第193話 反撃開始
スピカ・セーラス、メインブリッジ。
艦長席に座るミフネの目にもう戦場は映っていない。彼女の脳内は戦後のことでいっぱいだ。
(この敗戦……一体どう言い訳をする? 誰に責任を擦り付ける? 副長か、それとも各サブシップの艦長に……)
思考を回すミフネだったが、次の瞬間、すべての思考が白紙に返る。
――ゴオォン!!!!!
艦長席とオペレーター席の間。ブリッジ中央の床が、黒い波動によって破壊された。
外部からの攻撃じゃない。内部からの攻撃だ。
「なん……っ!? 何が起きた!?」
ミフネが問うと、オペレーターの1人が、
「熱源発生位置は――第6ホワイトルームです!」
「奴らを監禁していた場所か! すぐに一帯を……」
「――遅い」
床に空いた穴からカムイが飛び出し、あっという間にミフネの背後を取る。武装を解除していたミフネは抵抗できず、カムイに後ろから顔面を掴まれてしまう。
「貴様……!」
「悪いが、ここからは好きにさせてもらう」
カムイは右手から波動を放出し、ミフネの頭部を焼却した。
首の無い体が力なく艦長席から落ち、床にぶつかり消失する。
「……っ!!?」
唖然とするクルー達。
クルーの中にはカムイに銃を向ける者もいたが、ミフネに次ぐ権限を持つ副長が銃を下げさせる。
「要求はなんだ。カムイ」
副長が問う。
「これよりミフネに代わり我が指揮を執る」
「それを許すとでも?」
「貴様らがまとめてかかってきても我には勝てない」
つまり、自分の我儘を許さなければブリッジを破壊するということ。脅迫だ。
「……勝算はあるのか」
「副長!?」
「あるさ」
副長は「わかった」と言い、オペレーター席に座る。
「この戦いは負けられない。六仙様の悲願がかかっている。どのみち、このままじゃ負ける。ならば、ジョーカーを切って一発逆転を狙おう」
意外にも柔軟な対応をする副長に対し、カムイは笑みを零す。
「利口な判断だ。では格納庫に伝達してくれ。シキ及びチャチャの指示に全面的に協力せよ。各TWの解凍を急げ。とな」
---
牢屋から脱出し、僕とチャチャさんは格納庫に到着する。すると、
「や、やっと来た!!」
「もうシキさんしかいないんです! なんとかしてくださいっ!!」
「え……!?」
格納庫の整備士さん達が囲んでくる。
「えええ、えっと……!」
「ちょいちょい。シキっちょの邪魔しないでっちょ」
「チャチャ! あなたも一緒だったのね! これなら鬼に金棒……まだチャンスはある!」
整備士さん達はチャチャさんを知っているようだ。それもそうか。チャチャさんは長らくオケアノスに技術協力していたもんね。
「出撃用内火艇を準備して! シキっちょを水上へ打ち上げる!」
「チャチャさん、ランチってなんですか?」
「人を内蔵できる魚雷とでも思っていいよ。それで一気にシキっちょを水上まで持って行く。シキっちょ、最初のワイバーンはサーフシールドでいいよね?」
「はい! お願いします!」
僕は超小型(人が3人入れるぐらいの大きさ)の装甲艦に詰められる。これが内火艇か。
『シキ。ブリッジは制圧したぞ』
カムイさんの通信が頭に響く。
「わかりました。まずは前線を挫きます。敵前線の数が半数になったらスピカ・セーラスを浮上させてください」
『わかった』
「サブシップは1度東西に散らしてください。サブシップで相手を釣って敵陣形を広げさせます」
正直今はサブシップ居ない方がやりやすいんだよね。
劣勢だったおかげで味方の数はかなり減った。不幸中の幸いじゃないけど、僕の使えるスペースが大いにある。流れ弾を気にすることなく、あの広大なスペースで思いっきりやらせてほしい。
『承知した。後者の指示はもう実行していいな?』
「はい」
『シキっちょ。ランチぶち上げるよ。準備いい?』
「はい!」
3、2、1。というカウントダウンの後、一瞬だけ浮遊感が身を包んだ。浮遊感が消えると同時に今度は凄まじい振動が襲ってきた。水をかき分けている感じがする。
数秒で振動が穏やかになり、また浮遊感が体を包み込んだ。今、このランチは恐らく空中に居る。
『装甲パージ!!』
僕を取り囲んでいた壁も天井も床も、全て剥がれる。太陽の光が背中に当たる。湖が視線の先に見える。
僕は湖から100m程上空に居た。大量のスペースガールや戦闘機が目に入る。
僕は予め持っていたスタークで、目に映ったスペースガールを片っ端から撃ち抜いていく。
「ロケットの中から人が……うわぁ!?」
「ちっ、なんだアイツは!!?」
(み、みんな、突然現れた僕に視線を集中させている。緊張する間合いに来る前に、撃ち抜かないと!!!)
僕のもとに、円盤の飛行物体が飛んでくる。
さっきチャチャさんにお願いしたサーフシールド、ワイバーンの1種だ。僕はサーフシールドに足を連結させ、サーフシールドのスラスターで空を駆ける。
「……残り125」
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