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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
代理戦争編

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201/202

第200話 新しくなるために

 チームを組もう。そう言った僕に対し、3人が見せた表情は様々だった。

 ラビちゃんは喜び、ロゼッタさんは表情を変えず、イヴさんは困惑していた。


「いいよ! やろうよシキちゃん!」


 とラビちゃんは同調するも、


「吾輩はお断りだねぇ。ルールの中の勝負は好きじゃない」


 ロゼッタさんはきっぱりと断ってきた。けど大丈夫。交渉材料はある。


「月上白星さんの遺産に、興味はありませんか?」

「……!」


 ロゼッタさんの表情が動く。他2人は話の筋が読めずキョトンとしている。


「あの人の遺産だと……?」

「はい。あるそうですよ。この世界のどこかに。もしかしたらそれが、ゲームクリアの鍵かもしれません」


 ロゼッタさんは目を細める。


「僕は遺産の場所を知っています。チームを組んでくれたら、遺産の場所を教えてあげます」

「君はどこでそんな情報を仕入れたんだ?」

「そ、それは秘密です」


 ロゼッタさんが探るような目線をぶつけてくる。

 やましいことはない。真っすぐ、見つめ返せばいい。


「……いいだろう」


 ロゼッタさんは僕の額を、人差し指で押す。


「君に付き合ってあげよう。ただし気を付けたまえよ。吾輩は気まぐれで裏切るタイプだ」

「……その時は僕があなたを撃つので悪しからず」


 ロゼッタさんは愉快気に笑い、僕から離れて隅にある椅子に座った。

 次にイヴさんが前に出る。


「まぁなんだ。やる、やらない以前の話なんだが。あたしにランクマッチの適正は無いだろ」

「え? そうですか?」

「だってあたしは戦闘能力皆無だぞ。それともあれか、オペレーターとしての採用か?」

「いえ。プレイヤーとしての採用です」


 チームを編成すると考えた時、やはり欲しいと思ったのは自分に無い要素を持っている人だ。

 ラビちゃんのトリッキーさは随一だ。

 ロゼッタさんは思考レベルが高く、知識も豊富。頭脳、という面において僕より優れている。

 そしてイヴさん。イヴさんには、


「イヴさんには卓越した操縦スキルがあるじゃないですか。ここに居る誰よりも、ツバサさんよりも、きっと六仙さんや白い流星よりも、イヴさんは運転が上手い。ランクマッチのステージには乗り物がかなりの頻度で落ちています。なので、イヴさんの操縦スキルを活かせます」

「だ、だけどなぁ……乗り物に乗っていない時は雑魚だぞ雑魚!」

「君ぃ、プレイヤースキルを上げる努力をしたことはあるのかい?」


 ロゼッタさんが問いかける。


「……あんまし、ねぇけど」

「それなら才能の程はまだわからないではないか。それだけ凄い運転ができるのなら、仮想体適正は高いのだろう?」

「はい! それは間違いないです!」

「ならばやりようはある。安心しろ。吾輩はすでにどれだけ才能の無い者でも中級者レベルまで押し上げるカリキュラムを完成させている。吾輩が鍛えてやるさ」

「だ、だけどさぁ……」


 渋るイヴさんをラビちゃんが後ろからハグする。


「いいじゃんイヴちゃん♪ ランクマッチの優勝報酬とかって結構おいしいよ? 参加する価値はあるっしょ」

「それにイヴさん自身の技量が上がれば、より安全に配達できるようになりますよ」


 イヴさんは腕を組んで考え込む。


「…………はぁ。わかったよ。やりゃいいんだろやりゃ! その代わり、報酬は弾んでもらうぞ。代理戦争にしても、ランクマッチにしてもな!」

「ありがとうございます!」


 よし。全員の承諾が得られた。これでランクマッチに出られる!


「一旦は目の前の戦いに集中しようか。この代理戦争で優勝しなくては、我々の釈放は無しなのだろう?」

「はい」


 ロゼッタさんの言う通りだ。まずは目の前。


「代理戦争でやってもらう役割は決めています。ロゼッタさんにはメインシップの艦長および全体指揮を、イヴさんにはメインシップの操舵手をやって頂きます。ラビちゃんは……自由に動いて」


 ラビちゃんに関しては下手に役職で縛ると逆効果になりそうだ。


「初見で戦艦を動かすのは無理だぞ。少しは触らせてくんねぇと」

「吾輩も、チームの情報が無ければ的確な指示は出せないねぇ」


「君達3人には僕からレクチャーする」


 部屋に、六仙さんが入ってきた。

 六仙さんとロゼッタさんは視線を交わす。


「へぇ。コロニーの王様直々とはね」

「時間が無いんだ。もっとも説明の上手い人間がレクチャーしなくてはね」


 六仙さんは僕の方を向く。


「シキ君。君はもう帰って休みなさい。今日は頑張り過ぎだ」

「は、はい。わかりました」


 確かに疲れた。特に∞バーストに無理やり入ったやつ、アレの反動が凄まじい。


「それでは失礼します。後は任せます」

「うん。お疲れ様」

「まったねぃ! シキちゃん!」


 部屋を後にし、帰路につく。

 軍の人が用意してくれた船でジョリー・ロジャーへ。そして街を歩いて自分の家……戦艦へ。

 しかし、戦艦の甲板にはすでに、1人の女性が居た。



「なにか御用ですか? ――ミフネさん」



 ミフネさんは甲板の上で、正座している。

 正座し、瞼を下ろし、気迫を尖らせている。


「私はな、これまで上手くいっていたんだ……貴様が来るまではずっと、な」

「それは……なんか、すみません」


 ミフネさんは閉じていた瞼を開き、僕を見る。


「少し前までは私が六仙の懐刀と言われていた。だが貴様が来てから私の影は薄くなるばかり。挙句の果てに、貴様を前線から外したというだけで首を切られた。ハッキリ言おう。私は貴様が嫌いだ」


 うぐぐ……! ハッキリ言われると、精神ダメージが凄いぃ……!


「ここへ来たのは鬱憤を晴らすためだ」


 ミフネさんは立ち上がり、両手にサーベル端末を構える。


「ここで貴様を斬ったとて、ゲーム上……特に進展も後退も無い。だが貴様を斬ることができれば、私の苛立ちも、多少は収まる」

「あなたは、なんでそこまで僕に……」


 ミフネさんはカムイさんに倒されたはずだ。

 ならば、怒りの矛先は僕よりもカムイさんに向くものじゃないのか。


「初めて貴様に会った時、度し難い嫌悪感を抱いた。ゴキブリに抱くような嫌悪感をな。同時に直感した。『コイツは私の邪魔になる』と」

「……そんなの」

「貴様もあの時、私に同様の感情を抱いたんじゃないか? 『コイツは邪魔だ』と」


 否定はできない。

 ミフネさんと初めて出会った時、僕は確かにこの人に対して忌避感を覚えた。


「話し方も、歩き方も、態度も、戦闘スタイルも、なにもかも気に食わん。癪だ。理屈ではない。私はお前という存在が腹立たしい。ただそこに存在するだけで憎たらしい」


 ミフネさんは邪悪な笑みを浮かべる。


「うぜぇんだよお前」


 ハッキリと、ミフネさんは口にする。

 最早取り繕い一切なし。素の彼女が顔を出す。


「今からお前を斬る。再度言うが、これは単なる憂さ晴らしだ。お互い損も得も無い。くだらないと思うなら、おとなしく斬られてくれ」


 ミフネさんが両手に構えたサーベル端末から、赤色に輝くレーザーの刃が展開される。両脛にも同じく赤色のサーベルが展開された。


「……ちょうどいいです。僕も、あなたと戦いたかった」

「なに?」


 僕はあなたに詰められ、なにも言い返せなかった。自分の弱さを思い知らされた。

 僕にとってミフネさん、あなたは『壁』だ。弱い自分を乗り越えるために、必要な壁。


 僕は今日、あなたを倒して、新しい自分を手に入れる。


「もう逃げないし、怖がりもしないっ! あなたを倒して、前に進む!」

「侮るんじゃねぇぞ! 私は元々Aランクチームのエースだった! 貴様如き新参者には負けん!!!」

気付いたら200話! 皆様の応援のおかげでございます。新チーム結成回を200話に置けたのは嬉しい。

これからも『スナイパー・イズ・ボッチ』をよろしくお願いします。

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ツギクルバナー スピンオフ『シスター・イズ・バーサーカー』もよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 他の方の感想に目を通してふと思ったんですが、もしかしてミフネって三國志の馬謖みたいなやつなんですかね? 登山してボロ負けしたバカというイメージが定着してますが、馬謖も部隊のトップ…
よ〜し、本題の交渉はよくいった様で何より。 ぶっちゃけミフネ関係はもう終わった事の後始末でしかなく、むしろ戦闘狂のシキからすると自己改革の手段兼デザートみたいなものですよね。 そしてミフネの内面吐…
ゲームを始める理由はそれぞれでだけど、そこに重点を置いて他の遊び方はしないから分からないのは確かにあるある
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