第173話 クイーン襲来
オリオンは倒した。けれど目当ての物はドロップしなかった。
レベルキャップは解放されたけど、これじゃ終われない。
光る小型機はオリオンを倒して5分程で復活する。光る小型機が復活する度にすぐさま狙撃してオリオンを呼び、倒し続けた。
そんなこんなで60分。
「……ぜんっぜん落ちない!」
最早オリオンは1分で倒せるようになったけど! アステリズムが落ちない! 終わりが見えない……。
アイギスをあっという間に6枚集めたツバサさんの強運さがわかるよ。
しかしここで挫ける僕じゃない。アステリズムが2セット集まるまで、粘る!!
――そんなこんなでさらに180分。
「や、やっと……集まった」
アステリズム2セット入手。
さ、さすがに疲れた。もうオリオンの行動パターン全部見たよ。
「……ドロップ率どれくらいだったんだろ。相当なレアアイテムだったはずだ。そうに決まってる。えーと、確か入手したアイテムは図鑑からドロップ率が見れたよね」
図鑑からアステリズムのドロップ率を見る。
アステリズム――ドロップ率30%。
「30%……3~4回に1個のペースか」
あはは……30体以上は倒したんだけどな。
(それにしても、いつまで見てるんだろう。あの人)
最初に気配に気づいたのは1体目のオリオンを倒した時だった。距離にして2kmぐらいを維持して僕を監視している人がいる。
姿はまだ捉えていない。気配はビンビンに感じるのに、姿を隠すのは上手い。
何もしてこないし、無視してもいいんだけど……。
「うぅ……無駄に緊張する。なにか用があるなら話しかけ――られても困るんだけどぉ……」
僕はチラッと気配のする方を見た。すると、
「!?」
――巨大なレーザーが飛んできた。
戦闘機を呑み込めるぐらいどでかい金ぴかキラキラのレーザーだ。僕は横に飛んで躱す。レーザーが着弾した遺跡は1撃で吹き飛んだ。僕も爆風に吹っ飛ばされる。
(着弾した後の爆風範囲が広い! でも、こんな強い砲撃……そう何度も)
すぐさまフラグ回収される。
まるでジャブを撃つかの如く、金ぴかレーザーの連弾がやってきた。
「うっそーん……」
僕は全速で上に飛ぶ。
「……でも砲撃で障害を全部破壊してくれた。これで!」
ライフルのスコープでようやく監視者の姿を捉えた。
黄金の実体6枚羽のウィングを装備したスペースガール。髪も金髪で、丸いサングラスをしている。
その立ち姿からは強い覇気を感じた。月上さんや六仙さんに通ずる雰囲気を持っている。
底の知れない迫力だ……!
グラサンお姉さんは両手にそれぞれライフルを持っている。僕の持ってるスタークと変わらない大きさのライフルだ。
「まさか、アレで!?」
右のライフルが僕に向けられ、引き金が引かれる。ライフルから、あの金ぴかレーザーが放たれた。
(そんな……! 溜めも無しに!?)
喜ぶべきは足が遅いことか。僕は急速で落下し、地面に着地。上空を金ぴかレーザーが通り過ぎる。
スラスターを吹かしダッシュ、しながらライフルでグラサンお姉さんを狙う。
「――――」
グラサンお姉さんが何かを呟いた。同時に、お姉さんを中心にオーラが球形に広がっていく。
(これは……!? トライアドの女王の我儘!?)
トライアドの機能の1つ女王の我儘はオーラで囲った範囲のデスペナルティを自由に変更する力を持っていた。アレと同じ能力かな。
「いや……」
違う。
オーラの中に、無数の羽が舞い始めた。
こんな効果は女王の我儘には無かった。
「羽……?」
性能がまったく読めない。僕はとりあえずスタークでグラサンお姉さんを狙う。
僕の放った黒いレーザー弾は羽に触れる程に細く弱くなり、最後には消失した。
「女王の我儘とは違う。アンチレーザーのシールド!?」
何度撃っても結果は同じ。アサルトライフル等の他のレーザー系武装も試したけど同じ結果に終わった。
オーラの範囲は半径150m程。そのオーラ内をアンチレーザーの無数の羽が舞っている……というわけだ。
もちろん本物の羽ではなく、何らかのエネルギー体で構築された羽。アレはシールドピースのようなものだ。レーザーにのみ反応するシールドピース。実体には反応しない。羽が触れた地面や木々には一切傷がついてないからね。
(バズーカ弾や実弾しか届かないってことか。レーザー系統の武器はこの羽に威力を削がれ、ターゲットに当たる前に消滅する。このレーザー武装主流のゲームで、この能力は強すぎる!)
でも弱点はある。
(相手もきっと、この羽に邪魔されてレーザー系の武装は使えない。攻め手は無いけど、距離を保っていれば攻撃を喰らうこともない)
僕はオーラフィールドの10歩手前で足を止める。すると、また金ぴかレーザーが飛んできた。
金ぴかレーザーは羽を吹き飛ばし、僕に向かって直進してくる。
(この砲撃も羽の影響は受けている! だけど! その影響をものともしない破壊力!!?)
あのライフルとこのオーラフィールドは相性が良すぎる。
「こんなの……!」
飛んで躱すが、レーザーはすぐ近くの地面に着弾し、強烈な爆発を起こした。僕は爆風に背中を押され、オーラの中に入ってしまう。
「まずいかも……!」
羽が体に当たる――けれど、ダメージはない。
(良かった。やっぱりレーザーにしか反応しない。だとすれば好機!)
僕はライトウィングを起動させる。だが、ライトウィングは翼を展開して1秒ももたずに消失した。
「あれ?」
何度も光翼を展開するもすぐに消えてしまう。
ライトウィングだけじゃない。スラスターもダメだ。掠れたエネルギーしか排出しない。スタークもこの羽に触れてから引き金を引いても弾が出ない。故障してる。
だけど僕自身の体は動く。
(ENを使う装備が全部麻痺してる……?)
つまり、この羽の能力は2つ。
・ENで構築された攻撃を防ぐ。
・羽に触れたEN武装を使用不可にする。
使えないならいらない。僕はスラスターとライトウィングとスタークをデータ化させる。1度データ化すれば装備の修復が始まるから、故障が直る可能性がある。
(このデタラメな強さ……間違いなく)
「『カイザー・フェーダー』。この球体の中じゃ、あらゆる機械は翼を捥がれ地に落ちる」
僕の前に、黄金の翼を持ったお姉さんが歩み寄ってきた。
「遠距離から仕掛ければ無尽蔵の盾に防がれ、近距離に寄ればフェーダーの制圧により武装を封じられる。歩みを止めれば覇者の銃ヘルシャフトによって焼かれる。クイーンに相応しい無敵の武装だ」
「あなたは……」
「よくぞ聞いた!」
グラサンお姉さんは仁王立ちし、声高に叫ぶ。
「私はPPP! 職業クイーン。血液型Q(クイーン)型。性別は……クイーンだ! さぁ踊れメス! 私を退屈させるなよ!!!」
初対面の人に、こんなことを思うのはどうかと思うけど。
(へ、変な人だーっ!)
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