。




