第199話 やりませんか?
一回戦を終えた僕達はオケアノスへと帰還することになった。
来た時と同じようにサブシップで帰りたかったのだが、六仙さんから招集がかかった。僕は今、スピカ・セーラスの艦長室に居る。
「今回は部下が迷惑を掛けたね」
開口一番謝罪された。
「いえ……なんとかなりましたから、大丈夫です。それより」
「わかっている。第二戦の話だろう?」
そう。今回の戦いではカムイさんとチャチャさんの存在が大きかった。なのに、次からはその2人はいない。
しかもミフネさんもいなくなったから隊長の座も空白だ。
「先に聞きたいんだけど、どんな人材が欲しい?」
欲しい人材……。
今回の戦いで足りなかったものと言えば、
「指揮能力の高い人、エース級のプレイヤー、回避センスのある操舵手。それぞれ最低1人は欲しいです」
「ふむ。ミフネ君の穴を埋めるために指揮官は必要だね。次にエース級か。エース級、というのはどれぐらいを想像している?」
「単独でサブシップを落とせる人です」
「要求が高いな……」
「今回の戦いでわかりましたが、この対戦形式だとサブシップの役割が大きいんです。メインシップと違って落ちても負けでは無いから、かなり自由に動かせる。それでいて、戦場の支配率は高い」
将棋で言うならサブシップは金と銀。メインシップ含め5隻で連携されると付け入る隙が全然無い。
「サブシップ1隻落とすだけでもかなりの価値です。なので、サブシップを落とせるカードは多く持つ必要があります。僕や戦艦だけでは限界があります。あ……別に、僕がエース級と言っているわけでは無くてですね……」
「なるほどね。理解した。操舵手を求めるのもその辺が理由かな?」
「はい。こっちのサブシップを活かすために、優秀な操舵手がもう1枚は必要です。今のメインシップの操舵手の方は良い腕しています。ただ、サブシップ4隻の操舵手は……えっと」
「いいよ。気を遣わなくて」
「あまり、お上手では無いかと……」
「そうだね。精鋭ではあるが、潜水艦ばかり乗っていた弊害かなぁ。水中や宇宙ならともかく、空中はまだまだ不慣れらしい」
サブシップが1隻でも機敏に動けていたなら、終盤の窮地は無かっただろう。
操舵が上手い人がもう1人、確実に必要だ。
「オーケー。全部理解した。問題はそれらの人材をどう集めるか、だね。オケアノス内にもまだまだ眠っている人材は居ると思うけど……」
「あ、あの……六仙さん。この代理戦争って、オケアノスに長く住んでいれば参加できるんですよね?」
「そうだよ」
「ぼ、僕……推薦したい人が3人います」
「へぇ。オケアノス軍の中にかい?」
「……えっとぉ……1人は一般人で、後の2人は……軍の真逆というかぁ…………テロリストというかぁ……」
「なんだって?」
僕がその3人の名前を言うと、六仙さんは頭を悩ませた。
「……さすがに、厳しいが……しかし、彼女達を味方にできれば、戦力はアップするなぁ……いや、1人はいいんだ。1人は全然いい。けど、残りの2人がちょっとなぁ……」
「勝つためです!」
僕が勇気を振り絞り大声で言うと、六仙さんは観念したように笑い、
「了解だ。一時的に釈放ってことで」
「ま、待ってください。あの、その……もしも優勝できたら、一時的ではなく、完全に釈放して欲しいんです。なにかしら報酬が無いとあの人達も本気でやらないと思いますし……お願いしますっ!!!」
六仙さんは何かを察したのか、全身を脱力し、天井を見上げた。
「な~るほど。な~~~~~るほどね。君の狙いはわかったよ。そうかそうか。本来なら、許すべきでは無いんだろうけどね。しかし、想像してニヤけてしまったよ。『面白い』と思ってしまった」
「六仙さん……!」
「僕も見てみたい。君達が暴れる姿を、年末にね」
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オケアノスにある監獄・ヴォルテックス。
その一室に、3人のスペースガールを集めてもらった。
僕は3人を集めたその部屋の前で立ち尽くしていた。
「……全員顔見知りだけど、なんだか緊張するなぁ」
勧誘って、こんな緊張するものなんだ。
よくシーナさんは平然とできていたなぁ。
「こんなんじゃダメだ。気合注入!」
両頬を叩き、気合を入れる。
「よし」
扉のロックを外して中に入る。
「お、お待たせしました。皆さん」
1人は、ピンクと青の二色の髪で、マントを羽織った人。
1人は、白衣を着たお姉さん。黒髪で、インナーカラーは黄緑のボブカットの人。
1人は、白髪ポニーテールで、死んだ目をした小柄の人。口にはタバコを咥えている。
ラビちゃん、ロゼッタさん、イヴさんだ。
「シキちゃーん!!!」
と抱き着きに来たラビちゃんを僕は躱し、部屋の中心へと歩を進める。
「やぁシキ君。また会えてうれしいよ」
「僕もです。ロゼッタさん」
「こらシキ! あたしをこんな化物どもと同じ部屋に放置するなよ」
「あはは……すみません。イヴさん」
世紀の大怪盗ラビリンス。
メーティス軍・総指揮官グリーンアイス。またの名をロゼッタ。
僕が知る限り最高のドライバー、イヴァン。
この3人こそ、僕が推薦した人達だ。
「話は聞いたよシキちゃん! 代理戦争に、私達の力を借りたいんだってね!」
「うん。でもねラビちゃん、それだけじゃないんだ」
僕は3人の前に立ち、告げる。
「ラビちゃん、イヴさん、ロゼッタさん。僕と一緒に……ランクマッチ、やりませんか?」
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