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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
代理戦争編

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199/202

第198話 辞令

「ぎ、ギリギリ……!」


 僕は森の中の地面に着地し、へたりこむ。チャチャさんは僕の隣で体を伸ばしている。

 試合は終わったけど、まだこのフィールドは消えない。最後かなりごちゃごちゃしていたから結果の処理に手間取ってるのかも。


「……こここ、こんなの奇跡ですよ……一歩間違えれば……いや、半歩間違えれば負けてました……!」

「実力勝ちとは言えないよね。それにしてもしかし! 今回のMVPはシキっちょだよねぇ~。驚異のサブシップ3隻落とし! 伝説だねぇ~」

「いえ、MVPはカムイさんですよ。最後の狐倶里の畳みかけ……僕がカムイさんの立場にあったとして、防ぎ切れなかったでしょう。自分勝手な人という印象でしたが、少し改めないとですね」

「そだねぇ」


 感想を述べた所で視界が暗転した。


 次に目を覚ますと、元居た場所に戻っていた。アスター3の廊下だ。

 目の前にはカムイさんもいる。


「開会式の借りは返したぞ」

「あはは……」


 もうとっくに許してますとも。


「さて、後はあの女がどう出るかだな」

「ミフネさんですか……」

「ああ。それと六仙だ。恐らく副長殿が六仙に事の顛末を話していることだろう。副長殿は真面目人間……報告に嘘はつかないはずだ」


 ミフネさんの指揮は悉く裏目に出た。ハッキリ言って、ミフネさんは明確に狐倶里に作戦負けしていた。失態だ。それに六仙さんが用意した切り札、カムイさんやチャチャさんを幽閉した罪は重い。


 六仙さんはおおらかな人だけど、どう処理するかな。


「……僕らが怒られる可能性も全然ありますよね?」


 だって自軍の指揮官倒しちゃったし。


「そうだな。全ては六仙次第だ。奴がお前とミフネ、どちらを取るか。だな」


 はたして、このチームはどうなるのだろうか。ミフネさんの処分次第でかなり変わるだろうね。


「先に言っておくが、我もチャチャと同様、もう代理戦争には参加しない」

「え!? ……幽閉されたからですか?」

「違う。最初から決めていた。年末に向け、ランクマッチの修練をしたくてな」

「ランクマッチ!? カムイさん、チームを組んだのですか!?」

「ああ、言ってなかったな。我は紅蓮の翼に入った。紅蓮の翼改め、紅蓮の神翼だ」

「え~~~~~!!!!?」


 あのチームにカムイさんが!?

 それはなんと凶悪な……! 最高峰のガードナーであるツバサさんと、この暴れ馬なカムイさんが組むのか……お、恐ろしい。


「六仙にも協力するのは初戦のみと言ってある。貴様との共闘は楽しかったが、ここまでだな」


 カムイさんは右手を差し出す。


「次はまた、敵同士で会おう。シキ」

「はい! カムイさん!」


 カムイさんと握手をした瞬間に、あることに気づく。


「ん? ……じゃあカムイさん、途中で抜けるつもりだったのに、開会式で他のコロニーに喧嘩を売ろうとしたってことですか!?」

「なにか問題があるか?」

「あ――ありますよ!!! 途中で抜けるつもりなら余計な火種を作ろうとしないでくださいっ!」

「はははっ! ――熱いな!」

「なにがですかっ!」


 やっぱりこの人、自分勝手だ……。



 --- 



 スピカ・セーラス、艦長室。

 そこに、ミフネが帰って来る。苦虫を噛み潰したような表情だ。


「やあ」


 艦長の椅子にはすでに、軍服を羽織った女性が座っていた。


「六仙……様」

「好き勝手やってくれたようだね、ミフネ君。ここに、君の椅子は無いよ」


 ミフネは歯を軋ませる。


「奴らが邪魔しなければ逆転の手があったんだ!」

「ならば、その手とやらを聞こうか」

「それは……」


 10秒待っても答えを出せないミフネに、六仙はため息を漏らす。


「僕はね。有能な人間には寛容だが、無能には厳しいよ。シキ君、カムイ君、チャチャ君。大富豪で言うならジョーカーにエースに8切りの8ってとこかな。そんな彼女達を封じ込めて、あんな醜態を晒すなんてね。覚悟はできているかな?」

「し、知らなかったのです! 彼女達がそんなに使えるなんて!」

「僕は何度も、詳しく、彼女達の有用性を説明したはずだ。なのに、『知らなかった』は通らない。だろ? ミフネ……」


 六仙の声色が強くなる。

 ミフネは六仙の眼光を見て、生唾を飲み込んだ。


「狐姫さんの予知についても話したはずだけど、無視したよね?」

「予知なんて……あるはずがないです」

「そうだね。あり得ないね。ではなぜ読み負けたと考える?」

「読み負けてません。私の作戦に、軍がついてこられなかっただけです」

「……聞くけど、敗因は何だと考える?」

「仰る意味がわかりません。我が軍は勝利したではありませんか。そ、そうです! 結果は『勝ち』! 過程は色々あれども、結果は『勝ち』! 結果は『勝ち』!! 私は勝利した軍の将なのですよ! 過程ではなく結果を見てください六仙様!」


 六仙は諦めたように1度目を閉じ、再度開く。


「ミフネ君、残念ながら君は隊長の器では無かった」

「な、なんだと……!」


 容赦なくミフネは六仙を睨みつける。

 六仙はミフネの睨みを受け、鼻で笑う。


「その反骨心に塗れた瞳……それが君の本性か。嫌いではないが、邪魔ではある。――ミフネ君。君を除隊処分にする」

「なにっ!? ――ふ、ふざけるな! この程度の事で除隊だと!?」


 六仙は書類の束を投げ、部屋中に散らせる。


「先ほど君の部下であるナナキ君から提出されたよ。君が軍用費用を使い込んだ記録だ。それと賄賂を受け取り、犯罪者を逃がしたという記録もある」

「っ!?」

「今後の戦いのために、君は軍から切り離すべきだと彼女は考えたわけだ。部下に裏切られたら終わりだね。汚職に軍法違反に命令違反。除隊に足り得る理由は揃っている。残念だったねミフネ君。君の覇道はここで終着だ」


 ミフネは舌打ちし、扉の方を向く。


「……覚えていろよ六仙。私は……必ずこのゲームの頂点に立ってやる! だがまずは! お前とシキだ! お前ら2人だけは必ず斬ってやる! お前らの首だけは絶対に晒してやる!!」

「お~、怖い。怖くて夜も眠れないよ」


 肩を竦めて六仙は言う。

 ミフネは再び舌打ちし、部屋を去った。


「素材は良かったんだけどね……残念」


 六仙は椅子から机の上に移動し、胡坐をかいた。


「さてと、新しいリーダーどうしよ……」

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― 新着の感想 ―
黒いネタをしっててなお、部下が提出しなかったのはうまくごまかしていて、一応利が勝っていたのかな。 というかごまかしだけがうまかったかもしれない。
>むしろミフネの性格の場合、人と組むより単独の方が……。 なるほど、ミフネの性格上、他人と組んだり、他人を動かしたりがド下手なのですかね? 少なくとも、今回の問題(自分は上司の助言も命令も聞かず軍を…
ミフネ今回のやらかしまでは猫被れてたっぽいのになぜ化けの皮が剥がれたのか。 オケアノスの人事部にもメス入れなきゃダメっぽい?
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