第177話 9月9日
9月9日月曜日。
教室の窓から陰鬱とした空を見上げる。
今日は雨だ。じめじめしている。ジメジメ……結構好きだったり。雨が降っていると、人の意識は雨に散る。そして僕の存在は人々の意識の暗黒に――
「えいっ」
背後から両頬を押さえつけられた。温かい手の感触が顔を包んでくる。
僕が背もたれに背中をつけると、後ろの女子生徒は僕の耳に口を寄せてきた。
「……ねぇレイちゃん。コロニー代理戦争、参加しないの?」
「……なんで代理戦争のこと知ってるの? 牢暮らしなのに……」
「……隣室のお姉さんに聞いたんだ」
そのお姉さんはなぜ代理戦争の事を知っているんだろう。
「……それで? 出ないの?」
「……う、うん。だって、集団戦とか……緊張して何もできないもん」
僕が単独で動いていいならまだいいけどね。1対多ならやりようはある。相手の接近を許さず撃ち抜けばいいから。
ただ肩を並べて共闘となると……難しい。
「……強い子がいっぱい出てくるよ?」
「……それはそうだけどさ、あれだけ大所帯のぶつかり合いとなると、真剣勝負なんてそうそう出来なさそうだしね。特に報酬とかも無いからさ……」
「……にゃるほどねぇ。レイちゃんが出ないなら見なくていいかな~」
基本的にオケアノス軍でチームを組むだろうから、知り合いも全然いないだろうしね。とてもじゃないけどベストコンディションで戦える気がしない。
(今はとにかく新しい武装に慣れないとね)
少しでも早く月上さんに追いつくために……。
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夕方。
僕はオケアノスの海上に居た。イヴさんが運転する貨物船の上で試し撃ちの相手を待っている。
『海賊の縄張りに入った。頼むぜシキ』
「はい。進化したスタークの力、お見せしますよ」
遠方に見える装甲艦から、多数の影が飛び出る。影は真っすぐこっちに向かってくる。
貨物船に近づくは戦闘機や飛空機に乗ったスペースガール。その総数は41。全員荷物目当ての『海賊』だ。
(10m以内には近づかせないよ。緊張するからね……)
僕は唇を舐める。
『そこの貨物船停まれ!!』
海賊が拡声器を使って呼びかけてくる。
『レーダーに映る貴殿らの戦力、人数はたったの3。一方で我々は戦闘機を含め50以上の頭数がいる。争いは無意味だ。大人しく投降するなら積み荷の50%で手を――』
「アステリズム!!」
僕はアステリズム12基を展開。3基で1つの小隊とし、相手1機につき小隊1つを差し向ける。
『こ、交渉の途中で――ぬわぁ!?』
「交渉決裂だ! 潰せ潰せぇ!!!」
「ちょ、待って! は、速――うわぁ!?」
海賊はアステリズムを捉えきれず、一方的に撃たれ続け破壊される。スピーディーに敵機を落としていく。
アステリズムは装弾数が6もある。つまり、1度のチャージで6発撃てるわけだ。前使っていたバレットピースは1発で戻って来ていたから、6発撃てるのは本当に嬉しい。使い勝手が全然違う。1度の射出で3基につき2機は撃墜してくれる。
『シキ! 相手装甲艦の動力部を探知できた。データを送る!』
「助かります」
僕は送られたデータを見て、狙撃銃スタークを構える。
「……まずは巣を叩く」
4.7km先にある装甲艦・動力部を、黒いレーザーで撃ち抜く。
装甲艦は内側から爆破し、撃沈する。
「艦がやられたの!?」
「この距離で狙撃!? ウチらの相手をしながら……!」
「ちっっっくしょう! 舐めやがって! ただじゃ返さないぞお前らぁ!!!」
「撃てェい!!!」
貨物船に相手が一斉射撃をかましてくる。
「Δシールド展開」
僕はΔシールド(アステリズム3基で作れるシールド)を4つ作る。
「いけるか――な!!!」
ミサイルはスタークで撃墜。Δシールドで全てのレーザー攻撃を跳ね返す。跳ね返したレーザーで海賊のワイバーンを破壊し、空中に投げ出された海賊をアステリズムで刈り取っていく。
(Δシールドは面積を広げる程強度が落ちる。相手の射線を読んで最低限の面積で受ければ、大抵の攻撃は跳ね返せる)
僕はスタークに視線を落とす。
「この前ようやくV3からV4に進化したからね……新しいオプション、見せてあげますよ」
ピーさんとのひと悶着の後、装備を見たらスタークがV3からV4に進化していた。
V4になったスタークの銃身には新たにつまみが追加された。このハンドルでモードを変更できる。僕はハンドルを回し、スタークのモードを変更する。
「――速射モード」
僕は引き金を連続で引き、ブラックレーザーを連射。敵機を次々とスナイプし、落としていく。
「これはホント便利……!」
セミオート式ではあるものの、スタークを速射できるのは嬉しい。もちろん、狙撃モードの時より威力も射程も落ちるけど、それでも十分の威力はあるし、射程も1kmはある。これならアサルトライフルは1本抜いていいね。
「うわっ!?」
僕の横を、毛玉が通り過ぎた。
「にゃにゃにゃにゃにゃ!!!」
ソルニャーが甲板を走る。
「ソルニャー! ソルニャーのスラスターじゃ、敵の所までは届かな――」
「うにゃあ!」
ソルニャーは背中から赤い双翼を生やした。
「ソルニャーは日々進化するにゃんこにゃ!」
「おお……フェニックスのエネルギーで疑似的なライトウィングを……!」
ソルニャーは空を駆け、レーザーの爪で敵スペースガールの1人を切り裂き撃墜する。
「ソルニャー! お見事!」
「うにゃっは~」
ばんざいで甲板に落下するソルニャー。
あの抜けている感じ……やっぱり可愛い! っと、いけないいけない。戦いに集中しないと。
(残り10機)
僕は飛びあがり、一気に決めに掛かる。
(神眼発動。俯瞰の視界を展開する)
頭上に用意した視点から辺りを見渡し、背後に近づく戦闘機を捕捉する。
僕は振り返らず、スタークの銃口を背面に向け、近づいてきていた戦闘機の中心を射撃して破壊。
「1つ!」
次に正面のスペースガールをアステリズム6基で攻撃し、行動を制限。足を止めた所をレーザー弾で撃ち抜き撃墜。
「2つ……」
左右の2機からバレットピースによる一斉射撃が繰り出される。僕はΔシールドを左右に設置し、一斉射撃されたレーザー弾を全て反射。反射した弾で2機の足や肩を攻撃しバランスを崩させ、近い方はG-AGEを抜いて胸の中心を撃ち抜き撃墜。もう片方はスタークを連射し撃墜する。
「3、4つ!!」
ソルニャーに集中し、こっちに背中を向けていた2機を続け様にスタークの連射で撃墜する。さらに頭上からサーベルを持って突撃してきてた1機をΔシールドの突撃で攻撃→全身を麻痺させた後、アステリズム9基の一斉射撃で破壊する。
「5、6、7つ!」
上空を飛んでいた戦闘機2機が大量のミサイルを投下してきた。僕はその全てをアステリズムで撃墜し、スタークの連射で戦闘機を撃墜する。
「8、9つ!」
スタークを狙撃モードに戻し、逃走を始めた最後の1機の背中を狙う。
距離2.2km。問題なし。
「ラスト!!!」
僕は彼女の背中を撃ち抜き、撃破する。
「寸分狂いなし」
海賊の殲滅完了。
『助かったぜシキ。ここいらの海域は海賊が多くてな、高い報酬ではあるものの、この海域の配達はできずにいたんだ。けどお前のおかげで安全に配達ができる。護衛料は弾ませてもらうよ』
頭にイヴさんからの通信が響く。
「こちらこそ、良い練習相手を提供してもらって助かりました!」
僕は船に着地する。
数々の強敵と戦ったことで、僕自身すこぶる調子が良い。
武装のアップデートも順調に進んでいる。
オリオン狩りのおかげでレベルもかなり上がった。もうレベル差で後れをとることもない。
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PN:シキ
LV:100→133
ROLE:スナイパー
装甲:20×1.5(30)
スラスター出力:40×5(200)
スラスター容量:80×6(480)
精密性:80×4(320)
レーダー:100×3.5(350)
ステルス性:60×2(120)
EN容量:60×4.8(288)
武装
スロット1:BeanStalk V4(スナイパーライフル)
スロット2:M1911 G-AGE (ハンドガン)
スロット3:緋威(特殊外套)
スロット4:SCH-100+FullCustom (サーベル)
スロット5:アステリズム(マルチピース)
スロット6:アステリズム(マルチピース)
スロット7:ARR-21(アサルトライフル)
スロット8:ARR-28(アサルトライフル)
スロット9:WH-2(ライトウィング)
スロット10:WH-2(ライトウィング)
拡張パーツ
スロット1&2:強化レーダー
スロット3:精密レーダー
スロット4:ウェポンプラス
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悩みは……そう。現状、全力を出せる相手がいないことかな。
【読者の皆様へ】
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